NEW2018年12月10日

取締役が突然大量辞任へ 官民ファンドで何が?

2兆円規模の資金を持ちベンチャー企業の育成などが期待されていた、官民ファンドの「産業革新投資機構」。経営陣のほとんどが辞任を表明する異例の事態となりました。いったい何が起きているのでしょうか。

そもそも、「産業革新投資機構」って知りませんでした。

「官民ファンド」は、政府と民間が共同で資金を出し合い、民間だけでは難しい収益が上がるまで時間がかかる事業に投資するための基金のことで、ことし9月末の時点で、15ある。「産業革新投資機構」も、その1つなの。

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産業革新投資機構は、有望なベンチャーの育成などを目指すために、ことし9月に発足。2兆円規模と、官民ファンドの中でも規模が大きく、最先端の産業を育てようと、とても期待されていたの。

機構の11人の取締役のうち、民間から就任した9人もの取締役が突然、辞任を表明したのは驚きました。なぜ、そんなことに?

大きくわけて2つある。役員の報酬の問題、そして、どう投資をしていくかの点で、所管する経済産業省と対立したの。

まずは報酬の問題。当初、経済産業省は、社長など4人の役員への報酬として、最大で1億円を超える案を示し、機構側もそれをもとに取締役会で正式に決めた。でも、これは事務レベルの案だったの。

その後、経済産業省が大臣も交えて議論したら、民間のファンドのようにみずから運用資金を集める必要がないことを考慮すると「高すぎる」という結論になり、白紙撤回した。

いったん決めたことが撤回されたことで、機構側が反発。対立は決定的になった。

田中社長は、記者会見で「仮に当初、提示された金額が1円だったとしても引き受けた」と話し、報酬の額そのものに納得いかないのではなくて、書面で約束した報酬契約を一方的に破棄した経済産業省の対応が問題だと厳しく非難している。

もう1つの「投資の在り方」というのは?

産業革新投資機構は、ベンチャーを育成するために、より機動的に投資ができるようにしようと考えていた。だから機構側は、国の認可がなくてもいいファンドを新たに作ることを考えたの。

これに対し経済産業省は、「国のお金も入っており、一定の透明性が必要だ」と反対して、これまでのように国に説明するよう求め、さらに対立が深まったというわけ。

このファンドを、これからどう立て直していくのでしょうか?

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経済産業省は、来年春までに後任人事など、事態の収拾にあたるため、連絡室を設けた。さらに、これを支援するために、第三者委員会も設けることにしている。

機構の田中社長が言うように、投資の効果を発揮するために機動性を高めるという主張。それに、世耕大臣の言うように、国の資金を入れることで一定の透明性を確保するため、国へ十分な説明をすべきだという言い分は、それぞれもっともと言える。

でも逆に言うと、民間ファンドと違う官民ファンドの限界を示したものとも言えるよね。経済産業省には、官民ファンドそのものの在り方を含めて、しっかりと立て直してほしい。