新型コロナウイルス 感染者・家族 遺族の証言
医療従事者 非正規雇用
今も続く不安…

50代の女性は企業の中に設けられた診療所で契約の看護師として働いていました。医療従事者であり、非正規雇用でもある人の感染。今も症状が続き、生活に不安を感じているという女性の話です。

感染するだろうと思っていた

女性が発症したのは3月中旬。37度前後の微熱に加え、頭痛や吐き気、せき、たんなどの症状が出たという。女性は、いつ感染してもおかしくないと考えていた

めまいと、気持ちの悪さというか悪寒ですね、あと微熱が出ました。これは何かいつもと違うなとすぐに感じました。今までかかった風邪とは明らかに違う感じがするんですね。

(働いていた診療所では)防護服とか使っていないのと、マスク1枚で対応しなくてはいけない。中国の出張から帰られた方とか、「感染者が発生した施設を使っていた」とあとから連絡来たりとか、そういった方たちとも接触があるのですごく危険を感じていました。発熱されている方とも常に接触してました。

体調悪くなったりとか健康に関係することはまず第1に私のところに(相談が)来るので、一番最初に(新型コロナウイルスに)かかるのは私だろうなと思っていました。

壁になったPCR検査の“目安”

女性は4日たっても症状が治まらなかったため保健所の「帰国者・接触者相談センター」に連絡をした

「37度5分以上で4日間」というのが出されていたので、4日間、自宅待機して保健所に連絡したんですけど、「37度5分を超えてないから」と言われまして。ぜんそくもあったんで、それもお伝えしたんですけど、対象外だということで検査に至らなかったんですね。

2週間たっても改善しなかったため、女性は再び連絡した

最初はもうちょっと様子をみてみようと思ったんですね。薬もないということで、微熱だったので静かにしてれば良くなるかもしれないという気持ちでいたんですけど、ぜんそくがあったりするせいもあって、どんどん咳が強くなっていきまして。

2週間たっても良くならず、夜中も眠れないくらいの咳になっていたので、もう一度保健所に連絡したんですけど、また対象外ということで、37度5分を超えていないということで断られました。憤りを感じましたね。保健所の職員の方が「苦しいなら、かかりつけ医にかかってください」と言われたので、なんのための保健所、帰国者・接触者センターなのかというのをすごく感じました。結果的にはかかりつけの先生が強く「検査するように」と(保健所に)言ってくださって検査する運びになったんですけど。

いつもと違う状態だというのは、かかった私本人が一番分かっているわけですよね。医療職でもあるので多少の知識もありますので。そのあたりを訴えてもシャットアウトされてしまうというのは、ちょっとどういうことかなと感じました。

契約終了 労災申請できない

女性は発症から16日後の3月下旬に感染が確認され、1週間余り入院した。職場との契約は3月末で終了した

契約社員なのでその後の契約もなく、次の職場に行くめども立たなくなってしまって、これからの生活をどうしようかなと思ったときに、やっぱり職場で感染したというのが私の中ではありますので、これは労災ではないかと思って、そのあたり補償していただけないかと思って労基署に聞いたんですね。

そしたら「明らかに感染が確認された方、罹患していて陽性確認された方を看護していたとか、そういう方に接触したということがはっきりしないと、今までは労災申請しても認められなかったんです」と言われました。そこで(感染経路を)調べていただけたのかなと思って保健所に問い合わせたんですね。

保健所に尋ねると、感染が分かった時点ですでに2週間以上経過し、職場で発熱した人が確認されなかったとして感染経路が特定されないまま調査が終えられていたという

2週間たっているから(経路調査は行わなくても)いいだろうというような、保健所と勤め先の上司が2人で決めたようなんですね。どちらも相手が言ったと言っているんですけども。「発熱した人がいないから」と私の上司は(保健所に)言ったようですし、保健所の方は「発熱者がいないならいいです」と(会社に言った)。どちらも相手のせいにしているというかですね。

職場の同僚からは、「課内だけで収めるようにということを言われた」っていう連絡が来ているので。どういうことかな。ひとりひとり、きちんと向き合って、発熱があるかどうか確かめていただけたのか…。

陽性が確認されたときに上司にも濃厚接触者を伝えたんですけど、もう何日かで退社するということで検査してもらえないのかな、軽んじられているのかなという気持ちにもなって、非常に不安な気持ちというか嫌な気持ちになりました。

厚生労働省は4月28日になって医療従事者は仕事以外で感染したことが明らかな場合を除いて原則、労災と認める方針を示した。しかし、元の職場が協力してくれず、まだ申請に至っていない

発症してからさかのぼって2週間、どなたともお会いしてないんですね、会社以外の方に。(感染の)危険をすごく感じていましたので、自分の親や子どもを遠ざけるような形でひとりで生活するようにしていましたので。あとは、私が住んでいる地域では、私が(感染)第1号なので、近隣のスーパーには買い物行くんですけどそこで罹患した可能性はかなり低いと思います。

まずPCR検査はすぐしていただかないと、その期間が延びてしまえば延びてしまうほど感染のリスクをみなさんに広げてしまうし、経路をたどるのも難しくなっていきますね。

看護師はやっぱり体調不良の方に接するので、優先的に労災は認めていただきたいなと思います。

今も続く症状 シングルマザーで生活の不安も

女性は4月から別の病院で正社員として働く予定だったが、今も新しい職場に行くことができていない

(検査で陰性となり)退院してからも入院する前も37度5分以下の微熱なんですね。微熱はずーっと継続して続いています。朝下がっていても夕方上がってくるということが毎日繰り返されていて、あとは咳とたんはずっと続いていますし、頭痛ですね、頭痛はもうずっと続いていますね。強弱はあるんですけども、強くなると強烈な刺すような痛みで、本当に動けなくなってしまうくらいの痛みが起きるのでとても怖いです。

新しい職場もとても困っていまして、「症状がある状態では出てこないでくれ」ということなんですけど、どうも5月1日に厚労省の基準で、「発症してから2週間後は感染しないので職場復帰可能」ということが出されているんですけど、ちょっと今の段階では私の場合は(新しい職場に)受け入れられそうもないですし、私自身も今働けるほど元気に動き回れるような状態ではないですね。

職場のほうも待ってくださっているんですけど、まだ働き始めてもいない人をいつまで待ち続けてくれるのかっていうところはすごく不安ですね。

女性はシングルマザーで、20代の子ども2人がいる。生活の不安が膨らんでいる

いつになったら熱が下がって症状がなくなるのか。このまま後遺症もなく治るのかというところもめどがたっていないので、不安なままでいます。

長男は今、東京におりますけども、コロナのご時世で職がなくなってしまったりしているので、いろいろ助けてあげたいと思っても助けてあげられなかったりするので、そういったところではやっぱり心配ですし。

強い頭痛で脳梗塞とか起きたときにどのようになるのかなと。私が亡くなってしまうと、子どもの学費とか残ってしまうので、そのあたりのこともとても不安です。

契約社員だったものですから余計に、そのあとの保障がないんですね。会社で罹患したわけですけど、その後の生活の保障がなにもないということになると、とても怖いなと思います。

(2020年5月5日取材社会部 間野まりえ)