2022年04月08日
(聞き手:小野口愛梨 本間遥)
ことし4月からの成人年齢引き下げ。18歳から成人になることで、とても懸念されていることがあります。いったい何?どうすればいいの?司法担当の山形晶解説委員に聞きました。
学生
本間(21)
18歳成人でいろいろ変わる中でも、影響が一番大きいものってどれですか?
それはやっぱり「契約」。なんと言っても「契約」。
山形
解説委員(47)
もうこの点は本当に危ないと、成人年齢引き下げの議論が始まった当初から言われています。
なんだか大ごとですね。どうしてなんですか?
“悪質商法”の餌食になるんじゃないかと心配されているんです。
根拠となるデータがあります。昨年度、国民生活センターに寄せられた契約に関するトラブルの相談件数です。
若い世代で見ると20歳で、ぐんと増えています。
学生
小野口(21)
本当だ!
成人したばかりの人たちが、悪質な業者に狙われているのではないかと考えられています。
成人になると、親の同意なくいろいろな「契約」が結べるようになりますよね。
そうでした。
でも成人になったばかりの人は社会経験が少ない。とても狙いやすい対象なんですよね。
これが、18歳に引き下がると、今度は18歳・19歳の被害が急増するんじゃないかと心配されているんです。
“18歳・19歳を狙わずにいられるか”。言葉は悪いけれど、悪質な業者からすれば、そう見えるんじゃないかな。
そう考えたら、すごく危険ですね。
山形晶解説委員は、司法取材のスペシャリスト。社会部記者時代には裁判員制度が始まり、制度をめぐる課題を取材。2020年から司法・事件事故などを専門とする解説委員を務める。
具体的にはどんなところに気をつけたらいいんでしょう?
世の中そんなにうまい話はない、ということです。
「必ず儲かります」といって勧誘してきて、でも実際は全然儲からない。そんな中で多額の借金を抱えてしまうようなケースが実際にあります。
もちろん過度に恐れる必要はないですが、お金の話ですから慎重に考えたほうがいいと思います。
借金抱えたら、その後の人生に影響大きそうですものね。
いろんな希望とか夢があったはずが、借金を返すためだけに働く人生になりかねません。
それに、お金のトラブルが起きると家族や友人との人間関係にひびが入ることもあります。
会うたびにお金の話になるのは、嫌じゃないですか。
それは嫌ですね。
国民生活センターが呼びかける、18歳と19歳が特に気をつけるべき10の消費者トラブルの記事はこちら。
対策はされていないんですか?
もちろん国も対策を進めてきました。
この成人年齢引き下げの法律は、2018年に成立しましたが、効力が発生するまでに、わざわざ3年以上空けたんです。
それこそ、消費者被害を防ぐための「準備期間」が必要だとしてね。
どういう準備をしたんですか?
まず消費者契約法という法律が改正されました。
未成年には強力な保護のルールがあって、「親の同意がない」という理由だけで、すべての契約を取り消せます。
成人になれば、そのルールはなくなりますが、この法改正で、何歳であっても社会的な常識に照らしてあまりにも不当な契約であれば取り消せるようになりました。
具体的にはどんな契約が対象ですか?
例えば、契約を結ぶ消費者の不安をあおり、冷静な判断をできなくさせて結んだ契約。
あとは「デート商法」と言われたりする、恋愛感情を利用して契約させたもの。こうした契約に関しては取り消せるようにしました。
ほかにはどんな対策を?
大きく2つあって「教育」と「周知」です。
教育では、高校生への消費者教育を充実させることになりました。
それで消費者庁は「社会への扉」という教材も作りました。
ことし4月からは高校の公共という科目と家庭科で、消費者教育や金融教育が行われることになっています。
新しい教科書を見ましたが、結構、実践的でしたね。
私たちは消費者教育や金融教育になじみがないので、すごく新鮮な感じがします。
もう1つの周知で言うと、テレビなどのマスメディアを通じた形に加えて、国はYouTubeやSNSなど、とにかくいろんな形で周知しています。
18歳・19歳を中心にターゲットになりやすい世代に届かないと意味がありませんので。
試行錯誤しているわけですね。
お金を貸す側の銀行などはどう対応しているんですか。
銀行で扱われている「カードローン」というのがあって、無担保でそれなりの額が借りられます。
これについては、ほとんどの銀行が、4月以降も当面は20歳未満には提供しませんと言っていますね。
一方、消費者金融の業界団体が去年10月に公表した調査では、未定としたところもありましたが、少なくとも全体の4分の1が、4月以降、18歳・19歳を貸付対象にすると回答しました。
そうなんですね。
対策を取っている金融機関があるとはいえ、18歳から成人として扱われるわけなので自分の身は自分で守るが原則になりますよね。
万が一、消費者被害にあってしまったらどうすればいいのでしょう?想像はしたくないですが。
絶対に諦めないでほしい。それに尽きます。
悪質だと証明できれば何とかなるかもしれない。
それに必ず相談する場所があります。社会の人たちはそこまで冷たくないんですよ。
相談先はどんなところがあるんですか?
例えば、悪質な契約を結ばされそうになった。あるいは結ばされた時には、全国の自治体に「消費生活センター」などという名前の相談窓口があります。
電話で「188」にかけると自動で近くの窓口につながって、相談員が相談に乗ってくれます。まずはこれを使ってほしいです。
でも電話ってハードル高いです。
そうですよね。そこで徳島県ではLINEを使った相談受付が始まっています。
国はこうしたSNSを活用した相談体制をいずれ全国に普及させたいと考えています。
そういう動きもあるんですね。
何でだまされたんだろうとか、自分が悪いんじゃないか、バカだと思われるんじゃないかと思って相談できない人、大勢いると思うんです。
でもそこは自分を責めるんじゃなくて相談して欲しいです。まずは相談、それが自分の身を自分で守るということだと思います。
私たち就活生も含めて狙われているということだと思うので、改めてお金のこと考えます。
別に成人になったらその日、その瞬間に何かが大きく変わるわけではないですよね。でも、社会からの扱われ方は変わります。
特にお金については「警戒のスイッチ」を押して欲しいです。
「スイッチを押す」、私も心がけようと思います。ありがとうございました。
編集:種綿義樹 撮影:石川将也
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