新型コロナ 世界からの報告
インドを代表する観光地タージマハルは

2020年11月19日

新型コロナウイルスの累計感染者数が世界で2番目に多いインド。依然として、観光地などでは厳しい状況が続いています。今回は、インドを代表する観光地のひとつ、タージマハルがあるアグラという街を、ニューデリー支局の森下晶カメラマンが取材しました。
(ニューデリー支局 森下晶)

感染者1日4万人 でも街にはあふれる人 人 人!

インドの新型コロナウイルスの累計感染者数は、11月18日現在で890万人を超え、いまも1日当たり4万人前後の感染者が確認されています。

一方で、政府の経済優先の方針のもと、10月には、映画館などの営業も再開するなど、ほとんどの分野で経済活動の制限が緩和されています。

実際、街を歩くと、道行く人や車の数は日に日に増えています。

タージマハルの街 アグラ~店にはサリーを買う人たちでいっぱい

今回、私は首都ニューデリーから200キロほど南東にあるアグラという街を訪ねました。

アグラは、インドを代表する観光地タージマハルがある地方都市です。

人口はおよそ160万人ほどです(2011年国勢調査)。

商店街で、特に賑わっていたのが、インドの伝統衣装「サリー」を売るお店。

多くのインド人女性客が、シルク生地をひとつひとつ確かめながら、ショッピングに夢中になっていました。

最大の祝祭日だから 通りにも人がごった返す マスク姿の人は…

アグラを訪ねた時期は、インドで最大の祝祭日の「ディワリ」前のシーズン。

この時期のインドは、日本で言えば、年末の様な雰囲気です。

結婚式シーズンも重なり、インドの人たちは衣装やアクセサリーなど、買い物に繰り出す季節です。

私が歩いた商店街ですれ違う人々の多くが、マスクを着用していませんでした。

私の住む首都ニューデリーでは、ほとんどの人がマスクを着用しているのとは対照的です。

そのなかで、マスク姿の人たちに話を聞くと「みんなコロナウイルスの恐ろしさやマスクが大切だということを理解していないだと思います」「私はマスクを着用しているけど、他の人は誰もマスクを着用していないのをみると怖いです」と話していました。

半年ぶりに一般公開 観光名所タージマハルはー

世界遺産のタージマハルは、インドを代表する観光名所で、感染拡大前は、年間およそ700万人が訪れていました。

新型コロナウイルスの流行が始まったことし3月中旬から閉鎖されていましたが、経済を優先する政府の方針を受けて、ことし9月21日、およそ半年ぶりに一般公開が再開されました。

私も行ってみることにしました。

でも 来ているのは地元の人だけ 閑散

かつては2万人訪れていた1日の入場者数を、最大で5000人までに制限されていました。

敷地内ではマスクは義務化。

チケットの購入もオンラインのみで、チケット売り場はすべて閉鎖されていました。

さらに、入口では、検温や手の消毒が求められるなど、インドのほかの施設と比べても、かなり感染対策が徹底されている印象です。

中に入ると、真っ先に美しい白い宮殿が目に飛び込んできます。

ここは、宮殿を一望できる絶好の写真スポット。

以前は、常に、人だかりができ、宮殿をしっかり見る事すら難しかった場所です。

しかしこの日、訪れると、観光客の数はまばらで、ガイドやカメラマンたちが手持ちぶさたにしている様子に驚きました。

時折、グループ客が、1カ所に集まろうものなら、警備員が近づき「ソーシャルディスタンスをとれ!」と注意を促しているのも印象的でした。

訪れていた人たちに話を聞くと、みな地元や首都ニューデリーなど、近郊に住むインド人ばかり。

話を聞くと「こんなに静かにタージマハルを見る事ができるなんて、いままでに無い経験だ!素晴らしい!」と言う人が多い一方で「まだまだ油断はできません。こうした観光施設でも、ひとりひとりがマスクを着用して社会的距離を保つというルールをしっかりと守っていかなければならないと思います」と、インドの感染状況を心配する声も聞かれました。

入国制限があって 外国人観光客が戻る見通しはたたず

インドでは依然として、国際線の定期便の運航がストップしているため、ここでも外国人観光客の姿はありませんでした。

周辺にある土産物店の店主は「半年間ずっと家にいるしかなくて、収入はゼロでした。ようやく再開したけど、客はほとんど来ていないね。国際線で外国人客が来られない現状が長く続いたら、もう店を続けることはできないよ」と、心配していました。

感染拡大が収まらないなか、経済回復を優先して規制緩和が続くインド。

街中には、多くの人々がショッピングを楽しむなど、活気を取り戻しつつあるように感じました。

一方で、タージマハルのような観光施設の現状を見ると、インド経済が以前の状況に戻るまでにはまだまだ長い時間がかかると実感しました。

およそ13億人のインドの人々が、これから新型コロナウイルスとどう向き合っていくのか、これからも見つめていきます。

ニューデリー支局

森下 晶
(もりした あきら)