新型コロナウイルス 感染者・家族 遺族の証言
コロナ感染判明後に死亡
生後10か月の赤ちゃん 父親が心境語る

2022年4月7日

ことし2月、新型コロナウイルスへの感染が判明したあとに亡くなった、生後10か月の赤ちゃんの父親がNHKの取材に応じ、感染していなければ、亡くならなかったのではないかとしたうえで「子どもも亡くなるリスクがあることを、多くの人に知ってほしい」と語りました。

京都府舞鶴市の生後10か月の女の赤ちゃんは、ことし2月23日に新型コロナの感染が確認され、その3日後に亡くなりました。

赤ちゃんに基礎疾患はなく、30代の父親は感染していなければ亡くならなかったのではないかと感じていて、NHKの取材に応じ、当時の状況や現在の心境を語りました。

父親によりますと、赤ちゃんは感染が確認された翌日から呼吸をする際にゼーゼーという音がして息苦しそうにしたり、コンコンと、高い音のせきをしたりするなどの症状が出たということです。

父親は保健所に電話をしたものの受診できる病院が見つからず、感染が確認された2日後の25日になって受診できたということです。

父親は「病院では軽い肺炎の疑いはあるけど、ゼーゼー言っているのは鼻が詰まっているからだと言われ、薬の処方を受けました。僕の心配のしすぎかなと安どして帰りました」と振り返りました。

しかし、受診した翌朝、顔色が悪くなって容体が急激に悪化し、再び病院に連れて行きましたが、病院で死亡が確認されたということです。

京都府によりますと、赤ちゃんの死因は分かっていないということです。

父親は「すぐに救急車を呼んでいればよかったのではないかという後悔もありますが、コロナに感染したことで、すぐに適切な医療が受けられなかったのではないかとも感じています。赤ちゃんはどんなことでもリスクはあると思いますが、まさか亡くなるとは思っていませんでした。リスクを認識してもらい、今後、悲しい思いをする人が1人も出ないようにしてほしいです」と話していました。

赤ちゃんの感染後の経緯

新型コロナへの感染が確認されてから、赤ちゃんが亡くなるまでのいきさつを父親の説明を元にまとめました。

父親によりますと、ことし2月19日、その後の出産を控えていた母親が入院前のPCR検査で陽性が確認されました。

3日後の22日、PCR検査を受けたところ、父親と赤ちゃん、それにきょうだい2人の4人も翌日に全員の感染が確認されたということです。

赤ちゃんは21日に38度8分の熱が出ていましたが、検査を受けた22日には平熱に戻っていたことなどから、保健所と相談して自宅で療養することにしたということです。

赤ちゃんは自宅での療養の2日目、24日の朝から、コンコンという高い音のせきや、呼吸をするときにゼーゼーなどという音がして、息苦しそうにするようになりました。

父親は、保健所を通じて受診できる病院を探しましたがこの日は見つからず、翌日の25日に受診できましたが、医師からは「少し肺炎の疑いもあるが、鼻が詰まっているだけなので薬を飲めば大丈夫」と言われたということです。

ところが、病院を受診した翌日の26日の午前中、赤ちゃんは唇が紫色になるなどして顔色が悪くなったということです。

父親は、受診した病院に問い合わせましたが、土曜日で休診していたため、すぐに車で別の病院に向かいましたが、赤ちゃんは途中で呼吸が止まっているような状態になり、その後、病院で死亡が確認されたということです。

10歳未満の子どもの感染は

厚生労働省によりますと、国内で10歳未満で新型コロナウイルスへの感染が確認されたのは、3月29日までの累計で80万5677人です。

このうち、死亡が確認されたのは3人で、いずれもオミクロン株によって急激に感染が拡大した第6波の期間に亡くなったということです。

また、3月29日時点で、10歳未満の重症者数は6人となっています。

子どもが成人と比べて、重症化しづらい傾向は変わっていないということですが、日本小児科学会によりますと、第6波では小さい子どもでものどの奥など気道の入り口で炎症が起きて呼吸しづらくなる症状などが出るクループ症候群や肺炎などで症状が悪化するケースが増えているということです。

専門家「オミクロン株では重症化する場合も」

小児科医で感染症に詳しい北里大学の中山哲夫特任教授は、子どもが新型コロナに感染しても重症化する割合が低い傾向は変わっていないとしたうえで「デルタ株のときはウイルス自体が肺に入って感染しやすかったが、オミクロン株では肺では感染しにくく、鼻やのどに近い上気道の方で感染が広がっていく。特に乳幼児や小さい子どもはたんを出せないので、上気道で炎症が起きて息が吸いにくくなり呼吸困難になるなどして、重症化する場合がある」と指摘しました。

そして「コロナに限らず、一般的に子どもが感染症にかかると、ゼーゼーと鳴るせきなどが出る『クループ症候群』や乳幼児突然死症候群などが起きる可能性も考えられる。子どものウイルス感染症を侮ってはいけない。保護者は、泣き声など子どもたちの異常なサインを早く見つけ、早めにかかりつけ医や救急外来を受診することが必要になってくると思う。また、家庭の中では、乾燥しないように、適切な湿度を保つ環境を作ることなども大切だ」と話しました。