2020年02月19日
(聞き手:伊藤七海 井山大我 土井湧水 )
「やっててよかった!」のキャッチフレーズで知られる公文式。近所の教室という印象が強いですが、その事業のフィールドは、世代や国境を越え広がっています。「学ぶ」をビジネスにする教育業界、KUMONが選ぶマストなニュースとは?(2月20日改訂)
答えてくれたのは人事担当者の松田悠紀さんです。
よろしくお願いします。
松田さん
お願いします!
学生
伊藤
では、早速なんですけど、「KUMON」って聞くと習い事のイメージがすごく強かったので、何をしている会社なのか、そもそも。そこから教えていただきたいんですけど・・・
もちろん教室事業が中心になるんですけれども、子どもたちのできる事を増やす、その人が持ってる可能性を伸ばしていく・・・そういったことを行っている会社です。
学生
井山
そもそもKUMONは、僕たちがイメージしてるような子どもたち向けの学習塾っていうところが出発点なんですかね?
そうですね。KUMONの出発点でいうと「わが子に対する教育」です。創始者は公文公(くもん・とおる)というのですけれども、その公文さんが、わが子に対して行った教育からスタートしてるんです。
そうなんですか。
公文さんは高校の数学の先生をしていて、その中で単純に数学ができればいいっていう事じゃなくて、自分で考える力をつけてほしいと日々思ってたんですね。
で、我が子が小学2年生の時に、算数のテストの点数が低い時があったそうです。単純に算数ができるようになればいいという事だけじゃなくて、高校生の数学までつながった力ですとか、自分で考える力を同時に育てたいと思い、教材を自分で作り始めたところからスタートしたんですよ。
SDGsは「Sustainable Development Goals」を略したもので、「エスディージーズ」と読みます。日本語にすると「持続可能な開発目標」です。2030年までに解決を目指す世界共通の目標で、目標の【4】は「質の高い教育をみんなに」。1からわかる!SDGsもご覧ください。
学生
土井
なるほど。KUMONさんって、CMで拝見した時に海外展開をされてるって印象があったんですけど、それは今回選ばれてるSDGsにつながるものでしょうか
そうですね。それもつながりますね。まあSDGsにつながるからやってるというよりは、まあ結果的につながってるっていうところが大きいと思うんですけれども。
今57の国と地域に広がっているんですね。一つの教育方法がこれだけ広がっているのは、あまりないんじゃないかな。
へぇ~。
皆さんは、数字や文字が読めない人がいるって、なかなか想像しにくいですよね。
はい。
でも、世界には実際にいるんです。私も、スペインとブラジルで働いた経験があるんですが、まさにそういう光景を目にすることがありました。
中学生の学習ってどこからスタートすると思いますか。
学生
伊藤
xとかyとか・・・。
その辺だよね。でも、ブラジルなどでは、足し算から学び直さなければいけないような人に多く出会ったんです。それくらい国によって違いがあると思います。
先生がたくさんいるわけじゃないので、日本のように学校で丸一日学べるわけじゃなくて、午前中は低学年、午後は高学年のように時間が限られているんです。
でも、足し算から学び直して計算が当たり前にできるようになったり、文字が読めるようになったりすると、その人の人生や将来に大きな影響を与えていけると思うんです。
公文の学習はよく「計算が速くなった」などと思われがちですが、単純に計算ができればいいということではないんです。
例えば、学年を越えて学習を進めていく中で身につく、新しいことにチャレンジする力や、学習を通して身につく自信や自己肯定感がとても大切です。
学生
井山
どんな教材を使っているんですか?
教材は日本と共通する部分が多いので、日本の経験が活かせるんです。
このSDGSのニュースを学生にどう見てほしいというのはありますか?
例えば今、就職活動をするとか、これからの社会で何をしようかという関心ごとの中に1つ、SDGSを通して考えるような価値観を持ってもいいのかなって思いますね。
目の前の仕事だけじゃなくて、それが社会に対してどうつながってるのかという事とか、何のために自分はこの仕事をするのかなとか、そういうふうな考え方につなげてもらったらいいのかなと思います。
ちょっと話が逸れるかもしれないのですが、社員の方はどういったお仕事をされているのですか?
私たちの仕事の二大業務というか。1つ1つの教室を発展に導くというような教室に対するコンサルティングをするというのが1つなんですね。
自分が担当する教室の先生と一緒になりながら、この教室が発展するためにはどういう事をやっていこうか計画を立てたり、一緒に実行していくって事が私たちの仕事になります。
なるほど。
もう1つは教室のネットワークを地域に広げる事です。
まだ教室がない場所はたくさんありますので、どこで教室の開設をして、どういう人が教室を立ち上げてもらったらいいのか、先生の募集や採用も行っていきます。
海外でも、基本的には同じで、1つ1つの教室の発展を先生と一緒になりながら導いていくっていう事ですね。
次は働き方改革ですか。
はい。例えば、学校の先生の部活動についてなど、民間企業だけじゃなく、様々な現場でも働き方が見直されるようになってきましたよね。
教育実習に行っている友達に聞くと、「子どもたちにやってあげたいことが多くて」と言っていて、教育現場は時間を短くするのは難しいかなとも思うんですが・・・。
大事なのは、選択できる環境が整っている事だと思います。部活が大好きな先生は、どっぷりはまっても良いだろうし、家族の時間を充実させたいという先生がいてもいいと思うんです。
これは私たち民間で働く人たちも同じですが・・・。
ただ、まずは自分の心に余裕がないと、広い視野で物事を考えることができないと思うんですよ。だから、働き方を自分でコントロールできるようになることはすごく大事な事だと思います。
なるほど。
公文の教室の先生の場合、一番大切な事は子ども達の指導について考える時間をとることなんです。
だから、ICTを活用して教室の事務作業を効率よく行えるようにして、その分どう指導するかを考えてもらえるようにしています。
皆さんの働き方も変わりましたか?
