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奥が深い鏡餅 意味は?いつ飾る?

師走に入ると、年末年始の準備が本格化します。店には正月飾りなど縁起物が多くならびます。そのなかのひとつが「鏡餅」です。毎年飾っているという家庭も多いと思います。
でも、なぜ鏡餅を飾るのか、その意味や飾る時期などを知っていますか?
鏡餅について調べてみると、コロナ禍でのトレンドも見えてきました。

なぜ飾るの?

正月飾りのひとつ、鏡餅。
店で売られているのを見ると、年末年始が近づいてきた感じがしますよね。
では、なぜ鏡餅を飾るのでしょうか。
日本文化に詳しい三浦康子さんに話を聞きました。

三浦さん
「伝統的な正月行事というのは、もともと『年神様』という新年の神様を迎えて、もてなして見送るために生まれたんです。この年神様のよりつくところ、つまり居場所が鏡餅です」

神様が宿る場所がお餅というのも不思議な感じがしますよね。
三浦さんによりますと、私たち日本人の食文化と深い関係があるそうです。

三浦さん
「日本人にとって主食の米が、自分たちの命を支える大事な食べ物ですから、稲や米には生命力を強める霊力が宿っていると考えられてきたんです。その米をついて固めて作るお餅には、霊力が凝縮されているとされたのです」

めでたい日に、お餅を神様に供えたり、食べたりするのも、霊力が凝縮されていると考えられていたからなんだそうです。

鏡に見えないのに…

お餅が供えられる理由は分かりました。
しかし、不思議な点はまだまだあります。
そのひとつが名前の由来です。
見た目は鏡のように見えないのに、なぜ「鏡餅」というのでしょうか。

三浦さん
「弥生時代など古い時代に使われていた丸い形をした鏡に由来するんです。鏡というのは三種の神器のひとつで、古来、神様は鏡に宿ると考えられてきたからなんです。その鏡をお餅で表したので鏡餅というわけです」

さらに、多くの鏡餅が2段である理由も教えてもらいました。

三浦さん
「実は、日本文化というのは、何事も『陰と陽』で成り立っていると考えるところがあるんですね。2段になっているのは陰と陽、『月と太陽』を表わしていると考えられています」

てっぺんは「みかん」じゃなかった!?

鏡餅の飾りにも、意味が込められています。
いちばん気になるのは、てっぺんに飾られている果物です。
実は、もともとは「橙(だいだい)の実」なんです。

橙の実は、熟しても落ちず、新しい実がなっても残ることから、「代々家が栄えますように」という願いが込められているそうです。
みかんが代用されることが多いですが、聞いてみると、みかんでも縁起がよいということです。

三浦さん
「みかんはかんきつ類です。かんきつの『きつ』が『吉兆』の『吉』とつながるということで、縁起がよい、おめでたいというところは共通しているんです」

いつまでに飾るの?

鏡餅を飾る時期ですが、元日には、年神様が訪れるので、遅くとも30日までに飾っておくのがよいと言われています。
31日では、葬儀と同じ一夜飾りになるため、避ける習わしがあるんです。

さらに、大掃除をして場を清めてから飾ることが重要で、床の間や神棚がない家では、リビングの飾り棚の上など落ち着いた場所に飾るのが理想的だといいます。

お年玉の始まりは鏡餅!?

鏡餅はいつまでも飾っておくわけではありません。
新年を迎えてから「鏡開き」をして食べますが、これにも意味があるんです。

三浦さん
「鏡餅には年神様の魂、つまり『年魂(としだま)』が宿っています。その年魂を家長が家族に分けて、それを食べることによって、魂を身につけて1年を生きる力にするわけです」

ここで気になるのが「年塊」ということばです。
子どものころ、正月にもらっていた「お年玉」と響きが似ていますよね。
三浦さんによりますと、「年魂」が「お年玉」のルーツなんだそうです。

もともとは鏡餅を分け与えていたものが、江戸時代から徐々にお金に変化し、高度経済成長期には全国的に「お年玉」といえば「お金」が一般的になったといいます。
そして、渡す対象も家族から子どもに変化していきました。

コロナ禍で変化も

さらにコロナ禍で、鏡餅のトレンドにも変化があったようです。
コロナ禍で迎えた初めての年末となった2020年。
12月の一世帯当たりの「もち」の支出額が増えたんです。
鏡餅やお雑煮などのために購入されているのではないかと三浦さんはいいます。

三浦さん
「コロナ禍で帰省をしない、できないという人が非常に増えていますので、(自宅で)『昔ながらの正月を過ごしたい』と鏡餅を飾るという家庭も増えているようなんです。ひとつひとつにとても深くて面白い意味が込められていますので、意味を知っていただくと、すべての物事が『自分たちの幸せを願う気持ち』を表しているということが分かってきますから、『幸せに結びつくんだったら、ぜひやってみよう』と思っていただければうれしいです」

今回、鏡餅は飾るだけではなく、食べて初めて本来の意味をなすことがわかりました。
まずは大掃除をして鏡餅を飾って、正月を迎える準備をしたいですね。

最後に、正月に関する入試問題です。

問題

生徒の会話文を読んで質問に答えなさい。

まさき君「みんなのところのお雑煮ってどんな感じ?」
まこと君「餅以外には(X)、ニンジン、ゴボウを入れている」
しんご君「鶏肉に(X)、小松菜などが入っているよ」
たかし君「(X)、ダイコン、ゴボウかな」

Xにあてはまる語句を1つ選びなさい。

ジャガイモ
サトイモ
サツマイモ
ヤマイモ

(函館ラ・サール中学校 2018年 社会 改題)

正解は、サトイモです。
親芋から小芋が次々増えることから、「子孫繁栄」の縁起物としてお祝いの席でよく食べられています。

「週刊まるわかりニュース」(日曜日午前8時25分放送)の「ミガケ、好奇心!」では、毎週、入学試験で出された時事問題などを題材にニュースを掘り下げます。
「なぜ?」、実は知りたい「そもそも」を一緒に考えていきましょう。

ミガケちゃん
なるほど