屋外のマスク つける?つけない?

2022年11月1日

外出する際、マスクをつけますか、つけませんか。政府は屋外ではマスクは原則不要としていて、そのメッセージを伝えようと、岸田総理大臣みずからPRするような動きも出始めています。しかし、街をみれば、多くの人はマスクをつけたまま。みなさんはなぜ屋外でマスクをつけているのでしょうか?
(和歌山放送局 記者 伊藤敬一郎 大阪放送局 記者 北森ひかり)

岸田首相もマスクを外す

10月9日、三重県鈴鹿市の鈴鹿サーキットで開催されたF1日本グランプリを訪れた岸田総理大臣は、一時マスクを外して視察を行いました。

マスクの着用について、政府は、
▽屋外では原則不要
▽屋内でも2メートルを目安に周りとの距離がとれ、会話をほとんど行わない場合には必要ない
などとする方針を示しています。

2022年5月に示されたものですが、いまだに十分な理解が得られていないとして、国としてもPRしています。

この方針について、和歌山市の尾花市長も記者会見で、「マスクの着用で混乱しているというか、非常に紛らわしい状況で、ルールに基づいて着用していない場合も、白い目で見られる感じもある」と述べ、感染リスクが低い場所ではマスクを外してもいい場合があることを、改めて呼びかけていく考えを示しました。

あなたはなぜマスクを?

政府や自治体の呼びかけは、市民に届いているのでしょうか。

屋外でのマスクの着用について、和歌山市内で聞いてみました。

10代 女性
「感染が怖いので、外すことができない」

60代 男性
「屋外だととっています。息苦しいし、せっかくこんなにいい季節なので」

30人に尋ねたところ、
▼「着用する」が18人
▼「人が多い場合はするなど使い分けている」が4人
▼「着用しない」が8人
という結果でした。

理由もさまざまでしたが、感染対策以外にも「周りの目が気になって外せない」という声が複数ありました。

40代 男性
「みんなの目が気になるところもあるので。みんなつけている中、自分だけつけなかったら、違和感があるというか。たぶん今外してたら、みんなに見られると思うので、ちょっと気になる」

30代 女性
「周りに人いたらするって感じ。何か申し訳ないんで」

20代 女性
「してる人が多い中でしないのは、逆に気になる。コロナだからするのではなくて、みんなしているから」

よくわかります。つけなくてもいい場面だとわかっていても外せない。

周りがみんなマスクをしていると、外してもいいのか不安になることもありますよね…。

公共施設“呼びかけられない”

取材を進めると、和歌山市内の公共施設では、屋外でのマスクの対応について、あえて呼びかけをしないところもあることがわかりました。

和歌山市にある道の駅「四季の郷公園」には、遊具のある広場や、地元の野菜などを販売する市場、それに食堂があり、家族連れなどでにぎわう人気の観光スポットです。

公園では、屋内の施設については、マスクの着用を県が作ったポスターなどで呼びかけています。

一方、屋外での対応については、あえて呼びかけはしていないといいます。

道の駅 四季の郷公園 李野高康 副駅長
「屋外についてはお客様に判断をお任せしている状況です。これから第8波も来る可能性がありますし、こちらから安全なので皆さん外してくださいと呼びかけるのは、ちょっと難しいと感じます。呼びかけるために看板を立てたとして、感染者が出たとなると、やはりわれわれの責任も問われかねないですし…」

県に問い合わせると、ホームページやTwitterなどのSNSに政府の方針を掲載しているものの、各施設でどう呼びかけるかは任せているということです。

県として、マスクを外してもよい場面があることについての積極的な呼びかけはしないということでした。

なぜ海外と違うのか?

新型コロナの感染拡大が始まって3年がたとうとしています。

海外では、ノーマスクで観光やスポーツ観戦を楽しむ人たちの様子がメディアで伝えられることも増えてきました。

私たちは、この先マスクとどうつきあっていけばよいのでしょうか。

コロナ禍における人々の行動について研究している専門家は、マスクの着用をどう進めてきたか、それぞれの国の方針の違いが影響している可能性があると指摘しています。

九州工業大学 佐藤直樹名誉教授
「海外にはマスクの着用を法律やルールで義務化するなどして進めてきた国がある一方、日本では要請が中心で、強制力のあるルールを使いませんでした。そうした中でも、多くの人がマスクを着用したのは、同調圧力によるところが大きいと感じます。マスクをしないのは人に迷惑かける行為とされ、世間の目が圧力をかけました。それが法律と同じくらいの強制力を持ち、マスクの着用を浸透させたのです。そのため、海外では定めた義務を撤廃すればマスクは外せるというメッセージが伝わりますが、日本では世間の目が変わらなければ外せない。今は、こういう状態にあると思います」

こう分析したうえで、佐藤名誉教授は、政府や自治体の情報発信が不十分だと指摘します。

「国のトップからは、屋外でマスクを外してもよいということについて、はっきりとしたメッセージが伝わってきません。岸田総理自身が記者会見を開き、科学的根拠を用いて強いメッセージを出すなどしないと、なかなか事態は変わらないのではないでしょうか」

外すとき注意すること 感染対策は緩めずに

マスクを外したい人が外しやすい環境を整える一方、感染対策の手は緩めないようにしなければいけません。

マスクを外すときにはどんなことに注意が必要か、感染症が専門の和歌山県立医科大学の小泉祐介教授に聞きました。

小泉教授
「政府が示した方針のとおり、屋外で、人との距離がある状態であれば、感染のリスクはほぼなく、着用しなくても問題ありません。気をつけなければならないのは マスクを外したまま行動していると、着用しなければならない場面でつい忘れてしまうことです。会話するときはつけるなど、うまく切り替える必要があります。新型コロナの第8波が来ることはおそらく間違いありません。感染する可能性のある行動をするときにはしっかりとマスクしておかないと、感染したり、ほかの人にうつしたりしてしまいます。そして、メッセージの出し方も注意が必要です。マスクをしなくていいということだけが伝わると、コロナの感染拡大はもう終わったと誤解を与えるかもしれない。コロナはまだ終わっていないので、必要なときには必ず着用してほしいと思います」

つける人も つけない人も

10月11日からは新型コロナウイルスの水際対策が大幅に緩和され、ツアー以外の個人の外国人旅行者の入国もおよそ2年半ぶりに解禁されました。

社会活動は少しずつ、コロナ禍の前に戻ろうとしています。

一方で、この冬は新型コロナの第8波とインフルエンザの同時流行が懸念され、マスクとは今後もうまくつきあっていく必要があります。

いずれにしても、着用の必要、不必要の判断は科学的に。

そのうえで、マスクをつける人、つけない人、それぞれの考えを尊重できる社会になるよう、国や自治体にはより丁寧な情報発信を求めたいと思います。