マスク、3月13日から外しますか?
緩和で感染者どうなる?Q&A

2023年3月9日

「息苦しいし、早く外したい」
「しばらく様子を見て決めたい」

マスクの着用が3月13日から個人の判断に委ねられます。一方、3月13日を迎えたらどうしようかと考えている人も少なくないと思います。

国や専門家は、3月13日以降も着用したほうがいい場面があるとしています。

どんな時にマスク着用?

マスク緩和で今後の感染者数はどうなる?

Q&A形式で詳しくまとめました。

Q.マスク緩和で感染者どうなる?

新型コロナ対策としてのマスクの着用について、政府は3月13日から屋内・屋外を問わず「着用するかどうかは個人の判断が基本となる」としています。

マスクの緩和で着用する人の数が減ると、今後の感染者数の推移はどうなるのか。

名古屋工業大学の平田晃正教授のグループがAI=人工知能を使って「半数の人が日常的にマスクの着用を続けた場合」と「80%の人が着用をやめる場合」について試算しました。

試算では、さらに感染力の高い変異ウイルスが現れず、人出がコロナ前の水準まで緩やかに戻るといった想定でAIを使って東京都の1週間平均での1日当たりの感染者数を算出しました。

その結果、半数の人がマスクを着用し続けた場合、東京では感染者数が大型連休のあとで増えるものの5月中旬の時点で約5500人と試算され、当面、大規模な感染拡大は避けられるとしています。

一方で、80%の人が着用をやめると5月中旬の時点で感染者数は1日当たり約8600人になるという試算になりました。

いずれの場合もお盆休みのあとにも同じ程度まで増えるとみられると試算されたほか、ワクチンの追加接種がなければ免疫の効果が下がり、感染者数は年末にかけて1日に1万人を超える試算になったということです。

平田教授は「一定の人がマスクの着用を続ける場合、感染は拡大しにくいという試算結果になった。高齢者などリスクが高い人もいるので、配慮しながら生活することが大切だ」と話しています。

Q.どんな時は着用したほうがいい?

ポイントは、平田教授の話にもあったように「重症化リスクの高い人に感染を広げないこと」です。

厚生労働省は「以下のような場合には注意しましょう」として、着用が効果的な場面や着用を推奨する場面などについて考え方を示して、国民に呼びかけています。

下の写真は、厚生労働省がつくったパンフレットです。

ピンクの線で囲まれた部分で、マスクの着用が効果的な場面を紹介しています。

ここで示されているのは、次の1、2、3の場面についてです。

1 医療機関を受診する時
2 医療機関や高齢者施設などを訪問する時
3 通勤ラッシュ時など、混雑した電車やバスに乗車する時

1と2は、高齢者など重症化リスクの高い人が多く入院・生活する場所であることが理由です。

3は人が密集していることや、重症化リスクが高い人が乗り合わせている可能性もあるためです。

ただ、おおむね全員の着席が可能であるもの(新幹線・通勤ライナー・高速バス・貸切バス等)は除く、としています。

こちらは換気対策を取られていることが前提で、整然と座っている場面は、混雑には当たらないことが理由だということす。

このほか高齢者や、がんなどの基礎疾患、そして妊娠している女性など重症化リスクの高い人は、流行期に混雑した場所に行く時にマスクの着用が効果的だとしています。

一方、症状がある人や感染者本人、同居する家族に感染者がいる人は、周囲に感染を広げないため外出を控え、通院などでやむをえず外出する場合は人混みを避けマスクを着用するよう求めています。

そして、重症化リスクの高い人が多くいる医療機関や高齢者施設などの職員については勤務中のマスクの着用を推奨するとしています。

パンフレットの一番下の行には「本人の意思に反してマスクの着脱を強いることがないよう、個人の主体的な判断が尊重されるよう、ご配慮をお願いします」とあります。

コロナ禍の3年間、マスクの着用が普通になった今、「外したい」という人と、「外すのは不安」という人に大きく分かれていますが、厚生労働省は「着用したほうがいい場面を示しているので、参考にしてもらいながら、場面に応じて個人で判断してほしい」としています。

こうした内容は厚生労働省のホームページにも掲載されています。

Q.企業や事業者ではどんな対応?

企業などの事業者については「感染対策上の理由や業務内容などによっては利用者や従業員に対してマスクの着用を求めることは許容される」としていて、各業界団体に対して3月13日までに業種別のガイドラインの見直しと現場や利用者へ周知するよう呼びかけています。

内閣府によりますと、3月9日時点で195ある業種別ガイドラインのうち、バスなどの公共交通機関や、小売業界、ホテルなど62のガイドラインで見直しや周知が進められているということです。

各業界の状況について、3月7日のこちらの記事でも詳しくまとめています。

マスク着用 個人の判断に 各企業の対応は? ▷

Q.公共交通機関・航空機は?

