2020年02月21日
(聞き手:工藤菜摘 勝島杏奈 田嶋あいか)
今回の先輩は、龍馬伝に憧れて起業し、理想のリーダー像はマンガから学ぶ・・・、水野雄介さん(37)。
中・高校生向けのIT教育プログラムでは国内最大規模の「Life is Tech !(ライフイズテック)」の代表です。大人気のビジネスを立ち上げた原点は、「オタク」たちの会話だったそうです。
学生
工藤
まず、事業について教えていただけますか?
10年前に「ライフイズテック」という会社を立ち上げて、中高校生向けにプログラミングやITの教育をやってます。
水野さん
学生
田嶋
どれくらいの生徒が学んでるんですか?
利用者は年間1万人、延べ4万2000人ですね。
学生
勝島
「プログラミング」ってどんなものですか?
自分のつくりたい社会とか自分が表現したいものをカタチにできるようにするための手段だと思う。
プログラミングとは
コンピューターに実行させたい命令を作る行為のこと。買い物、ゲーム、店の予約など様々なサービスがプログラミングによって開発されている。
2020年4月からは小学校でプログラミング教育が必修化。
プログラミングを通して、論理的思考力を育てることが期待されている。
人生の可能性も広がるし、結果的に幸せにつながる確率が高くなるから、知っておいたほうがいいと思うものだね。
いま私たちが座っているようなスペースで子どもたちが学ぶんですか?
ここに5~6人の中高生が座って大学生が教えるっていう仕組みで。学ぶ環境づくりにはこだわってるね。この丸テーブルだったり、ちょっとカラフルな感じだったり。
みんなみたいな大学生が教えてくれる方がいいでしょ。
友達ではないんだけど、俺たちみたいな上からでもなくて斜めの関係で。信頼関係で学びがより深まるんだよね。
単にスキルを付けるのではないと・・・。
そうそう。誰もが楽しくなったり、続けたくなったりするものにしたい。イメージで言うと、「ディズニーランド」が競合だよって話しているんだよね。
ディズニーですか!?
ディズニーランドくらいワクワクするもの、価値のあるものを作りたいなと思ってて。
1日の体験だとディズニーには勝てないかもしんないけど、5日間のプログラミング講座だったら、もしかしたら勝てるかもしれない。
好きな仲間と出会えたり、大学でこういうものを学びたいと思えたり・・・将来が変わる可能性が彼らにとってあるから。
子どもたちはどんな風に学ぶんですか?
学び方は、主に3種類。通学型のスクールだったり、夏休みの短期集中型のキャンプだったり。
あと、オンラインで学べる教材作りもやってて。子どもたちがITを楽しく学べる環境を提供してます。
子どもたちの反応ってどうですか?
プログラミングってパソコンの中で入力するものだから、だいたいつまんないのよ。
だから最初は時計アプリを作るっていうのをやって。
例えば、好きなアイドルを画面に表示させる時計アプリとか。10時から11時の間は○○君、12時から13時は△△君とかね。
(笑)
でも、自分が思ったものがカタチになって、いろいろな人に使ってもらえる楽しさを、子どもたちはすごく感じてくれているよ。
素朴な疑問ですけど、プログラミングやITは、もともと頭のいい子どもたちを伸ばすものというイメージで。そうじゃない子どもでも、できるのでしょうか?
全然できるね!
例えば中1の始めから来てくれて今度卒業する子がいてね、学校いけないような子だった。
でも、ずっと通ってくれてそれで自信をつけて学校行けるようになって、高校卒業後は大学行かずに、ある会社のCTO(最高技術責任者)になるんだって。
えー!すごいですね!!
その子が中1のときに最初に作ったのは、この席替えのアプリなんだけど・・・。
席替えのアプリ!?(笑)
席替えがみんなもめちゃうんだって。すごいインターフェイス悪いんだけど(笑)
「席替え開始!」とかやって、例えば35人だと…。
発想がおもしろいですよね(笑)
リリースして、1000ダウンロードとかされるの。それって嬉しいじゃん。
アプリで1000って全然多くないけど、自分の作ったものが1000人に使ってもらえるとすごい自信になるんだよね。
他にはどんな子がいますか?
例えば、名古屋の女の子で、高1くらいのときに来てくれてアプリを作ったんだけど、それで高2で賞を取って、高3でAO入試で慶應大学に受かって。で、今度は教える側にまわってくれたりして。
あとは、この前、17歳で1億円の資金調達をしたっていう子がいるんだけど、その子は13歳のときとかに来てくれて。自分で起業した子もいるしね。
水野さんは、大学生の頃から起業しようと思ってたんですか?
