2022年5月31日
経済 スリランカ アジア

経済危機のスリランカで見た、映画館付きの「テント村」

「『Gota Go Gama』の入り口」
 
スリランカの最大都市コロンボにある、テントがたくさん並んだ広場の入り口には、こう書かれた看板がありました。

「テント村」の入り口

5月中旬に訪れたスリランカ。長年の財政赤字に加えコロナ禍で外国人観光客が激減するなどして外貨が不足し、エネルギーの輸入が滞っているほか、物価の急激な上昇で経済が危機的な状況に陥っています。
 
このため政府への批判が高まり、ラジャパクサ大統領の退陣を求め、連日抗議デモが行われています。
 
看板に書かれていた「Gota」とは、ラジャパクサ大統領の名前「ゴタバヤ」の略称、英語の「Go」は「行け」、「Gama」は地元の言葉で「村」を意味していて、「大統領は村へ帰れ」といった意味になります。

「大統領は村へ帰れ」と名付けられたこの場所は、実は、大統領府のすぐ近くにあり、抗議デモの拠点になっています。
 
広場の周辺では、多い時には数百人に上る市民が朝から夜遅くまでデモを続けていて、広場に並んだ30ほどあるテントの多くは、参加者が寝泊まりするためのものでした。
 
「テント村」のようになったその場所を歩いてみると、「救護室」と書かれたテントが。それだけでなく「図書館」や「映画館」までも。

「図書館」の看板が掛けられたテント

デモが長期化する中、参加者は「テント村」に寝泊まりしながらデモに加わり、合間には本を読んだり映画を見たりしているのです。
 
先ほどまでくつろいでいた人がいつの間にか、抗議デモに参加して「大統領は辞めろ」と声を張り上げている姿が日常的な光景になっています。
 
スリランカでは、30%近い急激なインフレやガソリン不足などで生活が悪化し続けています。一方で、「テント村」では、市民からの寄付で炊き出しも行われていて、参加者同士のつながりが、日に日に強まっているように見えました。
 
「長年、支配してきたラジャパクサ大統領と一族の放漫体質が市民を苦しめている」
 
「大統領が辞めるまで、自分たちも一歩も引かない」

 
平和的に行われているデモですが、参加者一人ひとりの声からは、つながりを強めた市民たちの強い決意を感じました。

スリランカの国内政治

・ゴタバヤ・ラジャパクサ大統領は、2019年に就任。その際、兄のマヒンダ・ラジャパクサ氏を首相に指名。その後、憲法を改正し、自らの権限を大幅に強化。

・兄マヒンダ氏は、2015年まで2期10年にわたって大統領を務め、弟ゴタバヤ氏は、当時国防次官を務めた。

・一方で、兄マヒンダ氏はみずから財務相や国防相を兼任し、兄弟を議会や政府の要職に就かせたことで、一族で権力を独占していると国民からの強い反発を招き、2015年の選挙で政権の座を失う。

・今回の経済危機が続く中、兄マヒンダ氏は責任をとる形で首相を辞任。

・弟ゴダバヤ・ラジャパクサ大統領は、新たな首相を指名し、大統領の権限の一部を新政権に委ねる意向を示しているが、市民はあくまで大統領の辞任を求め抗議デモが続いている。

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