航空機の中でのマスクの着用については、業界団体の「定期航空協会」が3月13日から『乗客や従業員、個人の判断に委ねる』としています。

政府は3月13日以降、おおむね全員の着席が可能な航空機や新幹線、高速バスなどではマスクを外すことを容認するとの考え方を示していて「定期航空協会」は、これを踏まえて判断したとしています。

そのうえで「これまで各社に対し、乗客などにマスクの着用を要請するよう求めていたガイドラインを改定するなど準備を進めるとともに、お客様に安心してご利用頂けるよう引き続き努めていきたい」としています。

Q.学校は?

文部科学省は、学校での教育活動では4月以降、着用を求めないことを基本とする方針を全国の教育委員会などに通知しています。

通知では4月以降の学校での教育活動について「マスクの着用を求めないことを基本とする」と明記していて、「教育活動」には体育を含めた授業全般や合唱、運動部の活動などが含まれるということです。

また卒業式についてはマスクを着用しないことを基本としますが、国歌や校歌の斉唱、複数の児童、生徒によるいわゆる「呼びかけ」などではマスクなどの対策をした上で実施するように求めています。

また来賓や保護者の参加人数について「感染対策上での制限は必要ない」としていて、そうした人たちにはマスクの着用を求め、座席間の距離を確保するということです。

あわせて、基礎疾患などさまざまな事情でマスクの着用を希望する児童生徒がいることなどから学校などがマスクの着脱を無理強いしないようにすることや、差別が起きないよう適切に指導を行うことを求めています。

Q.それぞれの職場ではどう判断すれば?

3月13日を前に、順天堂大学はオフィスでの感染対策を確認するためのチェックリストを公開し、それぞれの職場での対策に役立ててほしいとしています。

チェックリストは、感染制御が専門の順天堂大学の堀賢教授が作り、オフィスの管理と換気について求められる対策を確認できるようになっています。

このうちオフィスの管理の対策については、マスクの着用や体調不良の際に勤務しない場合の取り扱い、それに流行状況に応じたリモートワークのルールがあるかどうかなど、5つの項目を点数で評価します。

例えば、マスク着用については
▽ルールを設定していないと0点
▽会話や電話対応など声を発する場面で着用を推奨していれば1点
▽声をほとんど発しない場面で着用を免除していれば2点
▽逆に場面にかかわらず、一律にマスクを外すことや着用を求めていればマイナス2点
などとしていて、通常の業務を行う場合には5つの項目で合わせて5点以上だと良好と判定されるとしています。

これまでに行われてきた対策の何をやめて何を続けるか、現場での判断は難しいため、リストを作ったということです。

堀教授は「マスク着用の緩和や5類への移行が進むが、コロナが消えたわけではない。オフィス内の感染対策のよしあしを判断し、流行の波が大きくならないよう活用してもらいたい」と話しています。

Q.専門家はどう指摘?

専門家は、新型コロナウイルスの感染力や感染した場合に重症化する人がいるということは変わっておらず、マスクには一定の効果があるとしてその場に応じた着用を呼びかけています。

新型コロナウイルスは主に、感染者がせきやくしゃみ、会話などの際に排出する飛まつ、それに「エアロゾル」や「マイクロ飛まつ」と呼ばれるごく小さな飛まつを通じて感染が広がります。

厚生労働省の専門家会合のメンバーなどがまとめた資料ではマスクを着用するのは、
▽自分が感染しないこと、
それに新型コロナでは発症前の潜伏期間におよそ半数の感染が起き、症状が出ない人からも感染が広がりやすいことが知られているため、
▽会話やせきをする際に気づかないうちに他者に感染させないことが大きな目的だとしています。

マスクの着用で自分の感染を防ぐ効果について、各国の78件の研究を解析した結果では、
▽マスク着用者の1週間当たりの感染リスクは着用していない人に比べ0.84倍に下がり、
▽2週間当たりだと0.76倍に下がると推定されたとしています。

また、マスクの着用でまわりに感染を広げない効果について、各国の研究21件を解析した結果では、マスク着用がコミュニティ全体で推奨された場合は、新規感染者数や入院患者数、死者数を減少させる効果があることが示唆されたとしています。

さらに、専門家会合のメンバーなどがまとめた資料ではアメリカのハーバード大学の研究グループがマスクの効果について2022年、国際的な医学雑誌に発表した研究を引用しています。

この研究ではマスクの着用義務が解除された地区の学校と着用が続けられた地区の学校で子どもと教員の感染状況を比較していて、着用義務を解除した地区ではおよそ3か月半の間に感染したのは1000人当たり134.4人に上りましたが、着用を続けた地区では66.1人と少なくなっていてマスクの着用には感染者数を抑え学校の欠席日数を減らす効果があり、感染拡大の際には有効な手段だとしています。

