「次なる波」備えを 専門家会議が提言【ポイント】

2020年5月29日

新型コロナウイルスの対策について話し合う政府の専門家会議が、緊急事態宣言が解除されたあと初めてとなる新たな提言を出しました。

大型連休明けの週末以降、感染者数が増える兆しが見られるとしたうえで、感染の「次なる波」に備えて、「検査体制」や「医療体制」をそれぞれの地域で強化するよう求めています。

今回の提言の「ポイント」と、提言の中で都道府県などに向けて示したおよそ50のチェックリストの全項目です。

専門家会議の提言のポイント

●いまの感染状況は、今後は
  • 5月27日までの1週間の新たな感染者は全国で228人と、ピークだった4月中旬の17分の1まで減少した。
  • 3月下旬から始まった急激な感染拡大は、多くの市民の皆さんの協力により、爆発的な感染拡大=オーバーシュートを免れた。
  • 一方で、大型連休明けの週末以降は、感染者数が増える兆しが見られ、新たな感染者数の動向や感染経路が分からない人の割合などを継続的に注視する必要がある。
  • 諸外国では行動制限が解除されたあとに感染の再拡大が起きた例も複数報告されている。
  • 「次なる波」に備え、検査体制や医療体制を強化していく必要がある。
●「次なる波」に備え検査体制の強化を
  • 早期の診断により、早期の医療や感染拡大の防止につなげていくことが重要。
  • 相談から検査を受けられるまでの日数の短縮を図ることが必要。
  • 精度に課題がある「抗原検査」については、「PCR検査」との役割分担を明確にしたうえで、感染力が高い人を探し出せるという特性をいかして積極的に活用を。
●「次なる波」に備え医療体制の強化を
  • 感染が小康状態であっても、これまでに100人から140人規模の比較的大規模なクラスター(集団感染)が複数発生したことを踏まえて、すべての都道府県で、同じような規模のクラスターが突然発生することを想定して常に備えるべき。
  • 軽症者用の宿泊施設は、それぞれの地域で常に1施設以上確保しておくべき。
  • それでも入院用のベッドが確保できない場合が起きうることも想定し、周辺の都道府県に広域搬送することも事前に協議をしておくべき。
  • 医療体制のひっ迫を予防するために、緊急事態宣言とは別に都道府県ごとに「メディカル・アラート」を出すことを検討すべき。
●クラスター(集団感染)の発生を防ぐための対策の強化を
  • 諸外国では、大規模な院内感染や施設内での感染が多発し、日本でも院内感染や施設内での感染が各地で発生した。
  • 院内で感染が広がった要因としては、次のような例がよく見られ、こうした場面での感染を防ぐ対策の徹底が必要。
    ▽更衣室、ロッカー室を使用する時間帯が重なり、ほかのスタッフと接触する機会が多かった。
    ▽狭い休憩室でほかのスタッフと一緒に休憩した。
    ▽同じパソコンやマウス、プリンターなどを多くのスタッフが共同で使用した。
●緊急事態宣言が解除されたいま、市民生活での留意点は
  • 「『3密』の回避」「人と人との距離の確保」「マスクの着用」「手洗い」などの基本的な感染対策の徹底。
  • 「新しい生活様式」の継続的な実践。
  • 観光は、まずは県内など近隣のエリアで楽しむ。
  • これまでにクラスターが発生した場については、施設側での感染対策が適切に行われているか十分に確認するとともに、利用する一人ひとりが感染対策を徹底する。
●今後の海外との往来は
  • 3月中旬からの日本国内での感染拡大のきっかけは、ヨーロッパなどで感染した人たちの国内への流入だったことが、ウイルスの遺伝子解析でも明らかになっている。
  • 今後、海外との往来を再開した場合、そのことが国内での再流行のきっかけとなる可能性がある。
  • このため、水際対策の見直しにあたっては慎重な対応が求められる。
  • 国内で「新しい生活様式」が定着するまでの当面の間は、入国者を一定の数に限定するなどして、徐々に緩和することを目指すべき。

都道府県などに示した「次なる波」に備えるチェックリスト

今回の提言の中で、専門家会議は、「次なる波」に備えるため、都道府県などに以下の49項目からなるチェックリストを示して、検査や医療などの体制整備を進めるよう求めています。

1.検査体制

(1)PCR等検査
  • 相談、検体採取、検査の一連のプロセスを点検し、改善すべき点を明らかにして必要な対策を行ったか
  • 帰国者・接触者相談センターの業務委託の推進が図られているか
  • 契約締結を求めている医療機関との契約の提携が進んでいるか。
  • 大型のテントやプレハブ等の設置、地域医師会等と連携した地域外来・検査センターの設置など、外来診療体制の増強が図られているか
  • 感染拡大局面に当たって直ちに地域外来・検査センターの体制拡充が行われるよう、輪番等による具体的な必要人員の確保を含めて調整されているか
  • 発症日、相談日、検査日、結果判明日、本人への報告日までの日数がモニタリングできているか
(2)地方衛生研究所の体制拡充
  • 人員の応援体制ができているか
  • 検査機器や検査試薬の確保状況をモニタリングし、不足した場合に配布する等適切に対応できているか
(3)民間検査機関等の拡充、利用促進
  • 民間検査機関等の利用が進んでいるか
  • 民間検査機関等の検査結果が適切に報告されるスキームが構築出来ているか
(4)試薬や検査機器、個人防護具などの確保に向けた取組
  • 試薬や抗原検査キット、個人防護具の確保状況をモニタリングし、不足した機関に対し適切に配布できているか