実は最初、教師になろうと思ってたんだよね。
教師?
大学院時代に開成高校で非常勤の講師をやってて。
昼休みに生徒同士で話す内容を聞いてたら、ITとかゲームの話をしている子がたくさんいたんだよね。
でも当時、IT好きっていうのはあまり褒めてもらえてなくて。「オタク」とか言われて。そういうのを好きな子がその能力を伸ばせる環境を作りたいなって考えて。
なるほど。
子どもって中学くらいから自立しだして、うまく周りからのサポートがあると、キュッと伸びる瞬間がある。メチャメチャ伸びるんだよね。その瞬間を見るのが好きで。
好きな仲間と出会えたり、大学でこういうものを学びたいと思えたり・・・、将来が変わる可能性が彼らにとってあるからね。
大企業に入って安定した環境で社会を変えようとは思わなかったんですか?
先生になるとか、文科省に入る、企業に入るというような道もあったけど、俺は自分で作った方が社会を変えるには早い気がした。
あと、あまり世渡りがうまくないから(笑)。
組織で昇進するというのが、なんかできなそうかなと思って。そんな感じかも。
少子高齢化の中で教育業界の市場が小さくなっているんじゃないかと思うのですが、業界の将来性をどう考えていますか?
市場…誰もやらないからやらないとか、市場がないからやらないとかっていうけど、自分で作りゃいいって話で。だって誰かやんないと終わっちゃうぜって。
義務感みたいな…?
義務感っていうか、誰もやらないから勝手に使命感を作ったみたいなのはあるかもね。
ちょうどそのころ大河ドラマで「龍馬伝」をやっていて、「日本変えるってかっこいい」と思って(笑)
1日のスケジュールで、SNSからの情報収集で役割分担みたいなのはありますか?
基本的にはTwitter、Facebookあたりは全部インプット。情報の鮮度が高い内容をよくシェアしてる人の投稿はチェックするようにはしてるね。
ツイッターで中高生の話題を情報収集するとありますが・・・。
例えばどういうこと?
話題というか、中高生が何をしゃべってるか、何を思っているかが知りたい。
例えば「学校がきょう○○だから嫌だ」とかだったら「○○だから」というところが結構大事だったりするじゃん。
あとは、ツイッターで投稿したことに誰かが返信したりする内容だったりとか。何にワイワイするのかとか。そういう感じ。
それをどうビジネスに生かすんですか?
サービスをつくるときにその現場感ってすごい大事なんだよね。中高生の感覚をある程度身近においておくことは大事にしている。
あと、マンガも読まれるみたいですが、マンガでの気づきを仕事に?
マンガから学ぶことはめちゃめちゃある。
いろんなマンガ読んでいるとだいたい漫画の主人公って通じる部分があると思うんだ。
例えばスラムダンクの桜木とかワンピースのルフィとかナルトとか。
まっすぐに大きな志を持ってて、ぶれなくて、だけど不器用で、で何かこうみんなから愛されて、みたいなやつなのよ、主人公って。
いろいろなマンガから主人公の共通点を見つけて、箇条書きでメモしたりして、じゃあ自分はそういうふうになろうとか。
経営者像の形成につながっている?
それもあるし、チームをどう作るかとかにも生かしてるね。
逆に何も考えてない時間とかってないんですか?
基本的はそういうふう(いろいろ考えながら漫画を読む)になっちゃうんだよね。
最後に、水野さんにとって仕事とは何か教えて下さい。
「仕事とは」・・・うーん。
はい、これですね。
その心は?
このままなんだけどね。
もちろんお金を稼ぐとかもあるんだけど、人を幸せにするとその幸せが返ってくるっていうか。
人を幸せにすることが自分の幸福につながるということが、人間にはできると俺は思っていて。
かつ、社会を変えるための手段。つまり、社会の中で次の世代がよりよく生きるために新しい社会をつくる、っていうのが仕事をしてる意味なのかなと。
起業してみて、いま楽しいですか?
めちゃめちゃ楽しいっすね、正直ちょっと申し訳ないぐらい(笑)
起業してから1日も楽しくなかった日はないぐらい楽しいですね。
えー!いいなあ!!(笑)
どういう時に楽しさを感じてるんですか?
1番はやっぱり子どもが成長してる時が楽しいですね。
あとは、新しいプロジェクトとか新しい事業なり新しい何かが始まるとき。
それによってまた見える世界が変わるときとか。
チームのメンバーが増えて、そのメンバーが活躍したりするときはほんと楽しいし、うれしいよね。
編集 浦林李紗