コロナ禍で不登校過去最多に 追い詰められる子ども そして親も

コロナ禍が心に与えた影響から抜け出すことができない子どもたちがいます。
国が10月に発表した調査では不登校の小中学生はおよそ19万6000人と前の年度から1万5000人近く増えて過去最多になっています。



子どもたちを取材すると、精神的に追い詰められていく過程や、影響が家庭全体に及んでいる実態が見えてきました。
(11月19日「おはよう日本」放送)

“宣言”明けても続く「制限のある学校生活」

東京 足立区の小学校では緊急事態宣言が明けても、子どもたちにとっては制限のある学校生活が続いています。

給食は一人一人黙って食べるのがルールです。
休み時間も、大勢が集まって遊ぶことは避けるように徹底されています。

「休み時間がつまんない。(友達と)話もしないし聞きたい事があっても聞けない」

子どもたちの感情把握困難に

先生は昼休みなどになるべく一人一人に声をかけるようにしていますが、子どもたちの感情を把握することが難しくなっていると言います。

「いろんなところで本当にストレス抱えてると思うので、私たちも気をつけてみなきゃいけないと思ってますし、やっぱりなかなか目しかわからないので、マスクの下では本当に笑ってるかどうかまでは分からないので、そこは難しいところはあるんですけれども」

全国でアンケート調査「学校行きたくない」の声

コロナ禍での生活が子どもにどんな影響を与えているのか。

研究機関が全国の延べおよそ8000人にアンケート調査を行ったところ、70%の子どもが何らかのストレスを感じていて、さらに「学校に行きたくないことがあった」という回答も38%に上りました。

不登校になる子ども 相次ぐ

実際に、不登校になる子どもも相次いでいます。

関東地方に住む中学2年生の美咲さん(仮名)。
去年受験をして、希望していた中学校に入学しましたが、およそ2か月で学校に行けなくなりました。

「学校に行っても誰もしゃべらないし、駅なんてバスなんて誰もひと言もしゃべらなくて、ロボットみたいで、ただ歩いて教室に入って、座って、ノートに書いて、意見を言って、違う教室に行く動作を繰り返すだけで、『ほんとうにこれ学校なのかな』という感じで」

入学したのが感染が急拡大した時期で学校行事の多くがなくなったこともあって、なかなか友達ができなかったといいます。

さらに、授業の内容が難しいと感じても気軽に相談する相手が周りにいなかったということです。

「すごい焦りで『自分以外(の人が)普通なのかな』『自分が普通じゃないのかな』となっちゃって、自分だけできていないという劣等感に包まれて」

母親「もうちょっとよく話せばよかった」

母親は、美咲さんの悩みに、なかなか気付くことができなかったといいます。

「びっくりしたというのが正直な感想。後から聞くとすごく大変だったみたいなんですけど、だからそこが気づいてあげられなかった。もうちょっとよく話せばよかった」

「不登校は甘え」SNSで追い詰められる

やがて体調を崩し、1人で家にいる時間が長くなった美咲さん。
SNSでネットの世界に入り込むようになると、さらに精神的に追い詰められたといいます。

「『不登校は甘え』っていう意見がどんどん出てくるんですね」

SNS上では、不登校を否定的に捉える意見も多くありました。
徐々に、自分が悪いのかもしれないと感じるようになったといいます。

「『甘え』とか『不登校の子たちは休めていいよね』とずっと同じことを検索して、嫌な思いをして、でも検索してほんと良くないループですよね」

不登校 親にも影響が

不登校になった子どもにどう寄り添えばいいのか。
親にも大きな影響が出ることが多いといいます。

東京都内に住む元木(仮名)さんの家では、ことし4月に小学校に入学した息子が学校を休むようになりました。

母親は、コロナで我慢することが多くなり息子が学校生活を楽しめていないと感じていました。

「学校の門までは行くんだよね?」「うん」


「でも学校には入りたくないの?」「うん。小学校の中に入りたくない」

母親は、緊急事態宣言中は在宅勤務が許可され、家で仕事をしながらなんとか息子の面倒を見ることができたといいます。

しかし10月、宣言が明けてからは出社が必要になり、子どものために仕事を休むことが多くなりました。

いま、仕事と子どもとの間で板挟みになり、精神的に追い詰められているといいます。

「自分が仕事をできていなくて、他の人がサポートしてくれるのが申し訳ないという気持もありますし、転職したらもう二度と正社員でこの業界に戻れることはないんじゃないかと思っていて、どうしたらいいんだろう」

親からの相談 全国から相次ぐ

不登校の子どもがいる家庭を支援しているNPOにはコロナ禍以降、親からの相談が全国から相次いでいます。

子どもの不登校をきっかけに、親が仕事をやめざるをえないケースも増えていて、NPOでは、家庭が孤立するおそれがあると指摘しています。

NPOの土橋代表理事
「子どもが不登校になると仕事を辞められる方、休職される人も結構多くいらっしゃるんですね。そうすると家族自体が外との繋がりを失ってしまって、家族も繋がりを失ってしまうと子どもも繋がりを失うので、結果として悪い状態が悪化していく家庭はとても多いです。子どもがしんどい状態で、お母さんもずっと一緒にいても『どう関わって良いのか分からないからしんどい』という状態で、そこで負のスパイラルが生まれてしまっている」

相談があった親 20%超が「仕事を休職、退職した」

新型コロナの感染者の数は収まってきていますが、影響はまだ続いていて、深刻なケースもあります。

NPOでは、不登校の子を持つ親からの相談を受けるためにLINEでの相談窓口を緊急に設けたところ、およそ700の家庭が登録し、11月現在も1日およそ20件の相談があるということです。

相談があった親にアンケート調査を行ったところ、子どもが不登校になったことによる仕事への影響は「早退・遅刻・欠勤が多くなった」という人が34%、「仕事を休職、退職した」と回答した人も21%に上ったということです。

NPO代表「相談を待つのではなく アプローチする支援策を」

NPOの土橋代表理事は、「コロナ禍で通常の学校生活が送れなかった影響というのは、子どもや家庭によっては、思っている以上に大きい」「親が相談に来るのを待つのではなく、悩んでいる家庭をきめ細かく把握し、積極的にアプローチしていくような支援策、仕組み作りが必要だ」と話しています。

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