2.医療提供体制

(1)役割分担
  • 協議会が設置され定期的な活動が行われているか
  • 地域の医療機関ごとの役割分担(重点医療機関の設定等)の明確化はなされているか
  • 軽症者の宿泊療養施設の確保はできているか
  • 疑い患者の救急搬送を受け入れる病院は確保されているか
  • 他の疾患の患者に対する治療に重大な支障が生じてないか
(2)空き病床の状況把握、調整の仕組み
  • 調整本部は、患者発生状況や空き病床の状況等を毎日把握しているか
  • G-MIS等により各医療機関の現状を迅速に把握できる仕組みが構築できているか
  • 患者の搬送調整の中心となる「患者搬送コーディネーター」に必要な際にすぐ連絡が取れる体制(オンコール)がとられているか
  • 患者が増加した場合の調整本部の再活性化について、関係者間で取り決められているか
  • 病床確保に関する広域連携の仕組みについて検討・調整が行われているか
(3)院内感染対策
  • 外部からの専門的な助言や支援を提供できる体制が構築されているか
  • 感染症指定医療機関に限らず、一般医療機関においても基本的な感染対策が行われるような体制が構築されているか

3.保健所の体制

(1)人員体制
  • 本庁主導で、業務外注など、必要な業務の見直しが行われているか
  • 本庁からの応援、OB職員の再雇用など、必要な増員が図られているか
(2)積極的疫学調査・クラスター対策
  • 人員の応援体制ができているか
  • 人員の訓練体制ができているか
  • データを作成・分析する体制ができているか
(3)相談業務
  • 帰国者・接触者相談センター業務の更なる外注、業務委託の推進等はなされているか
  • 感染拡大局面でも十分に相談に応答する体制が計画されているか
  • 電話相談の件数に応じて電話回線数を調整できるよう応答率を確認しているか
(4)搬送業務
  • 民間輸送業者の活用等、検体の搬送体制が整えられているか
(5)業務効率化
  • 縮小・延期等が可能な業務を把握できているか
  • 業務効率化のため、HER-SYS などの ICT 技術を活用しているか

4.サーベイランス

(1)疑似症の届出
  • 感染症法第 12 条に基づく疑似症の届け出についてその必要性が医療機関に十分 に周知できているか(検査結果陰性の時は届け出なくていいと誤認されていない か)
  • 医師が必要と認めた場合に検査を実施した時、陰性結果も含め、届けられているか
(2)HER-SYS
  • HER-SYSを利用し、報告する体制が構築されているか
  • HER-SYSについて、管内の医療機関に対し周知し、利用を促しているか
(3)モニタリング
  • 新規感染者数、人口 10 万人当たりの新規感染者数の割合、経路不明の感染者数の割合など、地域の感染状況(疫学状況)を適宜把握し、定期的に公表しているか
  • 新型コロナウイルス感染症の重症者数、入院者数及び宿泊療養施設使用数などの医療提供体制の状況を適宜把握し、確保病床数、宿泊療養施設確保室数などとともに定期的に公表しているか
  • PCR 等検査件数及び陽性検体数など検査体制の関する状況を適宜把握し、定期的に公表しているか

5.地方自治体における即応体制

  • 感染拡大の傾向が見られ、法第 24 条第 9 項に基づく措置等を講じる際の判断基準や考え方を設けているか
  • 感染拡大の傾向が見られた際に、ホームページ等で市民に速やかに状況や対策を伝える仕組みが計画されているか
  • 感染拡大の傾向が見られた際の、対策本部等自治体内の連絡手順や体制切替えの手順等を準備しているか

6.高齢者・障害者施設等への支援体制

(1)人員・物資の確保
  • 施設内感染の発生を想定した人材確保策(勤務シフトの柔軟な変更、同一法人内での融通策、地域での人材確保策等)が講じられているか。
  • 福祉サービスを提供する施設・事業所に対して必要な物資が優先的に供給されるような仕組みを検討しているか。
(2)施設内感染対策
  • 施設内感染の発生を想定した必要な事前準備ができているか(ゾーニングや必要な物品の確保方法の検討、サービス提供者への研修等)。
  • 施設内感染の発生を想定した近隣医療機関との連携体制が構築されているか。
  • 事業所等が閉鎖した場合に備えた代替サービスの確保策が講じられているか。

専門家会議の提言 全文

新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言(5/29 厚生労働省HP)

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