変異ウイルス急拡大のリスク 対策継続を
東京都モニタリング会議

2021年2月18日

東京都内の新型コロナウイルスの感染状況などを分析・評価する「モニタリング会議」が開かれ、専門家は、感染力が強い変異したウイルスが今後、急速に拡大するリスクがあると指摘し、封じ込めを徹底的に行うためには今の対策を緩めることなく続け、新規陽性者数をできるかぎり減少させる必要があると呼びかけました。

2月18日の会議で、専門家は都内の感染状況と医療提供体制を、いずれも最も高い警戒レベルで維持しました。

このうち感染状況について、新規陽性者数の7日間平均は、2月9日時点の524人から2月17日時点で347人と減少しているものの、依然として高い値だと指摘しました。

また、7日間平均の前の週からの増加比は70%で、これを4週間維持できれば83人になり、医療提供体制や保健所の体制の改善が期待できるとしています。

さらに、感染力が強い変異したウイルスが都内ではこれまでに13件確認され、今後、急速に拡大するリスクがあると指摘しました。

そのうえで、変異ウイルスの感染拡大の局面を確実に捉えて徹底的に封じ込めるためには、今の感染防止対策を緩めることなく続け、新規陽性者数をできるかぎり減少させる必要があると呼びかけました。

一方、医療提供体制については、2月17日時点の入院患者が2232人と非常に高い水準で推移していると指摘したうえで「通常医療への影響が長期間続いている。高齢者の感染を減らし、重症患者を減少させることが最も重要だ」と指摘しました。

感染状況「減少も依然として高い」

2月18日のモニタリング会議の中で示された都内の感染状況と医療提供体制についての分析結果です。

新たな感染の確認は、2月17日時点の7日間の平均が346.7人で、前の週からおよそ177人減少しました。

専門家は「減少し続けている」としたものの、数値自体は「依然として高い」と分析しています。

ただ、病院や高齢者施設で100人規模のクラスターが発生していることや、高齢者の家庭内感染が続いていることなどを指摘し「実効性のある対策を緩めることなく継続し、新規陽性者数をさらに減少させる必要がある。再拡大を防ぐためには今が重要な時期であり、都民や事業者のもう一段の協力が期待される」と指摘しました。

また「感染力が強い変異したウイルスが問題となっており、今後、今より急速に感染拡大するリスクがある。流行伝ぱを徹底的に封じ込めることが重要だ」としています。

今週、感染が確認された人を年代別の割合でみると、
▼20代が最も多く17.7%、
次いで
▼30代が15.4%、
▼40代が14.2%、
▼50代が12.7%、
▼70代が9.0%、
▼80代が8.8%、
▼60代が8.3%、
▼10代が6.2%、
▼90代以上が4.2%
▼10歳未満が3.5%でした。
70代以上の割合は依然として20%を超えています。

また、65歳以上の高齢者は681人で前の週より334人減りましたが、新規の陽性者に占める割合は26.1%と前の週から横ばいでした。

専門家は「重症化リスクの高い高齢者層に感染が拡大している」と指摘し、高齢者と同居する家族や、医療機関、高齢者施設の職員などが感染しないことが重要だと呼びかけました。

一方、感染経路がわかっている人のうち、家庭内での感染は45.6%で最も多くなりました。
年代別にみると、70代以上を除くすべての年代で家庭内感染が最も多い一方で、80代以上では病院や高齢者施設などの施設内での感染が82.1%を占めています。

このほか、感染経路がわかっている人のうち、施設内は37.4%、職場内は7.1%、会食は2.8%でした。

専門家は「年度末から新年度にかけて花見や歓送迎会、学生の卒業旅行などの行事で、減少傾向にある新規陽性者数が再度増加に転じることが危惧される」と指摘しました。

「感染の広がりを反映する指標」としている感染経路が分からない人の7日間平均は、17日時点で171.7人で、前の週よりおよそ85人(前週は256.9人)減りましたが、専門家は「高い値で推移している」と指摘しました。

そのうえで「保健所における積極的な疫学調査による感染経路の追跡を充実させることにより、潜在するクラスターの発生を早期に探知し、感染拡大を防止することが非常に重要だ」と述べました。