今年度からスーパーフレックス制度が始まり、1週間の自分の仕事のスケジュールを自分でデザインできるようにしました。リモートワークやフレックスという形で仕事する人も増えています。
自分で時間をコントロールしなければいけないので、時間を大切にするようになったし、限られた時間で何をなくして何を残すか、仕事で大事なものは何かをすごく考えるようになりました。
なんか勉強と似ていますね。
そうですね。時間を大切にするという意味では、勉強と同じことかもしれません。
大学入試センター試験は、2021年に行われる入試から大学入学共通テストに変わります。しかし2019年11月、英語の民間検定試験の活用の見送りが発表され、12月には国語・数学の記述式問題の導入の見送りも発表。大学入試改革の2つの柱の実施が見送られることとなった。
最後は、大学入試改革ですか。色々と見送られましたね。
そうですね。結果的には後ろ倒しすることになりましたが、私たちは何のために学んでいるのかという事を考えさせられました。
英語の場合、「読む・聞く・書く・話す」という4つの技能を測る話が出ていますけれど、テストでそれが問われなくなったから学ぶのをやめるのかというと、きっとそうではないと思います。
テストのため受験のためじゃなく、自分の視野を広げるために学んでいける人であってほしいと思いました。
入試制度が変わることによって、教材を変えたりすることはあるんですか?
それは絶対にありません。公文は、どこかの大学に合格するために作られているプログラムではないんです。数学・英語・国語のそれぞれの教科でつけたい力をつけるための教材なので。
論理的な思考力とか、読解力、言語化する力などは、多分、社会がどんなに変わっても必要な力ですよね。私たちが育てているのは、そこの力だと思っています。
例えば英語の民間試験の場合、個別の対策は必要だと思いますが、表面的なスキルで右往左往するのではなく、そのための土台となる力を大切にして欲しいと思います。
これからの入試制度についてはどう考えていますか。
色々な意見があるしあくまでも個人的な考えですが、テストだけで測れるかどうかは分からないものの、これからの社会を考えた時に、英語はできるようになってほしいと思います。
日本人が海外に出て働くだけではなく、日本に来て働く海外の人も増えていますし、海外との距離はどんどん近くなっている。
国内でも英語でコミュニケーションを取る機会は増えていくので、受験で問うかどうかは別にしても、授業の中でスキルが高められるようにしていく必要があると思います。
実は私も、海外で働いていたと言いましたけど、英語をちゃんと学び始めたのは30歳を超えてからなんですよ。英語は苦手で、30歳で初めて受けたTOEICの結果は悲惨なものでした(笑)
え~。
ちょうど30歳になった時に何か新しいことにチャレンジしたいと考えたんです。今まで自分が身につけたスキルや経験が、海外でどれだけ発揮できるのかなって。
最初はできなかった英語も、そこから学んでいけばいいと思って。公文の特徴の「個人別学習」は大人に対しても同じだって思いながら、うまく時間をやりくりして勉強しました。
教育業界での就職を希望する場合、やはり、教育学部が有利なんですか?
よく聞かれるんですけど教育学部のほうが有利なんですかとか、教員採用試験の免許を持った方が有利ですかとかって。でも、そういうことはまったくなくて、いろんな人に来てほしいなと思います。
そうなんですか?
同質なメンバーが集まったチームよりもいろんな物事に興味を持っているメンバーがいたチームの方が個人的には強くなるのかなとか思っています。
自分の周りの友達で教育業界を検討している学生は、教員になるか教育業界の会社に行こうか悩んでいる人も多いです。教員になって直接的に教育に関わる事と、例えば公文に入って教育に関わることの違いは何かありますか?
そうですね。私も実は教育学部なので、それはすごく迷いました。大きく違うなって思うのは、影響力や視野の広さですかね。もちろん先生になってダイレクトに子供に関わる密度みたいなところでいうと、先生の方が濃いと思うんですね。
でも、1人の先生になったとしたら1年間で見られる生徒の数って、30から40人ぐらいじゃないですか。それが、今の会社だと、教室の先生の先にいる子どもたちの合計数は5000から1万ぐらい担当している感覚ですね。
それくらい大きな人数なんですね。
あとは、KUMONが57の国と地域に広がってるという事は、ある意味チャンスとして、57の国と地域で仕事ができるかもしれないという事で。そう考えると、見える視野が広がっていくかなとは思いますね。
最後に求める人物像を教えてください。
人の成長に興味がある人に来てほしいと思っています。また、より広い視野で物事が考えられる人ですね。
まずは目の前の1人の子を伸ばしていくところからスタートしますが、その先にその地域や日本、さらには世界にいる人たちの成長に関わりたいと思えるような、そういう広い視野を持てるようになれる人に来てほしいです。
社会も働き方もどんどん変わっていくし、10年後どうなっているかは全く想像もつきませんが、自分がそれに合わせながら、学んで成長し続けられる人と一緒に仕事がしたいなと思います。
お忙しい中ありがとうございました。