新型コロナウイルス 感染者・家族 遺族の証言
高熱や息苦しさ 味覚もなくなる…どこで感染したか分からない

高熱や息苦しさ、痛み。新型コロナウイルスに感染したとき、様々な症状が現れることがあります。どこで感染したのか心当たりがないという高知市に住む50代の男性の話です。

突如現れた さまざまな症状

男性に症状が出始めたのは2月末、別の疾患で入院しているときだった

まず寒気、それと節々の痛みが起きました。腰と背中の脊髄あたりがちょっとずきずきと痛むような感覚と、寒気が全身に、足元から首元ぐらいまでですね。それから微熱が37度ちょっとぐらい出ました。明くる日、夕食終わって8時ぐらいから38度以上の熱になりまして、日に日に症状が悪化していきまして。3日目には39度以上の高熱が出て、それが4日間ぐらい続きました。

お薬を処方していただいて1日3回飲んでました。それでも効き目なくて、薬飲んだときは37度6分とか38度ちょっとまで下がりましたけど、また2時間ぐらいたったら、ばあっと39度以上の高熱になりまして。とにかくだるさと体の熱さですね。それから吐息の、なんて言ったらいいかな、息苦しさですか。呼吸がちょっとしんどい、息が続かない。プールで顔をつけて上げるみたいな感じで。

とにかく食べて寝ることがいちばんやと思ったんですけど、食べることが全くできなくなりまして。味覚がなくなり、味も無くなったもんでね。高熱が出た明くる日の朝ご飯、その病院はパン食なんですけど、全然食べられない状態で。パンにクリームとかいろいろあったんですけど、それに牛乳付きで。パンを全く食べられない、味もないということで、そこで気付きました。お味噌汁を飲んでも全然味がしません。ダシの味も1ミリもしません。白米のにおいなんかも感じません。もう、1ミリもしないです。

それやったら冷たい水を飲んだほうがずっとおなかも張るし、味がないけど気持ちいいですよね。うどんのときもありましたけど、うどんだけやったら無理やり詰め込んで食べたり。お薬を飲まないといけないんで、どうしても食べとかないかんと思って、なんとかして無理やり詰め込みよったですね。

医師たちも疑わなかった感染

私はただのかぜと思ってましたね、ええ、インフルエンザにもかかったことないもんで。まさか新型コロナウイルスにかかっているとは夢にも思いませんでした。

熱が上がってきて、インフルエンザの検査も2回受けました。採血も2回。おしっこの検査も2回というふうに。インフルエンザで陽性が出なかったもんで、先生方も「なんの病気やろ」と。「どっからの熱やろう」と原因を突き止めるのに必死やったと思います。看護師さんとはちょこっとね、冗談交じりに言いよったんですけどね。あくまで冗談で。まさか自分が感染しているなんて思いもよりませんでしたね。

大人になってから1回も高熱なんて出たことないんですよ、この病気になるまで。高熱が出だして5日目ぐらいから先生方も心配されまして、ちょっと大きい病院で診てもらったほうがいいんじゃないかということで、3月6日の午後に別の病院で診てくださいまして、そこで「肺炎にかかってます」と。「PCRの検査したほうがいいですよ」と言われまして。

検査の結果、感染が確認され指定医療機関に転院した。幸い、肺炎は比較的軽かった

私の場合、よく食べてよく寝るということ、それが治療の1つやということでした。薬を飲んでも熱が38度から下がらなかったので、薬を変えてみようということで、違う薬を出していただいたんですね。筋力の痛みとかを和らげる、ロキソプロフェンというやつですかね、それを出していただいて。私の体とマッチしまして、ぴったり熱は下がりましてね、37度ぐらいまで。1錠飲んだらもう下がり始めましたね。すぐです。飲んで3時間後ぐらいですかね。38度から37度に、1度ぐらいの差がありましたね。ものすごい体が楽になりました。

ただ息苦しさとたんは続いてましたね。先生から話を聞いたもんで、「軽い肺炎で、それほどの治療をすることはない」と。それで安心したのかどうか分からないけど、味覚のほうが戻ってきまして。転院した日の夕方の食事は「いりません。食べる気がしません、食欲がありません」って私は言いまして、「明日からにします」と言ったんですけど。翌朝から食事が出てきたんですけど、もう、戻ってましたね。味覚が戻ってきて、多少の味はしてきまして、それから食事もとれるようになってきました。

感染経路に心当たりがない

入院中、男性がずっと考えていたのが、どこで感染したのかということだった

感染していると分かったときはショックでした、正直言って。まさかと思いました。どこで感染したんやろうっていうことは常に考えてました。時間があったもんでね、考える時間。2月の行動を振り返っても、かかるような行動はしていないんですよね。たいがい部屋におりましたし、外へ出ても買い物程度なんでね。

保健所からも詳しく聞かれました。正直に全部答えてます。いい気分はしませんよね、自分の個人情報なもんで。でも他の方がかかられたときに困りますので、ちゃんと言うとかなと、正直な答えしてます。

多少あるとしたらね、免許証の更新のときですかね。2月の9日に行ったんですよ。日曜日なもんでね、結構人がおりまして。マスクはしている方もいましたけど、半分ぐらいはしてなかったですね。私自身もしてなかったもんで。なかにはせきこんだり、くしゃみしたりする方もおりました。症状が出るひと月も前のことですけど、病院の先生に「ひと月くらいの範囲で疑いを持て」と言われてますんで。早い人は感染してすぐ2日ぐらいで症状が出てくるみたいなんですけどね。

あとは2月26日ですかね、ちょうど入院する朝なんですけど、いつもはだいたい自転車なんですけど、そのときは用事があって、しょうがなしに電車で行ったんですよね。どこでもらったか分からないから、もう。思い当たることはないですね、自分でも。

退院後も続く不自由さ

男性は2週間余りで退院。取材したときは、健康観察が続いていた

退院してから外出自粛が4週あるもんで、本当に買い物だけにしてですね、どこも行かないと。買い物したらすぐ帰ってきて部屋におると、それから帰ってきたら手洗いですね。手洗いとうがい。で、1時間ぐらい空気の入れ替えですね。体温も毎日測るように言われてます。体温と、咳、息苦しさ、鼻水鼻づまり、のどの痛み、頭痛、下痢、あったら報告をするということで。これは4月の23日までですね、保健所さんに報告するということです。

退院する前に先生に言われたんですけど、「コロナウイルスにかかって入院していることを知ってる人もいるかもしれん、近所の人で。バッシング受けたときはどうするか」ということをおっしゃいましたんで。そのときは腹を立てずに保健師さんに連絡をしますということでしたね。ちょっとそういう不安もありましたけど、帰ってきて今は実際ないもんでね、安心しています。

正直なところ、あしたにでも解放されたい気持ちはありますね。でも、そういうわけにはなかなかいかんもんでね、気持ちを切り替えてですね。ニュースを見て、自分だけじゃないと、みんなが困って、みんながたたかっていきゆうんやと、うん、気持ちになりました。みんなでたたかわないかんという気持ちでですね、前向きになっていきたいと思ってます。

(2020年3月27日取材 高知放送局 山嵜雄大 宗像玄徳)