専門家会議 感染状況に応じて3区分に分け対応を

2020年5月14日

新型コロナウイルスの対策について話し合う政府の専門家会議が5月14日、新たな提言を出し、多くの地域で感染拡大が始まった3月下旬より前の状況にまで感染者数の減少が確認されたとした一方、今後も当分の間は再流行のリスクがあるとして、感染状況に応じて都道府県を3つの区分に分けて対応する感染対策の考え方を示しました。

専門家会議は5月14日、新たな提言を出し、緊急事態宣言を解除する際の考え方として「直近1週間の新規感染者数の合計が10万人当たり0.5人未満程度」などの目安を示しました。

また今後も当分の間は再流行のリスクがあるとして、再び感染が拡大したときに緊急事態宣言の対象地域への再指定も含めてすぐに対策をとれるよう、感染の状況によって、
▼「特定(警戒)都道府県」
▼「感染拡大注意都道府県」
▼「感染観察都道府県」の3つに分けて、それぞれの対応の考え方を示しています。

感染の状況が最も厳しい「特定警戒都道府県」では、緊急事態宣言に基づく徹底した行動変容の要請によって接触の8割減や都道府県をまたぐ移動の自粛などを求めるとし、指定するときには4月7日に東京都や大阪府など7つの都府県に緊急事態宣言を出したときの感染の状況や水準を踏まえるとしています。

「感染拡大注意都道府県」は「特定警戒都道府県」には指定されていなくても感染対策を一段階、強化する地域で、新たな感染者数が「特定警戒都道府県」の基準の半分程度などあらかじめ判断基準を設けておくべきだとしました。そのうえで集団感染のリスクのあるイベントや不要不急の外出を自粛するよう知事が協力要請を行うなどとしています。

また新規の感染者数が一定程度確認されるものの、さらに少ない地域については「感染観察都道府県」として、感染状況を注視しながら、人との間の距離を取ったり、いわゆる「3つの密」を徹底して避けたりするといった対策を継続して行うなどとしています。

さらに専門家会議は、緊急事態宣言が解除されても、対応は長丁場になることが見込まれるとして、すべての都道府県でこれまでに感染者の集団「クラスター」が発生した場所や「3つの密」を徹底して避けること、買い物や食事のしかたなどを工夫する「新しい生活様式」を実践し、手洗いなどの基本的な感染対策は続けていく必要があると強調しました。

そのうえで国と都道府県に対して、業務がひっ迫している保健所の人員を確保するなど体制を強化しておくこと、PCRなどの検査体制を整備すること、患者数の増加に対応できる医療体制を確保することなどを強く求めています。

解除は感染状況・医療提供体制・検査体制踏まえ総合的に判断

専門家会議が出した提言では、緊急事態宣言を解除する際の考え方について、感染の状況と医療提供体制、そして検査体制を踏まえて総合的に判断するとしています。

このうち感染の状況については「直近1週間の新規感染者の報告数がその前の1週間の数を下回っていて減少傾向が確認できること」に加えて、目安として、「直近1週間の新規感染者数の合計が10万人あたり0.5人未満程度となっていること」を示しています。

この目安は感染拡大が起きる前の感染者の集団「クラスター」を見つけて追跡する調査ができていたころの水準だとしています。

また医療提供体制については
▽新型コロナウイルスの重症患者の数が減少傾向でひっ迫していないこと
▽患者のための病床や宿泊療養の施設が確保されるなど患者が急増した場合にも対応できる体制が整えられていることを挙げています。

そして検査体制の構築については新たな感染者の数を適切に把握するため、
▽PCR検査などが一定数以上できることや
▽陽性の検体の割合が著しく高くないことを考慮する項目としています。

一方、提言では再び緊急事態宣言の対象地域に指定する際にも、感染の状況や医療の状況を考慮することとしました。

感染の状況については4月7日に東京都や大阪府など7つの都府県に緊急事態宣言が出されたときの感染の状況などを踏まえて、直近1週間の10万人当たりの新たな感染者数の合計、感染者数の合計が2倍になるまでの時間、感染経路がわからない患者の割合を指標として挙げています。ただ具体的な数値は示していません。

また医療提供体制の整備状況を踏まえ、重症患者や入院中の患者の数が対応可能な状況にあるかなどにも注意が必要だとしています。

社会・経済活動と感染防止対策 両立させる考え方も示す

専門家会議の提言では、緊急事態宣言が解除されたあと、社会や経済の活動と感染拡大を防ぐ対策を両立させる考え方も示されました。

社会や経済の活動レベルを段階的に引き上げる一方で、これまで感染者の集団「クラスター」が発生したような感染リスクの高い場所を徹底して避けるといった、メリハリのある対策が重要だとしています。

そして宣言が解除されたあとでもすべての都道府県で人との距離の確保、マスクの着用、こまめな手洗いなど基本的な感染対策を続け、5月4日に示された買い物や食事の仕方などを工夫する「新しい生活様式」を実践することを求めています。

さらに不要不急の帰省や旅行を避けるとともに、これまでにクラスターが発生したような感染リスクの高い場や「3つの密」も避ける行動を徹底するよう求めました。

このほか飲食店や商業施設などの事業者の活動については、改めて業種ごとに感染拡大を防ぐためのガイドラインの作成が必要だとしたうえで、感染を防ぐための対策の例を示しました。

具体的には、
▽美容院や飲食店の従業員はマスクや目や顔を覆う防護具をつけることで感染リスクを下げることや
▽飲食店では、間仕切りを活用したり、座席の間隔を空けたりするほか、個室などでは利用する人数を定員の半分にすることなどをあげています。

