2020年01月20日
(聞き手:伊藤七海 西澤沙奈)
最近、都内を中心に見かけるようになったスマホ用のモバイルバッテリーのシェアリングサービス。日本に導入されてから、1年余りで全国に急拡大してます。このサービスを展開する会社のCEO秋山広宣さんは、プロのラッパーです。音楽業界から経営者に転身し、事業を拡大させ続ける秋山さんに聞きました。
2007年にラッパー「日華」として、メジャーデビューした秋山広宣さん。日本語、英語、広東語でラップをするというスタイルでアジアを中心に人気を集め、「NO.1」という曲は、当時、プロ野球・楽天の岩隈久志選手の登場曲にも使われていました。今は企業のCEOとして、ビジネスの世界にフィールドを移し活躍しています。
秋山さんから就活生へ向けてのメッセージ!
よろしくお願いいたします。早速ですが、現在のお仕事について教えてください。
スマホのバッテリーを、どこでも借りられて、どこでも返せる、チャージスポットというのがメインの業態になっています。
チャージスポット
スマホ用のモバイルバッテリーを借りることができる無人のバッテリースタンドで、借りた場所と別の場所に返却できるため、バッテリーを自由に持ち運べる。
これ1時間未満150円、48時間未満300円ですごく安いじゃないですか。変な話、儲かっていくのかな…。
ああ!実はそんなに難しくなくて。
この機械、実は中国の広州にいる40人の製造チームが作っています。製造チームを社内に抱えているから、低コストで生産できるのが大きいですね。
へえ!
セブンイレブンさんとかが、自社ブランドを展開して利益単価をあげているような、ある意味その構造に近いというか。
ある程度の割合の人が借りてくれれば、製造費用は回収することができちゃうんですよ!!
あとは、このチャージスポットの画面に広告を出すサイネージビジネスを展開しています。それも収入の柱なんです。
全国でどれくらい広がっているんですか?
今は47都道府県に広がり、1万台を突破しました。
提携してるのはイオンさんとかコンビニさんもそうなんですけど、メガネスーパーさんとか。
コンビニは分かるんですけど、なんでメガネスーパーさんに設置しようと思ったんですか?
実は、メガネスーパーさんからのオファーで。
ええ!
この台を設置するコストって設置側はゼロで、僕たちが全部タダで置いていっているんですよ。
なるほど!
なのでレンタルフィーがいらないので「どうぞ!」っていう感じ。
なんで充電に注目されたんですか?
中国では2015年に同じようなサービスが始まっていて、すでに200万台、300万台あるんですよ。
そうなんですね!
向こうですでにインフラになっているのを見て「なんで日本にないんだろう」と思って…。
たしかに!
日本で広げるのに何が一番大変でしたか?
これが必要だと理解してもらうことですね。
大型チェーンに導入してもらおうとすると、“もっと多くの事業者に導入してもらってから”という話になるし…。
小型店や個人店に導入してもらおうとすると、“大型チェーンは入ってもらってるのか”という話になる…。
なるほど。
多くの事業者に導入してもらい、ブランド力がつくまで時間がかかりましたね。
どんな工夫をされましたか?
設置してくれたお店に顧客を誘導できるようにしたりとか。例えば、ラーメン屋さんだったら、バッテリー借りた人は味玉無料とか。
めっちゃいいですね!!新しい仕事を展開するやりがいは何ですか?
「絶対無理だよね」って言われたことをやること!
この事業も当初は「本当にうまくいくの?」ってすごく言われて、それを1つ1つ覆してきました。大変だったけど面白さもそこにありました!
そうだったんですね!
やっぱり努力した人たちが勝っている世の中じゃないですか。だから苦労は買って出たほうがいいなっていうふうに思いますね!
なんで以前ラップをしていたんですか?
お父さんが香港出身、お母さんが日本人なんですけど、日本と香港、中国を常に意識してきました。
その中で、その国や地域を束ねることができるものがないかなと思っていて…
当時は、英語はビジネスレベルではなかったけど、話すことはできたので1曲にすべての言語を交ぜてやったら誰もいないかなと思って。
すごいですね。
ラップは、国や地域をつなぐために自分が最小限でできる一つの手段だったんですよ!
15歳くらいからスケボーやダンスをやっていて、単純にラップが好きだったことも大きいですけど(笑)
生業にしようとは思わなかったんですか?
