新型コロナウイルス 感染者・家族 遺族の証言
変異ウイルス「自覚症状ないまま肺炎悪化」
重症化した女性は

2021年5月20日

「気付かないうちに肺炎が悪化していた。延命措置も考えないといけないと医師に言われ、私は家に帰ることができるのか、不安にさいなまれた」

急速に拡大する変異ウイルスに感染し、一時重症化した女性の証言です。

息子が感染、検査すると自分も…

4月下旬、埼玉県内に住む80代の女性は、同居する50代の息子が新型コロナウイルスへの感染が確認されたため、検査を行ったところ、みずからも感染していることが分かりました。

女性は持病のぜんそくの治療薬を服用していたためか、発熱などの自覚症状はみられませんでした。

しかし、病院で検査してみると、肺炎が悪化していることが分かり、変異ウイルスへの感染も確認されました。

80代の女性
「まさか自分が感染するとは思わなかった。持病のぜんそくはあるけど、健康には自信があったし、人が大勢集まる場所には行かないように気をつけていたので。自覚症状もあまりないし、食事もおいしく食べていたので、感染したと聞いた時は、えー、どうしようと」

約1週間で重症化、人工呼吸器の使用も検討

そして、入院からおよそ1週間後。

酸素マスクでは血液中の酸素の数値が保てなくなるほど重症化し、人工呼吸器の使用も検討される事態にまで陥りました。

80代の女性
「延命措置に入る可能性があると医師に言われて、承諾しますかって言われて。えー、どうしようと思ったし、私は家に帰れるようになるのか不安にさいなまれた」

その後の治療によって、女性は回復しましたが、現在も酸素の吸入が欠かせないということです。

女性は毎朝、地域で開かれているラジオ体操に出かけ、そのあと散歩するくらいしか外出することはなく、残りは自宅で過ごしていたということです。

ただ、同居する50代の息子は働きに出ているため、日頃から感染しないように親子で話していたということです。

80代の女性
「息子にはどこかで感染して帰ってきたら私にうつるし、死んじゃうかもしれないから気をつけようと話していた。ただ、息子に勤めに行くな、外出するなとも言えないし、どうやって感染を防げばいいのか今も見当が付かない」と困惑していました。

医師「本当にあっという間に悪くなる」

治療にあたった川越市にある埼玉医科大学総合医療センターの三村一行医師は、女性が入院してきた時、自覚症状はないものの肺炎が非常に悪化していて、驚いたと話しています。

埼玉医科大学総合医療センター 三村一行医師
「女性は入院した時に酸素を投与しないとダメな状況だった。本来は(血液中の)酸素の数値が悪くなると息苦しさを感じるべきものが、新型コロナでは自覚症状として感じづらいこともある。一方で酸素の数値が下がり始めると、本当にあっという間に悪くなってくる、崖を転がり落ちるように悪化していくので、その兆候を客観的な数値で早めに捉える必要がある」

(取材:首都圏局 記者 古市駿)