早朝 渋谷に長蛇の列“若者接種”想定大幅超
8月28日から抽せんに

2021年8月27日

「せっかく並んだのに…」
「休暇を取って来たのにどうしてくれる」
東京都が若い世代を対象に渋谷に設けた新型コロナウイルスのワクチン接種会場に初日の8月27日、想定を大幅に超える人が訪れました。このため都は、開始時間を待たずに受け付けを終了しました。
事前の予約なしに接種できることがポイントでしたが、接種できない人が相次ぐ事態となり、都には少なくとも1万件を超える苦情などが寄せられたということです。初日の動きを振り返るとともに、8月28日以降の運営はどうなるのかまとめました。

“事前予約なし”で接種 その対象は?

東京都は若い世代のワクチン接種を進めるため渋谷区神南にある「区立勤労福祉会館」に、16歳から39歳までの
▽都内に住んでいるか
▽都内に通勤・通学している人を対象にした
接種会場を8月27日から設けました。

接種券と本人であることを証明するものがあれば、事前の予約なしで受けることができます。

初日の8月27日 未明から次々と並ぶ人が…

初日の8月27日は接種を希望する人が未明から次々と訪れ、都が午前4時に確認した時点ですでに15人が並んでいて、7時半には300人に達したということです。

急きょ整理券配布 7時半すぎ受け付け終了

このため都は急きょ、整理券を配って対応し、接種を受けられる人数を想定していた200人程度から300人に増やしたうえで、開始時間の正午を待たず7時半すぎには受け付けを終了しました。

事前の予約なしに接種できることがポイントでしたが、希望者が多かったことで実際には接種できない人が相次ぐ事態となりました。

東京都「ここまで並ぶとは想定できず…」

都の担当者は「接種をためらう若者が多いということだったので、ここまで並ぶとは想定できなかった」と話しています。

8月28日以降は抽せんに 午前9時~10時半に会場で抽せん券配布

こうした事態を避けるため、都は8月28日以降は先着順をやめて抽せんにすることになりました。具体的には午前9時から10時半の間に会場を訪れた人に抽せん券を配布し、11時半ごろに接種できる時間帯も含めて抽せん結果をLINEやツイッターで知らせるということです。

都の大規模会場でも接種可に 予約は8月30日・午前10時~

さらに、希望する若い世代の接種を促進するため
▽都庁第一本庁舎の南展望室と北展望室
それに
▽港区の乃木坂の
いずれも都が設けた大規模接種会場でも接種を受けられるようにすることを決めました。

大規模会場では予約が必要で、来週月曜日・8月30日の午前10時から受け付けます。

接種できなかった人「仕事を休んで来たが」「早く打ちたかった」

正午前に会場を訪れた25歳の会社員の男性は「地元で打とうとすると10月になると言われたので仕事を休んで来ましたが、接種できませんでした。明日以降、また来たいと思います」と話していました。

また、朝に整理券をもらえず接種ができない20代の女性は「日々、感染者が増えているので早く打ちたかったのに残念です。明日また来ます」と話していました。

同じく、整理券がもらえなかった30代の女性は「せっかく来たが1日200人くらいしか枠がないということなので、枠を増やしてほしい。こんなにたくさんの人が来るのであれば、ここも予約制にしたほうがいいのではないか」と話していました。

接種できた人「午前3時から並んだ」「接種に行かないとと思い」

接種を終えた23歳の会社員の男性は「午前3時から並びました。職場の人や友達も打ち始めているので早く打ちたいと思い、住んでいる江戸川区では予約が取れなかったので来ました。若者向けの接種の場所を設けてくれるのはうれしいのですが予約制のほうがありがたかったです」と話していました。

また、接種を終えた19歳の専門学校生の女性は「予約を待っている間に感染するのは嫌なので行ける時に行こうと思って午前5時から並びました。以前はお年寄りが感染していたのに今は30代の人が自宅療養中に亡くなったり、20代も重症化していると聞いて、接種に行かないといけないと思いました」と話していました。そのうえで、若者が接種をためらう傾向にあると言われていることについては「少し前は妊娠できなくなるとかデマが多かったけど、今はワクチンが身近になってきました。周りの人も打っているので抵抗はないです」と話していました。

友人に誘われて接種を受けた18歳の大学生の女性は「予約は面倒くさかったし、ワクチンがどんなものかもよく分からず、打っても感染するかもしれないと思っていたので接種する予定はなかったですが、友達に誘われたので来ました。引き続き人が多いところには行かないように気をつけたいです」と話していました。

