2019年05月17日
(聞き手:佐々木快 西澤沙奈)
今回の先輩は、日本航空のキャビンアテンダント、見供瞳さん。“花形職業”のイメージがあるけど本当のところは? さまざまな乗客と接するキャビンアテンダントに必要な情報は?学生リポーターが率直な疑問をぶつけてみました。
学生
西澤
よろしくお願いします。まずは見供さんの現在の業務を教えて下さい。
今は国内線のファーストクラスまでのサービスと安全業務確認、国際線のエコノミークラスとビジネスクラスまでのサービスと安全業務確認を担当しています。
見供さん
やりがいは、どんなところにあるのですか。
マルチな役割を担えるところですね。安全業務とサービス業務がありますが、ドリンクをお出しするなどのサービス業務も、例えば小さなお子様がぐずってしまったら保育士さんみたいにあやすとか、その場に応じた対応が求められるんです。
勤務するフライト先はどのように決まるんですか。
前月の20日過ぎには翌月のフライトスケジュールが出ます。今は国際線の慣熟(※物事になれて上手になる意味で、航空業界でよく使われる)を目指していて、最近ではロンドン、ニューヨーク、パリに行きました。
行っていないところが、フランクフルトと、中国の5か所、インドかな。それ以外はだいたい行きました。
1回のフライトはどのようなスケジュールになるのですか?
この間のニューヨークの便ですと、出発して翌日の夕方に着いた後、その日と、次の日はお休みなんです。
それで、4日目の日の朝に出発します。ロンドンもパリも1日は絶対お休みがあるので、好きなところに行ったりしていますよ。
キャビンアテンダントといえばドラマのイメージがあって、すごく華やかな女性社会のイメージだったんですけど…。
つまり、怖いイメージってことですよね(笑)。
(笑)。入社前と入社後のイメージのギャップはありましたか?
私も入社前は女性社会のイメージが強くて。でも実際入ってみると全然そんなことはなくて。
若い新入社員からベテランの先輩までいるので、経験値が違う分、本当に豊富なアドバイスもあるので自分の力に応じて成長できているなって感じていますね。
そうなんですね。
それに、飛行機はキャビンアテンダントだけでは飛ばすことはできません。グランドスタッフや清掃のスタッフなどの多職種間のバトンタッチがあってこそ成立する仕事ですよね。
お客さまを思うように社員同士がコミュニケーションを取ったり協力し合ったりする、「仲間を大切にする会社」だと感じています。
学生
佐々木
フライトがある日は10時くらいに起床されるんですか。
便によって全然違っていて。これはニューヨーク便を想定して書いちゃったんですけど(笑)
起床のタイミングで情報を集めているんですね。
キャビンクルーは前日に仕事の事前準備をする事が多くて。当日はその日のニュースや現地の気温などのリアルタイムな情報を集めています。
SNSとか新聞のアプリを活用しますし、「ながら作業」でテレビも必ずつけていますね。日本の情勢を確認したり、結構、スポーツはお客さまと話しやすい話題なので、ピックアップしています。
なるほど。(スケジュール欄に書かれた)お客さまとの「タッチポイント」になるようなニュースを中心に収集、どういう意味ですか。
フライトもお客さまとの出会いは一期一会。「はじめまして」のお客様にどう話しかけたら、少しでも心を和らいでいただけるかなって考えています。
例えばこの前、ニューヨークに行ったんですけど「今、セントラルパークで桜が咲いているみたいですよ」とか。ささいな事かもしれませんが「タッチポイント=接点」と呼んで大事にしています。
話しやすいお姉さんって感じですもんね。情報活用が生きているんですね。
情報を伝える時に工夫していることはありますか?
自分でアンテナを張って、こういうお客さまがいたらこういう風に答える、とかのシミュレーションをしていますね。
シミュレーション?
