世界に広がるキャッサバ
皆さんは「キャッサバ」というと何を思い浮かべますか?そう、そう、一時流行したタピオカの原料ですよね。実は「キャッサバ」は、世界では何億人もの人が「主食」として食べているイモの一種なんです。その“実力”について学びましょう。
問題に挑戦
キャッサバは、もともと南米原産ですが、大航海時代にアフリカ大陸でも栽培されるようになり、現在も主要な食物になっています。19世紀ごろには東南アジアにも伝わり、第二次世界大戦中には広く栽培されるようになったそうです。下線部の理由としてもっともふさわしいものを答えなさい。
(「第二次世界大戦中には広く栽培されるようになった」に下線)
- ア
- 戦争で失われた森林を再生しようとした。
- イ
- 戦中の食糧難に対応しようとした。
- ウ
- キャッサバ栽培でもうけようとした。
- エ
- キャッサバの木を多く植え、敵の攻撃から守ろうとした。
(昭和女子大学附属昭和中学校 2020年 改題)
正解は、選択肢「イ.戦中の食糧難に対応しようとした」です。
実はキャッサバは気候変動に強く、現在の食糧危機にも役立つのではないかと期待されているんです。
キャッサバとは
イモ類の研究をして30年になる東京農業大学の志和地弘信教授に聞きました。
キャッサバの原産地は南米です。熱帯や亜熱帯など暖かい地域で育つ作物です。根っこの部分にできるイモは、1株で数キロから20キロほど収穫できるといいます。
- 志和地さん
- 「キャッサバはもともとは永年性のトウダイグサ科の木です。根っこにデンプンがたまって、その部分がイモになるんですね」
- 学生
- 「茎を切って苗木にして、それを地面に挿して栽培します。タピオカもおいしいんですけど、ゆでて食べると本当においしいですよ」
原産地・南米での食べ方
原産地・南米ではどんな食べ方をするのでしょうか。
ということで、ブラジル料理店へ。日本に来て29年になるというシェフの田川マルシオさんです。
キャッサバは、皮などに毒素を含むため、皮をむいて水にしばらく浸したり加熱したりする必要があります。
- 田川さん
- 「生では食べれられないです。ゆでてそのまま食べてもおいしいですよ」
歯触りはほろほろしていて柔らか。ほのかな甘さで、さつまいもの甘みをちょっと弱くした感じでした。
もう一品。ブラジルのフェジョアーダという料理です。
肉と豆を煮込んだ料理にかかっているのがキャッサバの粉で、ざらざらとした歯触りが転がる感じがしました。キャッサバの粉には、塩味がついていて、ブラジルでは、肉やごはんにかけて食べる身近な食材だそうです。
南米から世界へ
原産地・南米からキャッサバがアフリカに渡ったのは16世紀、大航海時代。その後、アジアにも伝わりました。
育てるには茎を挿し木にして、水やりも特段、必要なし。1年半ほどで収穫でき、乾燥にも強いため、世界各地で栽培されるようになったのです。
アフリカでは、練って餅のようにして主食として食べています。
毒素を抜けばビタミン豊富な葉っぱも食べられるので、栄養バランスもとれるそうです。
食糧難の救世主!?
では、入試問題にあったように、東南アジアで「戦争中に広がった」のはどうしてでしょうか。
- 志和地さん
- 「戦時中に農作業をやるとなると、牛を使って畑を耕したり水田を耕作したりするのが大変です。キャッサバはそうした技術がいらないですし、挿すだけで増えますので、食糧難を解決するためにあちこちに植えられたと思うんですね」
キャッサバの生産量は増え続けています。
志和地さんは、今後、世界の食糧不足に備えるうえで、ほかの穀物に比べても重要性が高いといいます。
- 志和地さん
- 「今のように気候変動のような状況になると、温度がものすごく高かったり低かったりすると米がとれなかったり、小麦がとれなかったりして環境の影響を受けやすくなります。ところが(キャッサバなどの)イモは、気候の変動であまり影響を受けずに収穫できるんですね。もうひとつは、葉っぱとか茎とかイモに毒を含んでいますので、野生動物の被害が少ないし、バッタなどの食害も少なくなります。世界の人口が増え続けるなか、キャッサバは生産力の高さで筆頭に挙げられると思います」
キャッサバはタピオカ以外にも、身近なところで使われています。
ラーメンやうどんの麺のもちもち感を出すために混ぜられていたり、工業用では段ボールを貼り合わせる「のり」や、クリーニングの「のり」にも使われています。
また、海洋プラスチックごみが問題になるなか、海外ではキャッサバのデンプンを独自技術で加工し、水に溶ける袋を作る動きも出ています。
キャッサバ、その用途はさまざまで今後の可能性を感じました。
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