心配される子どもたちのストレス 休校延長や親の在宅勤務で

今も全国で6割の学校が新型コロナウイルスの影響で、臨時休校を続けている異例の事態。心配なのが子どもたちのストレスです。子どもの相談機関には当初から多かった「友達に会えない」といった相談に加えて、「家族関係がしんどい」、「もう限界だ」などという新たな相談も急増しています。専門家は「親の在宅勤務などが進み、休校中の子どもとぶつかるケースが増えている。子どもたちは追い詰められている」と指摘しています。

新型コロナウイルスの感染防止のため、新学期を迎えた今も休校を延長する自治体が相次いでいます。4月15日時点で緊急事態宣言が出ている東京や大阪など7都府県を中心に、今も休校が続く小中学校や高校などは全国で2万6000校以上、全体の6割にのぼっています。こうした状況で、心配されるのが子どもたちのストレスです。

各地の子どもの相談機関には連日、子どもたちから深刻な相談が相次いで寄せられています。千葉県のNPOには、子どもたちなどとのLINEを使った相談のやり取りが先月から今月にかけて、3900件を超えたといいます。

NPOの光本歩代表が注目するのが相談内容の変化です。当初から多かった「友達に会えない」などの相談に加えて、先月後半からは「両親が在宅勤務になり、ストレス」とか、「単身赴任の父も戻り、母親とけんかするので、家にいたくない」といった、家族関係の悩みを訴えるものが多くなったといいます。さらに「もう限界です」といった精神的なストレスを訴える相談も増えているということです。

光本歩代表は「3月の上旬とは違い、相次ぐ休校延長や親の在宅勤務など新型コロナによる環境変化が子どもたちを追い詰めています。家族以外の大人が話を聞いてあげたり、つながりを持ってあげたりすることが大切だと思います」と話していました。

子どもの相談件数 増減と傾向は

NPOが先月から今月中旬まで、子どもたちと、やり取りした3900件余りの相談を日ごとに表したグラフです。

相談は、全国一斉の臨時休校が始まった先月上旬から増え始め、休校から2週間余りたった20日には277件と、最初のピークを迎えます。

その後、春分の日からの3連休以降、相談はいったん減少しました。この時期は、各地で終業式などが行われ学校に久しぶりに登校したり、国が新学期からの再開に向けた指針を示したりした時期です。NPOは、こうした動きにより、子どもたちの不安が少し和らいだとみています。

しかし29日には409件と再び急増し、今月に入ると連日300件前後と高い水準で推移しています。この期間は感染者が急増して、各地で休校の延長が決まったほか、政府の緊急事態宣言により外出自粛の要請や、企業の在宅勤務が強く呼びかけられています。

NPOは、こうした状況の急変が子どもの不安やストレスを高めていると分析しています。

小児科医「家族以外の人に助け求めることが大事」

募る子どもたちのストレスに、診療にあたっている小児科医も同じ危機感を持っています。

子どもの心理や脳の発達に詳しい成田奈緒子医師は、今月からオンラインで相談にあたっていますが、この日は、ある母親から、「仕事が自宅待機になり、イライラしてささいなことで子どもに強くあたってしまう」という相談を受けました。

成田さんは「子どもは、親の不安を敏感に感じとってしまいます。お母さんがやりたいことを、お子さんと一緒に楽しむなどしたらどうですか」などと応じていました。

成田さんは「緊急事態宣言も出されて、再び休校延長になるなど子どもは振り回され、不安感が増しています。本来は親子ともに、家庭以外の社会生活があり、バランスがとれるものですが、いまは一切の社会活動が奪われているので、それが成り立っていません。子どもにとって、家庭の中に居場所がなくなり追い詰められていると思います。まずは小さな悩みと思わず、家族以外の他人に助けを求めることが大事です。また、規則正しい生活や体を動かすことが重要で、それだけで気持ちを落ち着かせる効果があります」と話していました。

また休校…不安定化する子どもたち

新学期を迎えても、学校に行けない子どもたち。その影響は深刻化しています。

関東地方に住む小学6年の男子児童です。通っている小学校は、今月6日、およそ1か月ぶりに再開し、児童もそれを楽しみにしていました。ところが、新型コロナウイルスの感染拡大で学校は急きょ、来月まで再び休校となることが決まりました。再び学校が休校となったことで、生活リズムが乱れてしまい、今は1日6時間以上、ゲームに没頭する生活だといいます。

母親自身、新型コロナウイルスに強い不安を感じて暮らす中、息子の態度にいらだちを覚えることも増えました。ある日、強い口調で注意したところ、少し自閉傾向のある息子は突然泣き出し、パニック状態となったといいます。

ものを投げたり、大きな声を出したりすることもあるということで、母親は「彼なりのストレスがあるんだろうと思うし、学校があればなかったものだと思っています。私もイライラして、大きい声とか強めの口調になってしまいます。結局、新型コロナで、私が余裕がないことが、影響しているので、よくないなと思います」と話していました。

どうすればいいか? 親子で外遊び ストレス発散も

深刻化する子どもたちのストレスをどうすればいいのか。多くの親子が同じ悩みを抱えるなか、埼玉県に住む会社員、槇嶋公裕さんは、時間を決めて、長男の日南太くんをサイクリングに連れ出すようになりました。

日南太くんは、この春、小学校に入学しましたが、新型コロナウイルスの影響で、学校は休校となり、ほとんどの時間を自宅で母親と過ごしています。もともとは運動が好きでしたが、外で遊ぶ機会が減り、この1か月で、体重が2キロ増えてしまいました。

さらに、公裕さんも在宅勤務が増えたためゲームする日南太くんを見て、ついイライラして、注意することが増えたといいます。公裕さんは、「親もストレスを感じています。かわいい子でもよけいなひと言を言ってしまうことがあった」と振り返りました。

このままでは、親子ともによくないと考えた結果最近、実践しているのが、親子でのサイクリングです。いわゆる「3密」を避けつつ、日ざしを浴びながら、決まった時間に運動させることができると考えたからです。これにより、日南太くんは自宅で笑顔が増えただけでなく、夕食もしっかりと食べて夜もよく眠れているといいます。

父親の公裕さんは、「大人は我慢できる部分はありますが、子どもは、どうしても厳しいと思います。要所要所で発散させてあげることができれば、この状態が長く続いても、何とかやっていける気がします」と話していました。

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