NEW2018年04月13日

“ちょい高”ビールが熱い

ビール業界で世界5位、アメリカの「モルソン・クアーズ」がプレミアムビールで日本市場に本格的に参入することになりました。日本のビール系市場といえば、13年連続で過去最低を記録するなど逆風が続いています。にもかかわらず、なぜ今になって世界の大手が参入してくるのでしょうか?

「モルソン・クアーズ」って、日本ではビールの「クアーズライト」とか、アルコール飲料の「ZIMA」を売ってるメーカーだよね。

そうね。今回は、これまで代理店を通じて販売していた「ミラー」というブランドのビールを、日本法人による直接販売に切り替えて本格参入するとしている。当面は、クラブなどの飲食店向けに355ミリリットルの小瓶のみを扱うそうよ。希望小売価格は278円で、国内メーカーの一般的なビールより“ちょい高め”よね。

でも、国内のビール系市場って、ずっと縮小が続いているはず。そんな中で、いまになって参入しても、メリットあるのかな?

確かに、国内のビール系飲料の市場は去年まで13年連続で過去最低を更新していて、全体としては楽な市場ではないわ。でもね、“ちょい高め”のプレミアムビールは、各メーカーともまだ伸びると将来性を期待しているんだって。

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なんだか、意外な感じがします。“ちょい安め”が伸びるなら、分かりやすいんだけど。

背景には、ビールをめぐる環境がこれから大きく変化することがありそう。

まず、最初の変化は、今月あったの。ことし4月から法律で定められているビールの定義が変わった。これまでは、麦芽とホップと、コメやとうもろこしなど限られた原材料しか使うことができなかったけど、定義の変更によって果物やハーブなども使うことができるようになった。で、これまでとは味や香りが違ったビールを売り出すことができるようになったのよ。

海外では果物やハーブを使ったビールも一般的だから、海外勢も参入しやすい環境になったという側面があるわね。でも、それだけじゃない。

そうですよね。味や香りのバリエーションが広がるだけでは、“ちょい高め”が伸びる理由にはならないですよね。

そのとおり。さらに、2020年から2026年にかけて、ビールの酒税が段階的に引き下げられ、発泡酒などが逆に引き上げられて、最終的には税率が一本化されるの。つまり、今は“ちょい高め”のビールも、少しずつ安くなっていくという訳ね。

そうなんだ!発泡酒や第3のビールって、もともと酒税対策でできたようなものだから、税金が同じになれば、価格差も少なくなるはず。そうなるとやっぱり、本格的なビールが飲みたくなるというのが人情だな。

だから、ビールメーカーの経営トップの中には「ことしはビール改革元年だ」という人がいるほどよ。アサヒ、キリン、サッポロ、サントリーの国内大手4社は、それぞれビールの定義変更に対応した新商品を出すことにしている。

世界最大手の「アンハイザー・ブッシュ・インベブ」も日本での販売強化に乗り出している。対してアサヒは、買収したイタリアやチェコ、オランダのメーカーのビールの販売を強化している。

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さらに中小のクラフトビールメーカーも、この変化をチャンスと捉えているから、いろんな商品が出てきて競争も激しくなりそう。

メーカーとしては、若い世代のビール離れの流れを食い止めて、ぜひとも需要を掘り起こしたいところよね。消費者としては、ビールの楽しみ方の幅が広がることにつながりそうね。

飲み過ぎに、気をつけなくては。