NEW2018年12月21日

なぜ今IWCから脱退!? どうなるクジラ

政府は26日、IWC=国際捕鯨委員会から脱退し、来年7月から商業捕鯨を再開することを表明しました。日本が、広く知られている国際的な機関から脱退するのは極めて異例のことです。

そもそもIWCというのは、どんな組織なんですか。

IWCとは、International Whaling Commissionの略で、国際捕鯨委員会のこと。クジラの資源を保護しながら、みんなで捕鯨を続けていけるようにするために、1948年に設立され、世界の89か国が加盟している。

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ことし9月、ブラジルで開かれたIWC総会

当初は、クジラの肉などを利用する捕鯨国が多くを占めていたんだけど、その後、クジラの数が減って、捕鯨をやめたり、捕鯨に反対する国の加盟が増えたりして、対立が激しくなっていったの。

そして1982年には、肉などを利用するためにクジラを捕獲する「商業捕鯨」の一時停止が決議された。日本は、異議を申し立てていたけど、1988年に決議を受け入れ、商業捕鯨を中断せざるをえなくなった。

でも、日本はその後も、捕鯨を続けていますよね。

IWCが管轄しない小型クジラの沿岸捕鯨が、一部の地域で行われている。それと「調査捕鯨」もある。クジラの資源量や生態などを調査するための捕鯨は認められていて、捕ったクジラの肉などがスーパーなどで売られているのを、見たことがある人もいるかもね。

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ただ、量は限られている。クジラの肉の国内流通量は商業捕鯨が盛んだった1962年度には23万3000トンだったんだけど、ここ数年は3000トンから6000トン程度と、大きく減っているの。

それにしても、脱退するのはなぜなんですか。

日本は調査捕鯨の結果、クジラの資源が回復しているとしてIWCで商業捕鯨の再開を20回以上、提案したんだけど、反捕鯨国の強い反対で、今も認められない。

こうした中、2014年には、国際司法裁判所が、南極海での調査捕鯨が国際法に違反するとして、中止を命じる判決を出すなど、日本はどんどん厳しい状況に追い込まれたの。

ことし9月の会議でも、オーストラリアなどが「いかなる形でもクジラを殺傷すべきでない」と言って、商業捕鯨の再開に強硬に反対。日本は、このままIWCにとどまっていても、再開への見通しは暗いと判断したの。

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IWCから脱退すれば、クジラを捕れるようになるんですか?

政府は、脱退の効力が発生する来年7月から商業捕鯨が再開できるとしている。ただ、捕鯨を行うのは、日本の領海とEEZ=排他的経済水域に限定して、南極海や南半球では行わないし、IWCで決められた方式で計算した捕獲枠の範囲内にとどめる方針なんだって。

また、国際法で捕鯨は「国際機関を通じて行うこと」と定めているから、政府は、今後も「オブザーバー」という形でIWCの総会や科学委員会に関わっていくことで、条件を満たしていきたいとしている。

将来的には、鯨の持続的利用という立場を共有する国々と連携して、IWCに代わる新たな国際的な枠組み作りも検討していきたいとしているの。

日本が国際的な機関から脱退することで、ほかの国との関係悪化を懸念する声も多く聞かれる。それに、若者を中心にクジラを食べたことのない人が増える中で、商業捕鯨を産業として発展させるのも、なかなかハードルは高そうね。