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海賊版サイト「漫画村」に "裏広告" 大手企業も

2018年4月18日

5万点以上の漫画や雑誌が無断で掲載された海賊版サイト「漫画村」に、国内の複数の大手企業の広告がひそかに「裏広告」として表示される仕掛けが施されていたことがNHKの取材でわかりました。専門家は、こうした裏広告などの広告収入がサイトの運営資金の一部になっていた可能性があるとして、違法なサイトへの広告掲載について対策を呼びかけています。

ネットワーク報道部記者 田辺幹夫

「漫画村」のサイト
漫画村は、漫画家や出版社に無断で最新の漫画雑誌などが掲載された海賊版サイトで、去年秋ごろから、多くのアクセスを集め、被害額は、3000億円以上と試算されています。

漫画村のサイトについて、NHKが複数の専門家に解析を依頼したところ、プログラムに仕掛けが施され、表面上、閲覧者にはわからないように、別サイトが同時に立ち上がり、この中に広告が掲載されていたことがわかりました。
掲載されていた広告は、大手銀行や生命保険会社、IT企業やゲーム会社、不動産関連会社などのものでした。漫画村のサイトにアクセスすると、実際には見ていないこうした別サイトの広告が『閲覧された』とカウントされる仕組みで、いわば「裏広告」です。

別サイトは、多くが、ネット上の記事や話題を紹介したいわゆる「まとめサイト」で、確認できただけで50サイト以上ありました。

岡本勝之さん
セキュリティー企業「トレンドマイクロ」の岡本勝之さんは、「漫画村のサイト運営者が、別サイトのアクセス数を増やす見返りに、そのサイトの広告収入の一部を報酬として得ていた可能性がある」と話しています。

「驚いている」「責任を感じている」

広告が掲載されていた大手銀行の担当者は、NHKの取材に対し、「取材を受けるまで事態を把握していなかったが、調べてみるとこうした広告詐欺と思える行為に利用されていたと判明した。自社の広告はクリックされるたびに広告料が支払わるタイプのものだったので、実質的な被害額は幸い今のところなかったと考えているが、二度とこうしたことが起きないよう対策を考えたい」と話していました。

また大手不動産関連会社の担当者は、「情報を受けて調べたところ、確かに広告が掲載されていたことがわかり、代理店に依頼して広告を止めた。被害額も含め、現在、原因を調査している。こうした詐欺のような行為に自社の広告が使われていたことは残念だ。代理店に任せていたとはいえ、海賊版サイトにつながっていたことに企業としての責任を感じている。いま、再発防止策を模索しているが、自社のネット広告がどのサイトに掲載されるかすべてを把握することは難しく対策に苦慮しているのが現状だ」と話していました。

ネット広告の仕組みを悪用か

ウェブサイトに表示される広告、いわゆる「ネット広告」は、多くの場合、広告主が掲載先を選ぶのではなく、広告代理店や広告配信業者が仲介して、掲載先が決まる仕組みになっています。広告代理店は、それぞれの広告がどのサイトに掲載されるか、需要と供給のバランスで自動的に掲載先が決まる「アドネットワーク」と呼ばれるシステムを使って取り引きしています。
こうした仕組みを使うと、日々変動する大量の広告をリアルタイムにさばくことができる一方で、結果的に広告主の企業が望まないようなサイトにも広告が掲載されることがあります。たくさんの代理店などが複雑に入り組んでいることもあり、今回のような問題が起きることが指摘されてきました。

ネット広告の調査業務などを手がけている会社「モメンタム」の高頭博志代表は「自社の広告が悪質なサイトなどに掲載されていないか確認するサービスなどもあり、広告主側は、そうしたサービスを利用するなどして、広告の掲載先のチェックを強化することが必要だ」と話しています。

漫画村はいま

漫画村をめぐっては、今月(4月)13日、政府は「被害が大きい」として、サイトそのものを技術的に閲覧できなくする、「ブロッキング」という対策を行うべきだとしました。

しかし、プロバイダーで作る業界団体や憲法などの研究者でつくる団体が、「政府が具体的なサイト名を挙げてブロッキングを要請することになると、憲法が禁止している検閲にあたるおそれもある」などとして、この対策に反対する緊急の声明を発表するなど大きな議論が起きています。

こうした中、「漫画村」のサイト自体は、今月中旬から「メンテナンス中」などと表示され、閲覧できない状態が続いていて、17日からは、サイトそのものに接続できなくなっています。

漫画村の実態については、クローズアップ現代+「追跡!脅威の”海賊版”漫画サイト」でも詳しくお伝えしました。
2018年4月21日(土)午前1時10分~35分(再放送)

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