新型コロナ感染拡大
自宅療養者への食料品の配送 遅れ相次ぐ

2022年2月15日

新型コロナウイルスの感染拡大で自宅で療養する人が全国で50万人以上に急増する中、自宅療養者に自治体が行う食料品の配送が遅れ、支援が十分に届かない事態が相次いでいます。

厚生労働省のまとめによりますと、新型コロナウイルスに感染し、自宅で療養している人は、2月9日時点で全国で54万3045人にのぼり、前の週より10万人以上増えて過去最多を更新しました。

こうした人たちの生活を支援するため、都道府県などは希望者に対して、水やレトルト食品などの食料品を自宅に届けています。

しかし、自宅療養者の急増に伴って、東京都や埼玉県、千葉県、大阪府、福岡県などでは食料の配送が遅れ、支援が十分に届かない事態も起きています。

このうち、東京都では希望者には原則、翌日までに配送していますが、ピーク時には一日9700件の申し込みがあり、届くまでに数日以上かかることがあるということです。

また埼玉県では、申し込みから届くまでに最大で1週間ほどかかっているほか、大阪府では感染者の登録が遅れることで、配送に時間がかかるケースが出ているということです。

遅れの理由として、多くの自治体は必要な数の食料品を確保できなかったり、配送業者が配達しきれなかったりすることなどをあげています。

東京都は、「急な増加に対応が追いつかず、申し訳なく思っている。遅れは徐々に解消してきている。今後も感染者数は急激には下がらないので、遅れることなく届けられるよう対策を進めたい」としています。

大阪の自宅療養者「とにかく不安だった」

大阪府内で暮らす30代の女性は、自治体からの食料支援が届かなったひとりです。

女性は、11歳の娘と8歳の息子を育てるシングルマザーで、1月30日に娘に症状が出たあと、2月4日に自身も感染が確認されました。

自宅で療養を始めて、最初の数日は自宅に備蓄していた食料品を食べて過ごしていましたが、ほどなく底をつきました。

しかし、大阪府から食料の支援は届かず、買い物に出ることもできなかったため、育ち盛りの子どもの食事を作ることができなくなったということです。

このため、インターネットを通じて宅配の食材を頼まざるをえず、仕事を休んで収入が安定しない中で、いつもより食事代がかさみ、負担が増したということです。

結局、大阪府から3日分の食料が届いたのは、自宅での隔離を始めてから11日後でした。

女性は、「買い物に行けない食料がないということが、本当につらいということを身にしみて経験した。食料がないのは本当に死につながると今回、すごく思った。宅配はどうしてもコストが高く、家計がすごく圧迫され、長らく仕事も休ませざるをえない状況で、今後の生活面にも支障をきたすし、とにかく不安だった」と話していました。

配送とりやめ外出容認 神奈川

神奈川県は自宅療養者が急増して対応が難しくなったとして、1月28日から重症化リスクがある人など、一部の人以外には食料品の配送をとりやめています。

このため、食料品の買い出しのために感染した人が、外出することはやむをえないとしています。

神奈川県は外出する場合は、マスクをして人と話さないことや、混雑している場所には行かないこと、短時間で済ませることなどを呼びかけています。

地元自治体が支援 東京 日野

東京都の食料支援が遅れる中、地元の自治体が支援に乗り出すケースも出ています。

このうち日野市では、物資が届かない住民に対して、3日分の食料を自宅に届けています。

1月下旬以降、一日50件を超える申し込みがある日もあり、役所のほかの部署から職員を集めるなどして対応しています。

2月15日は、およそ10人の職員が、おかゆやゼリーなどを箱に詰める作業を行い、配送業者に手渡していました。

日野市健康課の天野雅章予防係長は、「食べて元気になることも多いと思う。通常の業務に支障が出る可能性もあるが、本当に命に関わる業務なので、手が空いている職員に優先して手伝ってもらっている」と話していました。

地元の商店が協力して支援 東京 文京区

地元の商店が協力して、自宅で療養している人の依頼に応じて食料などを届ける取り組みも行われています。

東京 文京区では1月21日から、商店街にある薬局や文具店、新聞販売店など、10の商店が自宅で療養を続けている住民からの依頼に応じて商店街で買い物をして商品を届けています。

できるだけ接触を避けるため、費用は依頼を受けた商店がいったん立て替え、回復した後に支払ってもらいます。

このうち、商店街の薬局では2月15日までに配達の依頼が26件来ているということで、この日は自宅療養者の要請に応じて、のど飴を届けていました。

中には、東京都からの食料支援が届かないとして、惣菜や食材などの配達を希望する人もいるということです。

高木薬局の高木孝一郎代表は、「行政から救援物資が届かない中で、不安もあると思う。少しでも住民の希望と安心につながればうれしい」と話していました。