このほか、2月15日までの1週間で確認された新規陽性者のうち、20%にあたる521人が無症状でした。

都は、都外に住む人がPCR検査のため検体を都内の医療機関に送り、その後、都内の保健所に陽性の届けが出たケースを除いて分析・評価していますが、今週はこうしたケースが44人いました。

感染者に比べ入院患者減らず

検査の「陽性率」は、2月17日時点で4.2%と、およそ1週間前の5.2%から1ポイント低下しました。

専門家は「感染を抑え込むために、濃厚接触者の積極的疫学調査の充実や無症状者も含めた集中的な検査など、戦略を検討する必要がある」と指摘しました。

入院患者は、2月17日時点で2232人で、2月9日の時点より374人減りました。

専門家は「減少傾向にはあるものの、感染者数に比べるとあまり減っておらず、1月初旬から非常に高い水準で推移している。医療提供体制のひっ迫による通常医療への影響が長期間続いている」と指摘しています。

また「新規陽性者が急増した1月に比べて入院や転院の調整が進み、患者の受け入れ体制に改善傾向がみられるものの、まだ受け入れが難航することもある。新規陽性者数をさらに減少させることが最も重要だ」と指摘しました。

また、都の基準で集計した2月17日時点の重症患者は87人で、前回より17人減りましたが、専門家は「依然として高い値が続いている」と分析しています。

また「重症患者のための医療提供体制の危機的な状況はわずかに改善したが、まだ継続している。救急の受け入れや予定していた手術の制限を余儀なくされているだけでなく救命救急医療を通常どおり提供できない状況が続いている。医療提供体制を正常化するためには、重症化リスクの高い高齢者層の新規陽性者を減らし、重症患者を減少させることが最も重要だ」と指摘しました。

重症患者を年代別にみると、
▼30代が1人、
▼40代が3人、
▼50代が9人、
▼60代が17人、
▼70代が43人、
▼80代が12人、
▼90代が2人でした。

性別では▼男性73人、▼女性14人でした。

また、人工呼吸器や人工心肺装置=「ECMO」の治療がまもなく必要になる可能性が高い状態の患者が依然として多いため、重症患者が高い値で推移することが危惧されると指摘しています。

2月15日までの1週間で都に報告された亡くなった人は102人と、前の1週間より39人減りました。
亡くなった人のうちおよそ9割を超える94人は70代以上でした。

専門家「変異ウイルス抑え込み必要」

国立国際医療研究センターの大曲貴夫国際感染症センター長は、変異したウイルスへの対応について「海外の様子をみると、かなりきつい対策をしながらも広がっている。われわれがやってきた対策をすり抜けてしまう可能性があるという前提で対策を考える必要があるのではないか」と述べました。

そして「いろいろな専門家の意見はあるが、変異したウイルスが増えてくるかどうかの端緒をつかめるのは、感染確認の人数が1日50人以下ぐらいで、少しでも動きがあれば調査して抑え込む必要があるという話が出ている」と述べました。

また、東京都医師会の猪口正孝副会長は「感染力が強い変異したウイルスのことを考えると、いま医療にかかっている負荷を一生懸命取っておくことが必要だ。協力をお願いしたい」と述べました。

都 コロナ患者用ベッド 5000床確保

東京都は、重症患者や中等症の患者を集中的に受け入れる「重点医療機関」などの協力で、2月17日までに新型コロナウイルスの患者用のベッドを新たに100床確保しました。

これで、都内全体では5000床となりました。

このうち、
▽重症患者向けは15床増えて330床、
▽中等症以下の患者向けが85床増えて4670床を、
それぞれ確保しました。

小池知事「今ここで抑えられるか 重要な時期」

モニタリング会議のあと、小池知事は記者団に対し「緊急事態宣言の期間があと2週間余りあるが、今ここで抑えられるかどうか、大変重要な時期だ。専門家は変異したウイルスが広がる前に抑え込んでおくことが重要だと指摘している」と述べました。

そのうえで「2月は土日祝日があと5日ある。人出が増えれば『3密』が発生しやすく感染リスクも高まるので、外出を自粛し、感染対策の基本を守ってほしい。人の話ではなく、自分のことだと考えて、ぜひ日々の行動にご協力をお願いしたい」と呼びかけました。