NEW2018年07月27日

ベンツ車が2時間無料?その狙いは

高級車ブランドのメルセデス・ベンツが、NTTドコモと組んで8月から新しいサービスに乗り出すことになった。スマートフォンのカーシェアリングのアプリと連携して、ベンツ車を手軽に借りられるようにするというもの。高級車は持つことがステータスだったのに、貸し出すとはどういうことなのか。

メルセデス・ベンツとNTTドコモの組み合わせ、なんかピンと来ませんが、どんなサービスをやろうとしているんですか。

そうね。ドコモは去年11月に「dカーシェア」というスマホのアプリを開発。これは会員になると、カーシェアリングやレンタカーの事業者に簡単にアクセスできて、いろいろな選択肢から車を選べるというもの。今回は両社が連携して、ベンツ車も借りられるようにしたということ。

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アプリで予約すれば、東京と大阪にあるベンツの拠点から、最大で2時間まで無料で貸し出してくれる。期間は8月10日から年末までだって。

2時間まで無料って、それは販売店がやっている車の試乗サービスと似ていますね。

鋭いわね。もちろん、ベンツ車に乗ってもらう機会をつくり、気に入ってもらって購入に結びつけたいという思いはある。だけど、そうした試乗サービスならこれまでもやってきているわけ。今回はむしろ、「カーシェアリング」という手法を使って、多くのドライバーに使ってもらうと考えたのがポイント。今回は限定的なサービスだけど、利用者の反応を見ながら拡大していくことを考えているそうよ。

でもカーシェアリングって、自動車メーカーからすると複雑じゃないですか。だって、1台の車をみんなで使うと買う人が減ってしまいますよね。

確かにそうね。だから、ほとんどの自動車メーカーが、これまでカーシェアリングには消極的だった。でも、国内では人口減少や若者の車離れで、販売の伸び悩みが続いている。

一方で、カーシェアリングを利用する人が増えてきた。最大手の「タイムズ24」は、6月に会員数が100万人を超えた。1年で20%以上増えたんだって。人気の秘けつはやっぱり、料金。15分単位から借りられて、ガソリン代込みで206円。例えば、雨の日に最寄りの駅まで子どもを迎えに行くとき、往復で30分だとしたら、400円台で済んじゃうんだから、便利よね。

私の周りでも、何かと維持費のかかる車を持つよりも、カーシェアで十分という声を聞きます。

それは世界的な流れね。アメリカのウーバーや中国の滴滴(ディーディー)の名前を聞いたことがあるかもしれないけど、世界を見渡すと、「ライドシェアリング」という、スマホを通じて1台の車に複数の人が相乗りするような形態も広がっているの。

車を売るのではなく、乗りたいときだけに乗ってもらう形態は「MaaS(マース)=モビリティ・アズ・ア・サービス」と呼ばれていて、自動車業界の新たなビジネスモデルとして注目されているんだって。アウディも日本で6月に高級車を時間貸しする事業に参入したし、日本メーカーもMaaSを意識したサービスを本格的に考え始めているそうよ。

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アウディもですか。ならば、ベンツが力を入れ始めたのも不思議ではないですね。

そう。メルセデス・ベンツ日本の上野金太郎社長は「この市場が主戦場になる」と発言していた。ただ、自動車メーカーは車を1台売れば数百万円を売り上げるモデルでしょ。15分貸しで数百円稼ぐ商売とは本質的に違う。いまカーシェアやライドシェアの業界の主役は、自動車メーカー以外の新興企業。販売に特化してきた自動車メーカーが、どこまでこのサービスに本気なのか、勝ち目はあるのか、まだ見えないというのが現状かな。