2022年7月22日
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インフレ止められる?なぜヨーロッパも大幅利上げに?

急速に進むインフレを抑え込もうと、11年ぶりとなる利上げを決めたヨーロッパ中央銀行。

大幅利上げの背景には何があるのか。利上げによる効果は?

パリのヨーロッパ総局の有馬記者がわかりやすく解説します。

大幅利上げの背景は?

急速に進んだユーロ安です。

通貨が下がると多くを輸入に頼るエネルギーや食料の価格は割高になり、インフレが加速してしまいます。

ユーロは、1ユーロが1ドルの価値を下回る「パリティ割れ(※)」という状況まで下落していて、ヨーロッパ中央銀行としては、いま動かざるを得ない状況になったといえます。

※パリティ
1ユーロ=1ドルの等価。

利上げの具体的な内容は?

今回注目されていたのは、いったいどれだけ利上げするのか、その幅でしたが、0.5%と、事前の想定を上回る大幅な利上げになりました。

金利の引き上げは11年ぶりです。

またヨーロッパ中央銀行は、2014年からマイナス金利政策を導入していましたが、これも今回の0.5%の引き上げでゼロ金利となり、異例のマイナス金利政策も終了することになりました。

今回の利上げの位置づけは?

アメリカやイギリスなど、各国の中央銀行が利上げのピッチを加速させている中で、ヨーロッパもなんとしてもインフレを抑え込むんだという意気込み、覚悟を示したものだということができます。

アメリカのFRB=連邦準備制度理事会は、6月、0.75%の大幅利上げを決めたほか、イギリスのイングランド銀行も6月まで5回連続で利上げ。

マイナス金利政策を取っていたスイス国立銀行も、6月、利上げに踏み切り、マイナス0.75%を0.5%引き上げて、マイナス0.25%に。

カナダの中央銀行は、自ら異例だと表現する1.0%の大幅利上げに踏み切っています。

一方、日本は日銀の金融政策を決める会合で、大規模な金融緩和策を維持することを決め、対応が分かれています。

止まらないインフレ 市民は?

ユーロ圏最大の経済大国、ドイツでは、6月発表された消費者物価指数が前の年の同じ月と比べて8.2%上昇。

中でもエネルギー価格は38%も上昇していて、ユーロの値下がりにロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー価格の高騰も相まって市民生活を直撃しています。

買い物客の男性

「何もかも高くなって、ただ暮らすのに必死です。ロシアからのガスが止まればもっと深刻になります」

チーズ店の店員

「この3週間で4回も値上げしました。客に『5分ごとに値札を替えるのか』と嫌みを言われましたが、確かにおかしなことです」

利上げの効果はあるの?

市場では大幅利上げを評価する声がある一方で、「トゥー・レイト(遅すぎる)」と表現する市場関係者もいます。

ヨーロッパ中央銀行は、前回の理事会で今回の利上げを予告するなどインフレ抑制に意欲を見せてきたわけですが、まだまだアメリカなどに比べると迫力不足だというわけです。

なぜ迫力不足なの?

19か国の寄り合い所帯というユーロ圏特有の台所事情があります。

景気もインフレも国ごとに違う中で、それを1つの金融政策でまとめなければならない難しさがあるわけです。

特に、心配されているのはイタリアやギリシャなど多くの借金、債務を抱える国々のことです。

利上げを進めればそうした国々は利払いが難しくなり、かつてのヨーロッパが見舞われた債務危機のようなことにはならないか、そうした懸念もあるのです。

ヨーロッパ中央銀行は、”インフレ退治”と”金融市場の安定”という難しい両立を迫られることになります。

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