新型コロナウイルス 感染者・家族 遺族の証言
いまも後悔
「感染は想像以上に大変。自分だけの問題ではない」

2021年5月25日

東京に住む40代の男性は、去年9月、新型コロナウイルスに感染していることが分かりました。

男性は自身の手足に障害があり車いすでの生活をおくりながら、介護の会社を立ち上げて経営し、高齢者などへの訪問介護サービスを行っています。

当時、家族、社員、そしてサービスを利用する高齢者などに感染が広がらないか不安を抱えながらの日々だったといいます。

「感染は自分だけの問題ではない」という男性からのメッセージです。

障害者で経営者という立場、感染対策は行っていたが…

高齢者などに訪問介護サービスを行う会社を経営する東京の40代の男性は、10代の時に、事故でけい椎を損傷し、車いすでの生活となりました。

神経が損傷しているため、排せつや入浴などは毎日ヘルパーや看護師の支援が必要で、基礎疾患もあるため、風邪にかかると肺炎になりやすい状況だということです。

自分の障害と、高齢者らを支える経営者としての立場からマスクを欠かさず、私的な用事では出歩かないようにして、感染対策を徹底していましたが、去年9月に異変が起きました。

陽性判明後も“自宅待機”「家族に感染しないか不安で」

この日、いつものように自宅で入浴ケアを受けているときに38度を超える発熱。

ふだんとは違う、けん怠感があったといいます。

翌日PCR検査を受けると、陽性の結果が出ました。

妻と小学生の子どもと一緒に暮らしていた男性。

発熱から5日後に入院が決まりましたが、それまでの間、自宅での待機となりました。

この間、一部を除き、ヘルパーの受け入れが難しくなったため、自分の支援のほとんどは妻が担うことになりました。

妻は、トイレの支援など朝から晩まで介護にあたったということです。

男性は「妻に感染しないか本当に不安でした。負担も大きく申し訳なく思った」と話しています。

その後、入院。

発熱やけん怠感がある状況が続きましたが、徐々に改善し、9日後、退院することができました。

従業員の多くが濃厚接触者に 会社は業務を停止

妻や子どもについては、検査の結果は陰性でしたが、男性が強く不安に感じたのは、会社の従業員や、訪問介護のサービスを利用する高齢者などへの感染でした。

従業員のほとんどが濃厚接触者と判定され、会社も業務停止となりました。

会社では、50人余りの利用者がいましたが、残った従業員が、利用者側に電話で説明したり、ほかの事業所に連絡して、代わりに支援できないか必死に調整したといいます。

男性は、不安な気持ちを抱え、眠れない日もあったといいます。

幸い、従業員や高齢者などにも感染は確認されず、発熱から2週間余りで、ようやく会社を再開することができました。

いまも後悔「もっと対策をしていれば」

「障害者であり、介護の会社を経営する自分が感染したことで、家族や従業員、それに介護という社会インフラにも影響が出てしまった。罪悪感があります」

もっと対策を徹底していれば、感染を防ぐことができたかも知れないと男性はいまも後悔しているといいます。

各地で感染が続く中、男性は、自分の経験を振り返りメッセージを寄せてくれました。

「感染は自分だけの問題ではない。想像以上に大変で、周囲の人たちに感染させる恐れもある。だからこそ身近な人たちの顔を思い浮かべて、外出など、自分の行動を判断してほしい」

(取材:映像センター カメラマン 小川原裕史)