思いましたが、なかなかちょっと売れなかったので…。
今になって、やっておけばよかったと思うことはありますか?
それがないくらい本当に何でもやってきました!この人が好きだと思ったら気持ちを伝えてきたし(笑)
(笑)
その中でも本当にやっておいてよかったのは、やっぱり語学!!
語学は得意ですか?
あんまり…。
英語ともう1つ、3か国語くらい話せたほうがいいよ、絶対!!
言葉は文化を覚える手段で、文化を理解したときに、実は心を開くっていうことがあるんですよ。
大丈夫!環境に身を置けばできるようになりますよ。
学生は飛び込んで行けと?
そう!
コンサルティング事業をやっていたとき、香港に進出する人たちの思いを僕が通訳で伝えることが多かったんですが、文化を理解してニュアンスを伝えたないと、真意が伝わらないことがありました。
“わびさび”とか日本語の文化背景があるように、各国にもそういうものがあって、そこまで伝えられると共有される情報と安心感が全然違ってくる。
文化の違いとかはどう感じていますか?
香港や中国は決断が速いのはいいけど、「えいや!」でやっちゃって、ダメになるケースも多い。
一方で日本はすごく計画性があるんだけど、決断するのに時間かかって慎重で、でも走り出すとすごく完璧っていう。
僕は両方のいいとこ取りができるような感じですかね。
2018年9月に起きた北海道地震の際に、札幌市役所にチャージスポット届けたり、モバイルバッテリーを無料で配布。2019年9月には、東京・渋谷区と防災協定を締結し、災害時には、モバイルバッテリーの提供やチャージスポットの画面を活用して災害情報を発信することにしていて、注目が集まっている。
災害時の必要性についてはどう考えていますか?
日本は災害と共存していかなきゃいけない国だと感じています。
千葉の大規模停電の時、停電エリアに近い場所では、ふだん週に1回くらいしか使われない台が40回くらい使われていたんですよ。災害時に価値を見出せてもらえてるってことで、うれしいです。
へえ!
アーティストが本業だった時に、福島県で震災のチャリティーイベントをしていたんですが、単発的な支援になってて…。
それから継続的な支援ができたらという思いがずっとあったので、チャージスポットでその一端を担えたらうれしいなって思っています。
秋山さんの1日のスケジュールを教えてもらいました。
「インフルエンサーアンテナチェック」とはどういうことですか?
インスタ開けてフォローしている人たちをバーっと見て、どこに行って、何を投稿しているかを見ています。
SNSは、この人が言うとすぐに広がるような影響力のある人たちをフォローするようにしていますね。
みんなのほうがよく分かっていると思うけど、毎日情報も変化する。そこに敏感でいようって意味でチェックしていますね。
就活生が持つ心構え、どんなことが大切でしょうか?
これからの時代は昨日言った事が今日変わってるとか、今日言っていることが随時変わっていき、すごく変化が求められる。だから変化を恐れずに、努力を惜しまないでほしいと思っています。
秋山さんにとって仕事とは何ですか?
「次の世代へのバトン」だと思っています。
僕たちはチャージスポットという1つのアイデアを展開しているけど、結局新しいアイデアは次世代のほうが優れていると心から思ってるんですね。
次の世代へのパスが遅れると世代間の感覚の違いが出てくるし、僕も早い段階でパスをつないで、次の世代が先頭に立つ時代を一歩後ろに下がってお手伝いできたらなと思っています。
最後に無理なお願いをしてもいいでしょうか?
なんでしょうか?
就活生向けのラップをお願いします
ええ!!
フリースタイルとか全然やっていないけど大丈夫かな…。就活生に向けてですよね?少し待ってね…。
じゃあ、いくよ?!
来年3月4月に控えている就活
大事にしろお前らの嗅覚
that’s right !!
なぜかというとそこから自分で先見る未来
創るのは次世代
全て託すなら21世紀あなたへのすべての期待
それが大事、
だからここから開示するすべての心境、近況
全て踏まえながら
「自分次第」「自由自在」「展開する未来」
それは「自分への期待」「自由自在」なのも「自分次第」
that’s right !!
N・Y・C・C・A(日華)
in the place to be
頑張れYO!
すごーい!かっこいい!!初めて生で聞いて感動しました!!!
ありがとうございました。
※就活生に向けた秋山さんのラップ動画は記事の冒頭にあります。