イベントの開催については、感染者が会場にいた場合に爆発的な感染拡大のリスクを高めることにつながりかねないとして、こうしたリスクへの対応ができない場合には引き続き中止や延期が必要だとしました。

専門家会議 記者会見での主なやり取り

石川、富山を解除し、千葉、兵庫を解除しないのは

今回対象から外れた石川や富山などは10万人当たり0.5人を大きく超えてます。一方で兵庫や千葉などは0.5人を下回っているものの残ったところもあります。どのような点を加味してそれぞれ判断されたのか。

脇田座長
兵庫、それから千葉のことを言われましたけれども、やはり近隣の大きな大都市の地域があるということがいちばん大きな理由です。それらのところが外れなかったということは、大きな都市圏があって、そこでまだ感染の流行が続いていると考えられたときにですね、そこからの交通ということがありますので、なるべく人の行き来を減らすという意味もあってそこは解除されなかったと考えております。

千葉や兵庫が外れなかった理由は説明していただいたが、一方で富山、石川が大きく上回っているのに外れることになった理由は。

西浦教授
富山県と石川県は主に施設内感染、高齢者の福祉施設と病院内の医療機関で感染が起こっていて、そのリンクがほとんど追えている状態にあります。感染のゾーニングと言って、どこの範囲で伝播が起こっているのかが追いかけられている状態なので、基本的にこれから先に新規で、新しい大きなクラスターができないということであれば、感染は制御できてる状態と判断されていることと、医療機関、特に割当病床ということを都道府県別で検討されたんですけど、そもそも入院できる施設に対して富山県も石川県も入院の負荷が著しく高くなくて、今、減少傾向にあるというあたりを、総合的に専門家の先生方が判断されたことを諮問を受けられて判断されたと理解しております。

3つの分類の判断は

特定(警戒)都道府県、感染拡大注意都道府県、感染観察都道府県とあるんですけれども、基本的に今回、宣言の対象から外れた39県に関しては、感染観察都道府県に該当するという考えでいいのか。

脇田座長
その通りです、以前の3月19日ですかね、その時に3分類と言う形で、少しことばを変えましたけれども、その時にお示しした類型とほぼ同じ形なんですけれども、3番の感染観察都道府県ということにしております。

感染拡大注意都道府県と感染確認都道府県の判断ですけれども、これは都道府県の知事がそれぞれ判断をするということでいいのか。

脇田座長
基本的にはわれわれは指標をしっかり見てですね、それで都道府県とも連携をしていきたいと思っております。最終的には都道府県のほうで判断されるというふうに思います。

緊急事態宣言の再指定 数字の基準は

(緊急事態宣言の)再指定をするときには、最初に宣言を出した時と比べて、低い水準で再指定をするという説明をされました。どのくらい低いところでやるのか。

尾身副座長
どのレベルにするかと言うのは極めて難しい、われわれもこれは非常に多くの議論をしました。基本的には、緊急事態宣言を出した時よりも、少し早めと言うことです。

脇田座長
地域において再度、感染の拡大が認められるような状況に該当するということが総合的に判断されるような場合には、速やかにその緊急事態措置を実施すべき区域として指定を行う必要があると言うことで、早くというのがわれわれの考えているところで、低いレベルでと言うよりも、なるべく早く体制が取れるようにと言う意味だと思ってます。

尾身副座長
今回は数字も出しませんでした。それはいろんな理由がありますけれども、1つは再指定するときには抗原検査がかなり普及している可能性があるというのが大きな理由です。もう1つは、この数値を出さなかった最大の理由は、今言ったとおり抗原検査の事が入ってくるとなかなか状況が変わるから言えないということが1つと、それからもう1つは、もう少しもっと悩ましい話ですけれども、あまりにも低くすると、それをやるとしょっちゅう緊急事態宣言を(出すことになる)。

それこそ社会経済のバランスということになる。遅すぎれば、今回のように、あれだけの国民の方へのいろんな行動制限等々、あそこまでもう1回やらなくてはならない事態になってしまうということも避けたい。だけど低くすぎれば頻繁にという、このバランスと言うことで。今のところは、あす、これが起こるわけじゃないですよね。また、いろんな抗原検査のあれとかいろんなことがあって、モニターしながらわれわれもまた適切なレベルを提案したいと思っています。

再指定についてですが、これもまた総合的に判断をして、具体的な数字も明記していないところがあるということだったんですけど、直近1週間の10万人当たりの累積報告数、また倍化時間についても具体的な数字は明記されていない部分なのか。

尾身副座長
明記できないというよりかは、われわれはあえて明記をしなかったというふうに言ったほうがいいと思います。

われわれの希望ですけれども、この再指定にならないことを願いますよね。再指定には、おそらく今の状況で、きょう外れた県が急に再指定になるということは、明日あさって、すぐに起こるとは普通は考えられませんよね、そうすると時間がたってからということが現実的に判断されますね。

そういう中で実は、今まさに先ほどから議論している、抗原の迅速診断が出てくる、それから治療も、もう少し出てくるというと、この5月6月に、いわゆるわれわれを取り巻いている環境が、少しというか、かなり変わる可能性がありますね。

そういう中で、今の状況の中で判断をしても、この状況がいわゆる検査体制等々も含めて、同じ状況であればある程度これは、だけどもこれから環境はかなり変わりますから、そこであえてやるという事はしなくて、むしろいろんなことをこれからモニターして、こういう時期が近づいてきたら考えましょうということで、あえてしなかったということです。

国の専門家会議が示した「提言」全文

新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言(5/14 厚生労働省HP)

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