2022年11月30日
世界の食 サッカーW杯 カタール 中東

カタール事情 お酒は飲めるの?

サッカーのワールドカップに湧く中東カタール。

厳格なイスラム教の国で、ふだんは飲酒を厳しく制限していますが、今回の大会では、アルコールの提供を一部で認めるなど寛容な姿勢も見せています。

現地を取材すると、異例の光景が広がっていました。

(ドバイ支局長 山尾和宏)

飲酒は厳しく制限

カタール最大の「モスク」 イマーム・ムハンマド・イブン・アブドルワハブモスク

カタールは、憲法に国の宗教がイスラム教と定められ、敬虔なイスラム教徒が多いことで知られています。

市内には、「モスク」として知られるイスラム教の礼拝所が数多くあり、お祈りの時間になると、スピーカーから礼拝を呼びかける声が響き渡ります。

このため、イスラム教の教えに基づき、飲酒は、厳しく制限されています。

今回のワールドカップでは、直前までスポンサーのビールメーカーによるアルコールの提供が認められると伝えられてきましたが、FIFA=国際サッカー連盟が、開幕直前になって、スタジアムでのアルコールの販売は認めないと発表。真相はわかりませんが、カタール側の意向だったとも伝えられています。

飲酒が限定的に認められている場所も

ドーハの高層ビル群

もともとカタールでは、ワールドカップの前から、一部に限って飲酒を認めていました。

人口の9割が外国人で、外国からさらなる投資を呼び込みたいカタール政府が、イスラム教徒ではない外国人の生活環境に配慮している形です。

現地の日本大使館によると、飲酒は21歳以上に認められているといいます。

ふだん飲酒が認められているのは、高級ホテルの中などに入るレストランやバーに限られます。生ビールやウイスキー、ワインなどほとんどのお酒を飲むことができ、日本メーカーのビールもあります。

ただ、生ビール1杯の値段は50カタール・リヤル前後(およそ1890円※)で、日本国内に比べてかなり高めです。

ふだんは、外国人のビジネスマンや観光客が多く、民族衣装を着たカタール人の姿も見かけます。

また、カタール在住の外国人に限っては、お酒を購入することもできます。

アルコール飲料の販売店 看板などはなく立ち入りや購入には免許が必要

ただし、アルコールの輸入・販売を行っている政府系の会社に申請して、購入するための免許を取得する必要があります。申請費用も払うことになるので、誰でも免許を得られるわけではありません。

お店は、地下駐車場や郊外の倉庫街など、人通りの少ない場所にあり、見つけるのも一苦労です。

ちなみに、ワールドカップのために訪れたサポーターや大会関係者などは立ち入りが認められません。

※1カタールリヤル=37.9円で計算

ワールドカップの開催中は特例で

ファンゾーンにある大手ビールメーカーのブース

ワールドカップの開催期間中は、特例が認められています。ファンゾーンと呼ばれる、特設会場には、大会スポンサーの大手ビールメーカーが大きなブースを出し、ビールを販売しています。

訪れた人たちは、床に座り込んだり、踊ったりしてビールを楽しんでいて、大盛り上がりです。

カタールには何度も取材で足を運んでいますが、公共の場所で飲酒が禁止されているカタールでは、異例の光景でした。

メキシコから来たサポーターは、「スタジアムでお酒が飲めないなんてつまらないよ」とこぼしていました。

一方、カタールで暮らすイスラム教徒のスーダン人は、「せっかくカタールに来たのだから、現地の文化を尊重して、飲み過ぎないようお願いしたいです」とも話していました。

ワールドカップの開催中、お酒を提供する、なじみのレストランに様子を見に行くと、状況は一変していました。

店内はサポーターで大混雑。生ビールは早々に売り切れ、瓶ビールしか残っていないとのことでした。カウンターの上には、飲み干されたビールジョッキが大量に置かれ、3種類あるビアサーバーは使われていません。

店員は大急ぎで、瓶ビールを運び入れていました。ふだんは静かなこの店で、初めての光景でした。

店員の一人も、困り顔で「こんなのは初めて」と話していました。

厳格なイスラム教の国で行われた初めてのワールドカップ。飲酒をどこまで許容するのか、今回の特例ともいえる対応は、今後の目安になるのでしょうか。

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