新型コロナ 世界からの報告
長すぎる闘いにイライラ?
ロサンゼルスの状況は

2021年1月15日

累計の感染者数が2000万人を超え深刻な感染状況が続くアメリカ。西部カリフォルニア州では、去年12月中旬以降、1日当たり約4万人というペースで感染者が急増しています。特にロサンゼルスを含む州南部ではICU=集中治療室の病床は空きがほとんどない状態が続くなど、状況は深刻化しています。現地の様子について、ロサンゼルス支局、及川順支局長の報告です。

カリフォルニア州の感染状況は

Q.カリフォルニア州、ロサンゼルスの感染状況は?

(及川記者)
カリフォルニア州は去年春の時点では、東部のニューヨークに比べて封じ込めがうまくいったとされ、アメリカでは「優等生」の扱いでした。

しかし、去年11月の感謝祭の休暇のあとから状況が悪化していて、1日当たり約4万人というペースで、新たな感染者が報告されています。

特に深刻なのは私が暮らすロサンゼルスを含む州南部で、ICU=集中治療室の病床は空きがほとんどない状態が続いていて、医療体制も危機的な状況となっています。

私の知り合いの一人暮らしの高齢の女性は、感染リスクを避けるため買い物には一切出ないと話しています。

Q.規制、生活は?

(及川記者)
実は、ロサンゼルスでは去年3月以降、学校の授業はオンラインのみです。小中学校も高校もです。

去年3月以降、小学校でも、先生と子どもが直接、教室で会う機会は1度もありません。

住宅街の公園に設置されたバスケットボールのコートやサッカー場には使用禁止のテープがはられています。

子どもたちは以前のようにはスポーツをすることもできず、高ストレスな状況が続いています。

「レストラン営業禁止」の影響大

大人たちも同様で「長すぎる闘い」に、みんなイライラがうっせきしている感じです。その要因の1つが、レストランの営業です。

こちらの人にとっては、休日はレストランで友人や家族などとおしゃべりをして過ごすのが大きな楽しみです。

そのレストランは、去年3月にいったん営業が禁止になり、状況が少し好転した5月に、屋外のテラス席での営業が解禁となりました。

しかし、11月に状況が悪化したことを受けて、再び、屋外のテラス席も含めて、営業が禁止となってしまいました。

市民にとっては、貴重な気分転換の場だっただけに、ショックも大きかったようです。

ただ、やはり最も大きな影響を受けているのは経営者です。
ビバリーヒルズなどでカフェを経営するシャローム・バークマンさんもその1人です。

せっかく新たに設けたウッドデッキのテラス席が11月には使用禁止となってしまい、経営的にも大打撃を受けています。

シャローム・バークマンさんは次のように話しています。
「屋外での営業も禁止されたことで、売り上げは6割減り、半分以上の従業員を自宅待機にしなければならなくなりました。1か月前に設けたばかりの屋外のデッキ席も使えなくなってしまいました」

Q.レストランの休業補償などは?

(及川記者)
連邦政府による支援策があり、それとは別に独自の支援策を行っている市もあります。

ただ、レストラン経営者からは、状況や規制が二転三転する中、行政に対する不満が聞かれるようになりました。

去年春の時点では、行政と市民が一体となってこの困難を乗り越えようという空気があった気もしますが、いまではそれが薄くなってしまった感じもします。

シャローム・バークマンさんもこう話していました。
「最初のロックダウンの時にはきちんと従いましたが、感染拡大は止まっていないのが現状です。私はカリフォルニア州知事にレストラン営業禁止の根拠となる証拠を示すよう求めました。しかし州政府は何も示してくれません」

行政対応 足並みの乱れも

こうした経営者たちの不満に、行政の対応の足並みの乱れも出始めています。

レストランのテラス席の営業禁止は、ロサンゼルス市、ビバリーヒルズ市、サンタモニカ市など近郊の各都市で構成される「ロサンゼルス郡」が決めたものです。

しかし、ビバリーヒルズ市は12月1日、ロサンゼルス郡が決めた営業禁止に反対する決議を市議会が全会一致で可決しました。

営業禁止に反対する意見がおよそ1000通寄られ、バークマンさんも意見を提出した1人です。

可決された決議にはこんな厳しい文言も盛り込まれました。

「レストランの屋外での営業の禁止は、データに基づかず、科学的なものでないので全会一致で反対する」

先行きが見えない中 募る不信感

Q.不満、イライラの矛先はどこに?

(及川記者)
政治やリーダーたちです。その象徴となる出来事も起きています。

去年11月に、世界的なワインの生産地ナパバレーにあるフランス料理のレストランで、カリフォルニア州のニューサム知事の側近の誕生日パーティーが開かれ、知事夫妻も出席したことを地元メディアが報じました。

これには多くの批判が寄せられ、ニューサム知事は記者会見で「人間なのできちんとできないこともある」と釈明しながらも謝罪に追い込まれる事態となりました。

その後も対策強化への不満、不信も相まって、知事への批判や不満の声は高まっている感じさえします。

タクシーの運転手の1人はこう話していました。
「最近の知事は強権的にコロナ対策を何でも決めている。議会の審議という民主的な手続きを経ていない。アメリカという国の知事のやることではない」

先行きが見えない中で、ここアメリカ・カリフォルニア州でも人々のイライラと不信感は募るばかりです。一日も早い状況の好転を願わずにはいられません。

ロサンゼルス支局長

及川 順
(おいかわ じゅん)