ミガケ、好奇心!時事もんドリル

星

発見!「空白の4世紀」の古墳から何が?

ことし1月、大きな話題になった発表がありました。奈良市の富雄丸山古墳で、考古学者も驚くような鏡と剣が見つかり、「国宝級の発見」と言われています。

富雄丸山古墳がつくられたのは「空白の4世紀」とされる謎の時代です。

その謎を解き明かすきっかけになるのか、今回の発見について専門家に詳しく聞きました。

「空白の4世紀」の古墳

そもそも発見があった富雄丸山古墳とは、どんな古墳なのでしょうか。

奈良市の西部にある、まるい形をした古墳です。

直径が110メートル前後と、日本で最も大きい円墳として知られています。

周辺は宅地開発されましたが、昭和の発掘調査によって重要性が確認され、保存されてきました。

つくられたのは4世紀後半。

実は「空白の4世紀」と言われている時代です。

中国の歴史書をみますと、3世紀には卑弥呼、5世紀には倭の五王が登場します。

しかし、4世紀の日本に関する記述はなく、謎に包まれているんです。

それだけに、今回の発見は当時のことを知るうえで、貴重な資料になると注目されています。

国宝級の発見

発見があったのは、古墳の北東側の端にある「造り出し」と呼ばれる部分です。

ここから発掘されたのは、青銅の鏡。

長さが60センチ余り、幅が30センチほどで、過去に例をみない盾のような形をしています。

裏側には、だ龍と呼ばれる空想上の生き物など、こまやかな文様がほどこされています。

こうしたことから、だ龍文盾形銅鏡と名付けられました。

今回の発見について、古墳時代に詳しい大阪大学の教授、福永伸哉さんに聞きました。

福永さん
「普通、鏡というと、われわれはすぐにまるい形のものを想像します。盾形の鏡というのは、これまで見つかったこともないし、考古学者がそういうものがあるということを考えたこともなかったから、唯一無二、想像を絶するものと言ったらいいですね。しかも、裏側にだ龍鏡の主要な文様が2か所にわけて上と下に描いてあります。普通の鏡ですと、同じような模様が鏡の中心にしたがって1つだけ描かれています。デザイン的にも非常に奇妙と言えます」

さらに古墳からは、波打つような形をした鉄の剣「蛇行剣」も発見されました。

長さは2メートル30センチあまりと、この時代の蛇行剣としては最長です。

福永さん
「柄はさほど長くないので、振り回すということはまず不可能ですし、おそらくは実戦用というよりも、特殊な剣だと考えたほうがいいです。鏡は真実の形を映すという機能で邪悪なものを寄せつけないんですけれども、剣は武力の象徴という意味で邪悪なものをやっつけてくれます。葬られている人を守ろうとしたという発想がひしひしとうかがえると思います」

そして、鏡も剣も、高い技術があったことを示す発見だと言います。

福永さん
「青銅器を作る技術も、あるいは鉄のさまざまな道具を作る技術というのも、本来大陸から入ってきているわけですね。取り入れた技術を日本列島のなかで非常に発展させていった一番到達した姿を、今回の器物は示しているんじゃないかと思います。いろんな意味で4世紀というのは、日本列島の国の成り立ちが一気に進んでいくような時代と考えられます」

古墳のあるじとヤマト政権

では、その鏡や剣が発見された富雄丸山古墳に葬られたのは、どんな人物と考えられるのか聞いてみました。

福永さん
「円墳の中で、日本で最大のものが富雄丸山古墳だから、現代的な言い方で言うと、政権の主要閣僚のような存在が富雄丸山古墳の一番中心の被葬者であるという考えも成り立つんじゃないかと思います」

この時代、大和地方の王を中心に、各地の有力者が連合し、ヤマト政権がつくられたとされています。

福永さんは、その過程で古墳が大きな役割を果たしたのではないかと言います。

福永さん
「王なんかがつくる古墳は、前方後円墳というのが決まっているわけなんですね。それから考えると、円墳というのは、古墳の格付けから言うと少し下の方の古墳の形になります。新しく台頭してきた豪族に対しては、「大きなまるい古墳をつくってもいいですよ」という格付けを与えることで、ヤマト政権が新たな勢力を取り込むような組織化を図っていったと考えるのが妥当だと思います。争いながら最後に覇を握ったものが王になるというよりも、ある種の合意のもとで、自分たちの国をつくろうという発想が、当時の日本列島の人たちの間でかなり強かったんじゃないかと思います。非常に珍しいケースではないかと思います」

今後、富雄丸山古墳の調査が進み、さらなる副葬品がみつかれば、空白の4世紀の謎に迫る手がかりになる可能性もあると言います。

福永さん
「さらに想定外のすばらしい副葬品が出土するということも期待の一つなんですけれども、富雄丸山古墳のあるじを媒介にして、ヤマト政権の権力構造であるとか、日本史の本当に大きな問題に迫れる情報が得られるんじゃないかと期待しています」

問題に挑戦!

最後に古墳時代に関する入試問題です。

問題

古墳時代のようすを述べた文としてまちがっているものをア~エから1つ選び、記号で答えなさい。

大和政権が支配する地域を広げていった。
大和政権の中心となった人物は「大王」とよばれた。
渡来人が進んだ技術や漢字を日本に伝えた。
集落のまわりにほりをめぐらせた環ごう集落が各地でさかんにつくられた。

(捜真女学校中学部 2021年 社会)

答えは「エ」です。

環ごう集落といえば、古墳時代の前、弥生時代の遺跡である佐賀県の吉野ヶ里遺跡が知られていますね。

「週刊まるわかりニュース」(日曜日午前8時25分放送)の「ミガケ、好奇心!」では、毎週、入学試験で出された時事問題などを題材にニュースを掘り下げます。
「なぜ?」、実は知りたい「そもそも」を一緒に考えていきましょう。

ミガケちゃん
なるほど