東京のコロナ感染状況
“早いペースで悪化か…”専門家が危機感

2021年6月29日

東京都内では6月29日、新たに476人の新型コロナウイルスへの感染が確認され、10日連続で前の週の同じ曜日を上回りました。専門家は「感染状況は早いペースで悪化する可能性があり、感染再拡大が懸念される」と述べ、強い危機感を示しました。

東京都の感染確認 前週の同じ曜日比↑が続く

まん延防止等重点措置に移行した東京都では新たな感染確認が増えていて、6月29日は476人の感染確認が発表されました。これは1週間前の火曜日より41人増えています。

こうした状況を受けて都は6月29日、幹部と専門家が集まり感染状況の分析や今後の対応について協議しました。

専門家「感染状況 早いペースで悪化の可能性」

この中で都の「専門家ボード」の座長で東北医科薬科大学の賀来満夫特任教授は「夜間の滞留人口のうちハイリスクと考えられる22時から24時までの人口が急増している。2回目の緊急事態宣解除後の1週間と同じ程度の高い水準だ。感染状況は早いペースで悪化する可能性がある。感染再拡大が懸念される」と述べました。

また、インドで確認された「L452R」の変異があるウイルスについて「都内で増加の兆しが見受けられ、今後、急速な置き換わりが懸念される」と述べ、警戒が必要だと呼びかけました。

多羅尾副知事「新規陽性者増加とまらず 予断を許さない」

このあと都の幹部や専門家が出席して記者会見が開かれ、この中で過度の疲労で入院し静養が続いている小池知事の代理をつとめる多羅尾副知事は「新規陽性者数の増加がとまらない。再拡大が危惧され予断を許さない。一方でワクチン接種が進み高齢者の感染割合は明らかに減少している。ワクチンが行きわたっていない若者や中高年世代で感染の広がりが見えている」と述べ、若者や中高年層に特化した対策を強化する考えを示しました。

また、小池都知事について多羅尾副知事は記者会見で「医師の指示で静養が必要ということで現在休んでいる。知事とは必要な連絡をとりながら日々、対応している。都庁としてはコロナ対策をはじめ今までどおり万全な態勢でやっていると認識している」と述べました。

「新型コロナウイルスに感染していることはないか」と記者団から聞かれると「少なくとも私は聞いていない」と述べました。

感染状況悪化“酒の提供全面停止の要請” 具体的な言及なし

今回のまん延防止等重点措置に移行する際に、東京都は感染状況が悪化した場合には酒の提供の全面停止を要請するとしていました。これについて、記者会見を開いた都の専門家や幹部は記者団から「具体的にどういう状況になったら判断するのか」などと繰り返し聞かれました。

これに対して賀来特任教授は、高齢者の感染が減っていることなどを踏まえ「新たな感染者の中身が変わってきている。感染状況を踏まえて今しばらく傾向を見定める必要がある」と述べました。

また、黒沼靖総務局長は「総合的に都として判断する。行政だけで判断するのではなく専門家の助言をいただきながら判断していく。現時点では今しばらく状況をみていきたい。ただ非常に憂慮、懸念をしている」と述べました。

どのような状況になったら判断するかについて、具体的な言及はありませんでした。

東京周辺では…? 千葉 神奈川は前週の同じ曜日比↑

東京周辺の自治体の感染状況です。
▽千葉県内では新たに92人の感染が確認され、1週間ぶりに感染者の発表が100人を下回りましたが、1週間前の火曜日より18人増加しました。
▽埼玉県内では76人の感染確認で、1週間前の火曜日と比較すると17人減りました。
また
▽神奈川県内では181人の感染が確認されました。1日に発表される感染者の数は28日に続いて200人を下回りましたが、1週間前の火曜日より18人増え、4日連続で前の週の同じ曜日を上回っています。

海水浴場開設で看板設置 神奈川・藤沢

こうした中、例年150万人以上の海水浴客が訪れる神奈川県の藤沢市ではことし2年ぶりに海水浴場を開設します。これを前に6月29日は市の職員らが片瀬海岸などに、市や海水浴場組合などが独自に定めたルールを記した看板を設置しました。

看板には
▽海の家以外での飲酒をしないことや
▽大声にならないよう音楽機器の音量は下げること
それに
▽密集につながる大型のテントは使用しないこと
などが書かれています。

また、医療関係者の負担を増やすことがないよう
▽水難事故の防止や
▽熱中症を予防することなども呼びかけています。

藤沢市観光課の木村嘉文課長は「コロナ禍で海水浴場を開設しても感染者を増やさないということが重要です。両立できるようにルールを守っていただきたい」と話していました。

藤沢市内にある片瀬東浜海水浴場と片瀬西浜・鵠沼海水浴場は7月3日に、辻堂海水浴場は7月17日に開かれる予定です。

田村厚労相“必要あれば東京に再び宣言も”

田村厚生労働大臣は閣議のあとの記者会見で、新規感染者数が増加している東京の感染状況について「夜間の滞在人口が伸びていて、これが増えると感染者が増えてくる。非常に注意しなければならない」と指摘し、必要があれば再び緊急事態宣言を東京に出すことも検討する考えを重ねて示しました。

一方で「宣言を漫然とお願いしただけで本当に夜間の滞在人口が減るのかも考えなければならない。前回の宣言を解除してまだ日がたっていないので、またすぐに出すことが効果としてどうなのかよく分析しないといけない」とも述べ、宣言を出す場合には、夜間の人出を減らすなどの十分な効果が得られるかも含め考える必要があるという認識を示しました。