“まん延防止” 13都県で延長
いまの状況は 今後は

2022年2月10日

政府は東京など13都県のまん延防止等重点措置を3月6日まで延長するとともに、新たに高知県にも2月12日から3月6日まで重点措置を適用することを決めました。

延長された地域では、夜間の人出は減っているものの、感染者数はいまだに増加しています。こうした中、専門家は感染のリスクが高齢者と子どもに二極化しているといいます。

感染状況は、いまどうなっているのか。今後どうなっていくのか。

わかっていることをまとめました。

13都県を延長 高知県も追加

新型コロナ対策で、政府は2月13日が期限の東京など13都県のまん延防止等重点措置を3月6日まで延長するとともに、新たに高知県にも2月12日から3月6日まで重点措置を適用することを決めました。

2月10日開かれた政府の新型コロナウイルス対策本部では、岸田総理大臣が「国民の皆様のご協力により感染拡大のスピードは明らかに落ちてきており、これまで講じてきた措置は一定の効果があったと考えている。他方で、感染者数は、なお増加しており専門家からも遅れて重症者が増加するリスクが指摘されている。社会経済の維持に支障をきたすおそれにも引き続き、注意が必要で、まだまだ安心できる状況ではない」と述べました。

そして2月13日が期限の東京など13都県のまん延防止等重点措置を3月6日まで3週間延長するとともに、新たに高知県にも2月12日から3月6日まで重点措置を適用することを決めました。

これによって、重点措置の適用地域は、36の都道府県に拡大されます。

また、感染拡大のスピードが速いオミクロン株に対応するため、臨時の医療施設の整備などに加え、先の専門家の提言を踏まえ、学校や保育所、高齢者施設などでの感染対策を基本的対処方針に反映させることも決定しました。

夜間の人出は減少

今回、重点措置が延長された首都圏の1都3県や愛知県など13都県では、ほとんどの地域では、まだ拡大が続いています。

これらの地域では、重点措置が適用される前後から夜間の繁華街の人出が減少しました。このうち東京都では、1月下旬の夜間の人出が2021年12月下旬と比べて30%あまり減ったほか、愛知県でも30%ほど減少しました。

医療提供体制・感染者数は高い水準

その一方で、医療提供体制と新規感染者数については、いずれも高い水準が続いています。

医療提供体制については、重点措置が適用される前の1月20日と2月9日時点を比べると、確保病床の使用率は
▽群馬県が46%から61%
▽埼玉県が35%から57%
▽千葉県が20%から65%
▽東京都が29%から57%
▽神奈川県が24%から70%
▽新潟県が27%から27%
▽岐阜県が32%から53%
▽愛知県が13%から56%
▽三重県が28%から47%
▽香川県が30%から41%
▽長崎県が30%から46%
▽熊本県が40%から67%
▽宮崎県が26%から41%となっています。

新規感染者数は

また、直近1週間の人口10万人あたりの新規感染者数を重点措置の適用前と2月9日時点で比べると、
▽群馬県が129人から342人
▽埼玉県が150人から551人
▽千葉県が138人から550人
▽東京都が268人から902人
▽神奈川県が151人から609人
▽新潟県が98人から152人
▽岐阜県が109人から305人
▽愛知県が175人から523人
▽三重県が95人から301人
▽香川県が73人から253人
▽長崎県が144人から259人
▽熊本県が209人から333人
▽宮崎県が111人から201人といずれも増えています。

全国の新規感染者 高齢者の感染引き続き増

厚生労働省が2月10日、公表したまとめによりますと、2月2日から8日までの1週間に感染が確認されたのは速報値で52万1991人で前の週より8%増えました。

年代別では、
▽10歳未満は7万6856人で全体に占める割合は14.7%と前の週から0.7ポイント増えました。
▽10代は7万2067人で全体の13.8%で前の週から0.7ポイント減りました。
▽20代は、7万9976人と前の週から5841人減少しました。全体に占める割合は15.3%と前の週から2.5ポイント減っています。
▽30代は8万1675人で15.6%、
▽40代は8万790人で15.5%、
▽50代は5万763人で9.7%となっています。

一方、▽60代以上は7万5969人で全体の14.6%と前の週より2ポイント増え、高齢者の感染は引き続き増えています。

尾身会長 「高齢者と10代以下 リスクが二極化している」

「基本的対処方針分科会」の尾身茂会長は、「基本的対処方針にはオミクロン株の特性に応じた対策を求める提言が反映された。いま、20代や30代の感染は落ち着いてきているが、基礎疾患のある高齢者や10歳以下の感染が多くなり、感染は二極化している。分科会では、▽重症化リスクの高い高齢者のケアに重点を置く保健医療体制にシフトすること、▽学校などでの学びを確保しつつ、周りの大人が感染対策を徹底し子どもたちを感染から守る対策が重要だということ、それに▽重点措置の解除など出口戦略を含め、これからどうなるか新型コロナ対策分科会で議論すべきだという意見があった」と説明しました。

その上で「オミクロン株では、感染の場は飲食店だけでなく家庭や職場などにも多様化していて、感染者の年代は10代以下と高齢者に二極化していて一部の人は重症化している。メリハリをつけて重症化するリスクのある人に重点を置く医療・保健体制が必要で、感染対策も飲食店だけでは意味がなく、幅広い対策にシフトする必要がある」と述べました。

また、出口戦略について「オミクロン株を想定した対策とともに、またウイルスが変化することも考えて、どのようにすれば少しずつ出口が見えるか、明確にすべきではないかという意見があった。今後については社会経済の機能をフルに戻すべきという意見がある一方、慎重に考えるべきだという意見もある。オミクロン株とインフルエンザの違いも分析しながら、科学的根拠をもとに、医療や保健体制、検査などの戦略について議論したい」と述べました。

“高齢者へのワクチン接種進んでいない”

一方、高齢者施設でつくる3つの団体は、3回目のワクチン接種が進んでいないとして、政府や自治体に対して対策の強化を求めました。

3つの団体では、2月3日から9日まで調査を行い、5829の高齢者施設から回答がありました。

それによりますと、施設の入所者や職員が感染したり濃厚接触者になったりしているのは36.1%に上りました。3回目のワクチン接種について聞いたところ入所者と職員のいずれも接種を終えていない施設は43.5%でした。

接種が進まない理由を複数回答で聞いたところ
▽「ワクチンがまだ届いていない」が27.1%、
▽「接種券がそろってから対応しようと考えていた」が24.4%、
▽16.3%が「2回目の接種から6か月が経過していない」と回答しました。

団体では高齢者施設で感染がさらに広がると重症化のリスクが高くなるとして2回目の接種から6か月がたっていれば接種券が届いていなくても3回目の接種ができることを、自治体が積極的に周知するよう求めています。

また政府には2回目の接種から6か月がたっていなくても3回目の接種をできるようにしてほしいと要望しています。

全国老人保健施設協会の東 憲太郎会長は「3回目の接種を待っているうちにクラスターが発生した施設もある。できるだけ早く接種できる体制をつくってほしい」と話していました。