「東京の感染拡大 制御不能な状況」
東京都のモニタリング会議

2021年8月12日

東京都のモニタリング会議で、専門家は「かつてないほどの速度で感染拡大が進み、制御不能な状況で、災害レベルで感染が猛威を振るう非常事態だ」と指摘したうえで「医療提供体制が深刻な機能不全に陥っている」として、極めて強い危機感を示しました。

会議の中で、専門家は、都内の感染状況と医療提供体制をいずれも4段階のうち最も高い警戒レベルで維持しました。

新規陽性者の7日間平均は、8月11日時点でおよそ3934人と2週間で倍増していると説明し「かつてないほどの速度で感染拡大が進み、新規陽性者が急増しており、制御不能な状況だ」と指摘しました。

「災害時と同様 自分の身は自分で守る行動が必要な段階」

そのうえで「災害レベルで感染が猛威をふるう非常事態だ。もはや、災害時と同様に、自分の身は自分で守る感染予防のための行動が必要な段階だ」と述べました。

また、8月11日時点で、入院患者は過去最多の3667人となり「都の入院調整本部では、翌日以降の調整への繰り越しや自宅での待機を余儀なくされる事例が多数生じている」と指摘しました。

専門家は「特に重症患者の入院調整が困難になっている。自宅療養中に容体が悪化した患者の受け入れも難しくなっていて、自宅などでの体調の悪化を早期に把握し、速やかに受診できる体制をさらに強化し、自宅療養中の重症化を予防する必要がある」としています。

“危機感を現実のものとして共有する必要”

また、専門家は、8月11日時点で重症の患者が197人、人工呼吸器などによる治療がまもなく必要になる可能性が高い患者が461人と大幅に増加しているとして「ICUなどの病床の不足が危惧される」と述べました。

そして「通常医療も含めて医療提供体制が深刻な機能不全に陥っている。さらなる重症患者の増加は医療提供体制の危機を招き、救命できる可能性がある多くの命を失うことになる」と述べ、極めて強い危機感を示したうえで、危機感を現実のものとして共有する必要があると強調しました。

人工呼吸器で治療の可能性の人 過去最多に

都内の入院患者のうち、人工呼吸器などによる治療がまもなく必要になる可能性が高い状態の人は、8月11日時点で過去最多の461人に上り、1週間で1.4倍に増加しています。

都の専門家は毎週行われるモニタリング会議で、医療機関で集中的な管理が行われている「重症患者に準じる患者」の人数を公表しています。

このうち、人工呼吸器またはECMOによる治療がまもなく必要になる可能性が高い状態の患者は、8月11日時点で過去最多の461人となりました。

318人だった1週間前の8月4日から一気に140人以上増えて1.4倍に増加しました。

過去最多を更新するのは2週連続です。

461人のうち、およそ半数の236人は鼻から高濃度の酸素を大量に送り込む「ネーザルハイフロー」という装置を使った治療が行われているということです。

小池知事「人流 緊急事態宣言開始直前の5割に」

モニタリング会議のあと、東京都の小池知事は「まもなくお盆が始まるが、この期間中はステイホームを徹底し、旅行や帰省の中止延期をお願いしたい。人と人との接触をいかに減らしていくかが感染防止につながるので、人流を緊急事態宣言の開始直前の5割に削減することを徹底してほしい」と述べました。

また「多くの人が利用する商業施設には、入場整理の徹底や客に短時間の利用を呼びかけていただくよう、お願いしている」と述べました。

救急患者受け入れ先探し「東京ルール」の運用 過去最多

都は、救急患者の受け入れ先を探す際に、消防の救急隊が5つ以上の病院に断られたり、20分以上経過しても決まらなかったりして困難をともなう場合、地域の中核病院などが搬送先を探す「東京ルール」という仕組みを運用しています。

この仕組みの適用件数が、新型コロナウイルスの感染の急拡大に伴って増加していて、7日間平均は8月11日時点で133.7件となり、過去最多となりました。

1週間前の8月4日の98.1件の1.36倍で、7月以降、増加傾向が続いています。

専門家は「極めて高い水準で、救急医療の深刻な機能不全を反映している。救命救急センターなどでの救急の受け入れ体制は、より厳しさが増し、搬送先の選定が困難となっている。また、救急車が患者を搬送するために現場到着から病院到着までの活動時間ものびている」と述べ、救急医療が厳しい事態に陥っていることに強い危機感を示しました。

入院調整 8割が調整つかず翌日以降に繰り越し

感染の急速な拡大に伴って、都内の保健所から都の入院調整本部に調整が依頼された件数が急増していて、7日間平均は8月11日の時点で608件に上りました。8月4日時点の450件の1.35倍で、過去最多です。

調整がすぐにできないケースも相次いでいて、都によりますと、8月11日に依頼があった737人のうち、8割近くにあたる570人は調整がつかず、翌日以降に繰り越しになったということです。

専門家は「翌日以降の調整に繰り越したり、自宅での待機を余儀なくされたりするケースが多数生じていて、調整が難航している」と指摘しています。

「抗体カクテル療法」 宿泊療養施設でも

「抗体カクテル療法」と呼ばれる、新型コロナウイルスの治療法について、都は、医療機関に加えて、宿泊療養施設でも薬の投与を進めるための準備を進めています。

「抗体カクテル療法」は、2つの薬を同時に点滴投与することで、抗体が作用してウイルスの働きを抑える治療法で、海外の治験では入院や死亡のリスクを70%減らすことが確認されています。

この治療法について、小池知事は「入院重点医療機関およそ120か所で実施できるよう、薬剤を常備する体制がとれた。まず、都立公社の病院で専用の病床を20床程度確保し、今後、順次拡充していく」と述べました。

そのうえで「宿泊療養施設の一部を臨時の医療施設として、抗体カクテルの療法に対応できるよう体制を整備しているところだ。ワクチンと抗体カクテルという2つの武器を有効に活用していくことがポイントになる」と述べ、医療機関に加えて宿泊療養施設でも、薬の投与を進めるための準備を進めていることを明らかにしました。

また、小池知事は「重症者を抑えることにつながれば、医療の負担軽減になる。今の状況が少しでも改善すればと考えている。政府とも緊密に連携をとりながら進めている」と述べました。