また、朝に整理券をもらえた姉妹は「コロナの収束にむけて一歩踏み出せたかなと思います。予約をしないで来ることができるのは、時間を気にしなくていいのでよいと思います」と話していました。

東京都 小池知事「接種できなかった人には申し訳ない」

小池知事は記者会見で「若い人たちにもワクチンを打ってもらうため1つの新しいチャンネルを設けたが、きょう接種できなかった人には申し訳ない。『予約なし』『予約して』とチョイスの幅を広げ、全体のワクチンをまず確保することなど、国とも連携をとりながら進めていく」と述べました。

東京都 午前中だけで1万件超の苦情

渋谷のワクチン接種会場が開始時間を待たずに受け付けを終了したことについて、東京都には8月27日の午前中だけで1万件を超える苦情や問い合わせの電話が寄せられたということです。

都によりますと
▽「せっかく並んだのに接種できなかった」
▽「行けば接種できると思ったのに」
▽「休暇を取って来たのにどうしてくれるのか」
▽「なぜ若者だけが対象なのか」
といった苦情が多かったほか
▽「今後はどうしたら接種できるのか」などの
問い合わせが相次いだということです。

都によりますと、都のコールセンターに寄せられた電話だけで1万件を超えていて、このほか都庁舎にも電話が相次いでいるということです。

東京都 ワクチン意識調査実施

若い世代にはワクチン接種をためらう傾向があると指摘されて来ましたが、実際はどうなのか。東京都は7月中旬、新型コロナウイルスワクチンに関する意識調査を、都内に住む15歳から64歳までの男女1000人を対象にインターネットで行いました。

“85%以上に接種意欲” “10代・30代女性 接種しない意向多い”

調査結果では
▽全体の85%以上が接種への意欲を持っている一方
▽10代と30代の女性は接種しないという意向がほかの年代と比べて多かったということです。

具体的には「接種を受けようと思うか」という設問で「おそらく」と「絶対に」を合わせて「接種しない」と答えた人の割合は
▽15歳から19歳の女性が最も多く27.6%
次いで
▽30代の女性が13.4%
▽20代の男性が12.7%でした。

これに対し「必ず」と「おそらく」を合わせて「接種する」と答えた人の割合は
▽15歳から19歳の女性が最も低く68.9%でした。
次いで
▽30代の女性が76.2%
▽20代の男性が81.0%となっています。

一方、40代以上では性別や年代にかかわらず「接種しない」と答えた人の割合が10%を下回っています。

“接種する” その理由は?

「必ず」または「おそらく」「接種する」と回答した人に複数回答で理由を尋ねたところ
▽「周りの人や家族に感染させたくないから」が最も多く59.5%
▽「安心して外出できると思うから/元の生活・社会に戻りたいから」が52.1%
▽「接種の効果があると思うから」が50.1%
▽「新型コロナがこわいから/後遺症がこわいから」が30.0%でした。

“接種しない” その理由は?

「おそらく」または「絶対に」「接種しない」と回答した人に複数回答で理由を尋ねたところ
▽「将来に健康被害が出たり後遺症が残ったりしないか心配だから」が最も多く60.5%
▽「接種直後に重い副反応や健康被害が生じないか心配だから」が52.3%
▽「接種直後にどのような副反応が出るかわからず心配だから」が51.2%でした。

ワクチン2回接種済は死者少ない

東京都によりますと、都内で感染が確認され7月19日から8月26日までに死亡が確認された146人のうち、ワクチン接種を
▽受けていない人が97人だったのに対し
▽1回済ませていた人が17人
▽2回済ませていた人は4人でした。
▽接種を受けたかどうか不明だった人は28人でした。

都は、ワクチンを2回接種すると感染の予防になるとともに死亡や重症化のリスクを下げられるとして若い世代への接種を加速させたい考えです。

東京都 若い世代の接種促進へSNS上での広告や動画配信

東京都は10億円の予算を計上し若い世代にワクチン接種を広めるためのキャンペーン事業を行い、SNS上での広告や動画の配信など広報を強化します。

さらに、既存のアプリを活用し店舗や商業施設で割り引きを受けられる仕組みや、アプリの利用者情報とワクチンを接種した日を結び付けて接種記録を表示できる仕組みなどを検討しています。

都は9月中旬までに公募で事業者を決めたうえで、10月中旬以降にキャンペーン事業を開始したいとしています。