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オジギソウ “おじぎ”の謎 科学的に解明

今回は自由研究の題材にもなるなど身近な植物、オジギソウについて。
触れると葉を閉じて垂れ下がるオジギソウですが何が引き金になって “おじぎ”をするのか、これまで科学的に解明されていませんでした。それが去年、ついに解明されたんです。

オジギソウの名前の由来

オジギソウは、葉っぱを触られるとどんどん葉を動かして閉じ、最後には全体が垂れ下がります。この一連の行動が「おじぎ運動」と呼ばれ、オジギソウの名前の由来となっています。

オジギソウに関する入試問題

こうした「おじぎ運動」に関する入試問題です。

オジギソウには関節のような役割を持つ「葉枕(ようちん)」という器官が茎や葉の根元にあります。この上部と下部の細胞に、はじめは均等に存在していた水が移動することで葉っぱの部分や茎を支える「葉柄(ようへい)」が垂れ下がります。
この時の水の動きの方向をA、Bから選びなさい。

正解はA。
水が上に移動して、上の細胞が下の細胞より大きくなってバランスが崩れることで垂れ下がるんです。しかし、この運動が何が引き金になって起こるのか、これまで謎でした。
それが去年、ついに解明されたんです。

オジギソウとは

植物というと、その多くは自らほとんど運動せず、葉を虫に食べられても微動だにしません。そんな中でオジギソウは、刺激を受けると反応して葉を閉じる珍しい植物です。植物なのに、なぜ、動くのか?この謎はあのダーウィンの時代より前、18世紀から多くの生物学者が解き明かそうと研究にやっきになっていたんです。

200年以上にわたる謎を去年、世界で初めて解き明かした、埼玉大学の豊田正嗣さんに「おじぎ運動」に関する研究の成果を聞きました。

豊田さん
「カルシウムの信号がオジギソウの葉っぱを動かしているということを明らかにしました」

オジギソウが動くメカニズム

豊田さんが注目したのは、細胞の中に溶けている「カルシウムイオン」でした。人間や動物が、脳からの信号を、神経を経由して筋肉に伝える時に使われる物質です。このカルシウムイオンの働きによって運動しているんです。豊田さんはオジギソウにも動物と同様にこの物質が影響しているのではと考えました。そこで遺伝子組み換え技術を使い体内のカルシウムのイオン濃度が上がると光るオジギソウを作るという画期的な方法で実験を行いました。その実験の様子の画像です。

葉の先端に刺激を与えたところ、葉の根元に、カルシウムの信号が伝わって強く光り、ほぼ同時に葉が次々と閉じていきました。

豊田さん
「この駆け巡ったカルシウムの信号が運動器官に伝わると葉っぱが閉じるんです。植物は何も感じてないと思われがちですが、映像で見ると明らかに動物と変わらないように『触られた』ということを感じてつながっているところ全部に情報を伝えるんです」

私たち人間の運動に使われるのと同じ物質がオジギソウの運動でも使われていたことを突き止めたのです。この大発見にとどまらず、豊田さんは「オジギソウが“おじぎ”をするメリット」についても研究を続けました。

今度は遺伝子組み換えをして「触られても動かないオジギソウ」と普通の「動くオジギソウ」をバッタなどに食べさせ、比較しました。

普通のオジギソウの葉をバッタがかじると、葉を閉じ始めます。するとバッタは食べるのをやめて、他の場所へと移動していきました。

豊田さん
「おじぎをするオジギソウと比べて、おじぎができないオジギソウは2倍ほど(虫に)たくさん食べられるということが分かりました。すなわちおじぎをする運動によって食べられるリスク、食べられる量を1/2にしたということです」

豊田さんは、バッタが足を挟まれたり、足場を失ったりしたストレスで食べることをやめるのではと考えていて、オジギソウの運動は自らの身を守るために機能し、種の保存につなげていると結論づけています。

これらの発見、研究室総出で毎年100匹以上のバッタを採集し、数年にわたって実験を重ねて科学的に立証しました。

豊田さん
「小学生の子どもたちは『あの大人たちは何をやってるんだ』っていう目で(バッタ採集を)見てると思いますね。だけど、それが実は科学の最先端だったりするんですよ」

今回、長年の謎を解き明かしたときの思いを改めて伺うと…。

豊田さん
「もう鳥肌が立ちましたしこの映像の強さというのは、あまりにもインパクトがありすぎて最初は自分の目を疑いました。これでずっと何百年も論争されてきた議論に1つの答えを出すことができたんだなって」

小学校の自由研究などでとりあげるイメージもあるオジギソウですが、ちょっとした関心をきっかけに突き詰めて研究することで、今回のような新たな発見につながることもあると豊田さんは言います。

豊田さん
「子どもたちに伝えたいことなんですが、ふと不思議に思うことが実は科学の最先端である可能性があって、いつかどこかでその謎が解けるように勉強したり大学に進学することを考えたりしてほしいなと思っています」

豊田さんは、今回の発見が今後、植物界全体に応用できるかもしれないと話していました。例えば、同じマメ科のインゲンやダイズが動くようになって虫への防御行動を起こす。そうすると殺虫剤や農薬を使わずに栽培や収穫ができるかもしれない。そんな未来がやってきたらおもしろいですね。

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