NEW2019年03月25日

株安の裏に逆転現象 “逆イールド”って?

3月25日の東京株式市場は、日経平均株価が一時700円を超える大幅な下落になりました(終値は650円安)。大きな理由は、世界経済の先行きに懸念が広がったこと。そのきっかけには、ある『逆転現象』があったと言うのですが・・・。

「逆転現象」、ですか。

アメリカの債券市場で起きた「長短逆転」、つまり、「長期金利が短期金利を下回る」現象のこと。普通、誰かにお金を貸そうと思ったら、「3か月で返済する時」と「10年で返済する時」と、どちらの金利が高いと思う?

貸す側から見れば、返済されなくなってしまうリスクは3か月の方が低く、10年の方が高いですから、金利は「10年」の方が高いですよね。

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そうね。ところが22日のニューヨーク市場では、長期金利(10年ものの国債利回り)と短期金利(3か月ものの国債の利回り)が逆転して、長期金利の方が低くなったの。この現象は「逆イールド」とも呼ばれる。

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「逆イールド」は、“景気後退のサイン”だと受け止められていて、実際、過去に同じような現象が起きたときには、その後、景気後退が現実になったケースもある。そこで投資家の間で、アメリカ経済や世界経済の先行きへの懸念が高まって株価の大幅な下落につながったというわけ。

なぜ逆イールドが起き、そして、なぜ景気後退のサインだと受け止められるんでしょう?

一般的に、短期金利は中央銀行の政策金利の影響を受けやすく、長期金利は、投資家の将来の景気についての見方が反映されやすい。つまり、投資家が将来の経済に急速に懸念を強めたときに逆イールドが起きやすいと言える。

大きなきっかけは、アメリカの金融政策の方向転換。FRB=連邦準備制度理事会は、20日、「アメリカ経済の成長が鈍っている」として、2019年は1回も利上げを行わず、景気に配慮していく姿勢を示したの。

これまでFRBは、好調な経済状況を背景に利上げ路線を続けてきたけど、それが大きな転換点を迎えたということ。政策金利が下がったわけではないから短期金利の水準は変わらなかったけど、投資家が、「すわ景気後退か」という思いを強めたので、長短逆転が起きたのね。

加えて、22日は、ユーロ圏経済やアメリカ経済をめぐって市場の予想を下回る指標の発表が相次いだことも、投資家の懸念に拍車をかけた。

なるほど・・・。世界経済の先行きや株価の今後をどう見ておけばよいのでしょうか。

景気の減速が顕著だった中国やユーロ圏に加えて、アメリカ経済についても悲観的な見方が出てきていること、そして、アメリカの中央銀行自身が明確に景気に配慮する姿勢を見せたことには注意が必要。

一方で、IMFやOECDといった国際機関の最新の予測では、「世界経済の成長ペースが鈍る」という見通しになっているけど、「深刻な景気後退に陥る」という見方にはなっていない。株価は短期的な振れ幅が大きいことも多いので、海外の実体経済がどのような状況をたどるのか、冷静に推移を見たいところね。