厚生労働省の専門家会合のメンバーらが3月8日の会合で示した見解では、マスクについて「その場に応じた着用」を呼びかけていて、地域の感染状況や周囲の混雑の状況、空間の広さ、その場にいる時間、それに目の前にいる人の重症化リスクなどを考慮して判断し、外出時はマスクを持ち歩き、着用が呼びかけられる場面では着けるとしています。

政府の分科会のメンバーで東邦大学の舘田一博教授は「マスクの効果が無くなったわけではなく、感染を防ぐ一定の効果があることが科学的にも分かっている。特に重症化リスクの高い高齢者や持病のある人と密な環境でたまたま隣り合ってしまうような、混んでいる電車などの場面や医療機関、高齢者施設ではしばらくマスクを着用しながら自分や相手を感染から守り感染したくない人が不安にならないようなマスクの使い方を考えるべきではないか」としています。

Q.重症化リスク高い人が暮らす場所は、今後どうなっていく?

重症化リスクの高い高齢者が暮らす高齢者施設からは今後へ向けた不安の声や、対応をどう見直していけるか模索する声もあがっています。

千葉県八千代市の特別養護老人ホームの津川康二施設長は「今後はマスクしない人、する人と分かれるので、感染が広がる危険性についてリスクが高まることは現実かと思います」と危機感を示しました。

施設ではこれまで、介護職員などに対しては室内外問わずマスクの着用をお願いしていて、旅行についても報告義務を設けていました。

一方で、介護職員一人一人も「社会の一員」として本来ならマスクを外せるはずの人の1人だとして「3年間さまざまな制限を強いてきた中で、感染対策のノウハウを積み上げられたことは必ず生かせると思っています。インフルエンザなどコロナ以外でもこれまでも感染対策はやってきたことです。ウイルスに適切に怖がりながらも、私たち介護職員もコロナ以前の生活に戻さなければ、高齢者への本来の介護の姿に戻らないのではないかと思っています。今後徐々にですが、施設の職員も仕事を離れた日常生活の場ではマスクを外すことや自由に旅行するということを考えていけたらと思います」としています。

そのうえで津川施設長は「いつまでたっても外の世界を遮断するような対応を取ることが本当に正しいのか、入所者や家族と話しながらですが、社会と共存できるよう取り組むことも必要です。3年前までは受け入れていた、中高校生の施設訪問や社会福祉活動の受け入れを再開するなど、徐々にでもお互い寄り添うよう考えることが今後、施設に求められることだと思います」と話していました。

Q.医療機関や高齢者施設での対策やマスク、専門家は

こうした点について、3月8日の専門家会合では会合のメンバーらがまとめた新型コロナの5類への移行にあわせた医療機関や高齢者施設での感染対策についての新たな考え方を示した文書が提出されました。

文書では、新型コロナが5類に移行しても、流行が繰り返し起きることが想定されるとして、病気の人や高齢者など重症化リスクの高い人が集まる医療機関や高齢者施設では、施設内で感染が広がらないよう感染対策を続けることが求められるとした上で、必要とされる対策を一問一答の形式で示しています。

このうちマスクの必要性については、施設の職員も、利用者も日常的にマスクを着用することが望ましいとする一方、個室や、個人のベッドの上などではマスクを外して過ごすこともできるとしています。

また、訪問者との面会については、面会を制限することで患者や入居者の体や心などが衰えてしまう可能性があると指摘し、家族などの訪問にあたっては発熱や咳などの症状がないことを確認したりマスクを着用して決められた場所で面会したりといった感染対策をとった上で、過度な制限をかけないよう求めています。

また、医療や介護現場のスタッフが旅行や外食を制限する必要があるかどうかについては、日常の感染リスクは家庭内を含め多様であることから「制限すべきではない」としています。

そして、
▽感染が疑われる症状があれば仕事を休むこと、
▽業務中でも疑わしいと感じたときは現場を離れ、症状と体温を確認すること、
▽症状が続く間はたとえ検査が陰性でも仕事を休むべきだとしています。

このほか文書では、
▽施設内での換気の方法、
▽感染者の診療やケアを行う際の対策、
▽感染者が確認された場合に周囲の患者や入居者の検査や、隔離などのゾーニングをどの程度行うべきか、などといった対策について、それぞれの考え方や具体策を含めて整理しています。

文書をまとめた1人で専門家会合の脇田隆字座長は「文書は現場で疑問が生じやすい場面を想定して作成した。すぐに実行できる感染対策もあるので、今後も対策を継続するための指針として活用してほしい」と話しています。