学生さんが多ければ、旅行や留学のフライトだと思うので、スポーツの話題を、例えばこのお客さまだとサッカーの話だと会話が弾むかなとか。
それから、路線によっても全然違いますね。ハワイでしたら観光路線なので遊びに行く方が多いんですけど、ヘルシンキでしたら乗り継ぎのビジネスマンが多かったりとか。
路線によって客層も、求められるサービスや対応も違うので、それに応じて準備しています。
1日のスケジュールにある「お客さまの要望を把握するシステム」って何ですか。
それぞれのお客さまのお乗り継ぎ便や、お食事のご要望などの情報を把握できる社内システムがあるんです。
これを見て、例えば乗り継ぎが多くて疲れていらっしゃる方がいるから静かにお休み頂けるような環境を作ろうとか。そういった情報も把握・活用しています。
2020年の東京オリンピックを控えて海外からも幅広い客層の方が来られると思いますが、こころがけていることはありますか。
日本航空をご利用くださるということは、飛行機に乗った瞬間から日本を感じたいっていうお客さまが多いと思うので仕草やアイコンタクトだったりにも気をつけています。
飲み物をお出しする時に少し手を添えてあげたり、席回りで汚れているものがあれば、「失礼します」と言ってすぐ拾ったりとか、そういう事が外国の方にとっては日本だな、と感じるそうなんです。
情報の活用という意味では気をつけていることはありますか。
私が対応するのは観光の方が多いので、自分が観光で行くとしたら何を知りたいかなっていうことを大切にしています。
例えば東京は電車の乗り継ぎがすごく難しいじゃないですか。そういう時におすすめのアプリを紹介したり、行き方をすぐに答えられたりするようにしています。
学生時代はどんなことに取り組まれていたんですか。
学生時代はオープンキャンパスなどで学部紹介するイベントに参加していました。高校生のニーズはどこにあって、それに対応するにはどういうイベントをしたらいいのか考えていましたね。
今の仕事もお客さまのちょっとした変化やニーズを見逃さないようにしています。
「ま、いっか」で済ませる事もできるんですけど、そうはしないようにする、ということができているので、仕事に役立っているなって思います。
学生時代の経験が仕事に生きているんですね。今の学生にこれをやっておいてほしい、ということはありますか。
色んな経験をしてほしいのと、あと、いろんな人に会った方がいいなって私は思います。
学生の時って自分と同じような価値観の人や同じような環境で育った人と一緒にいる事って多いじゃないですか。でも社会に出たらそうではない環境の人と出会う事ってすごくたくさんあって。
“免疫”があるかないかではなく、「こういう考えの人もいるんだ。じゃあ、この考えすごくいいな、まねしてみよう」とか、学生の時からできていると社会ですごく役立つんだろうなと思います。
いろんな人に会って、情報に限らず多くのことを吸収することが大事なんですね。
仕事とは「学びと自己成長」なんですね。
仕事は常に学ぶ事があるなって。学ぼうと思ったら切りがないと思っていて。でも学ばないで、「これでいいや」と思っちゃったらもうそこで、自分がストップしてしまうじゃないですか。
働く上では最低限のことはしなきゃいけないけど、それ以上を求めたら他人は「こうして」とか「ああして」とか言ってくれない環境の方が多分多いと思うんですね。
なので、自分からできる事を見つけて、こうしたらお客さまは喜ぶかな?とかのアンテナを張って、いかに仕事しやすい環境を作るかが私の今の目標ですね。
目標の実現のために、どんなことに気をつけているんですか。
成長するためには、最初に「何か学びがあって」、次は「こうしてみようっていう発見があって」そして「行動してみることが一番ステップとしては大事」だと思うので。その姿勢を大事にしています。
最後にどんなキャビンアテンダントを目指しているのか教えて下さい。
見供瞳と出会えて良かったって思われるキャビンアテンダントを目指しています。お客さまからも、もちろんクルーからもそう思ってもらいたいなって。
あのCAさん良かったなって思ってもらえる事は簡単かもしれないけど、名前を呼んでもらえるっていうのは難しいですよね。
私のひと言やサービスで「あ、この人良かったな。この人がいるからまた乗ってみよう」って思ってもらえるようなキャビンアテンダントを目指しています。