運動中の子どもの体調 例年以上に注意を(2020/9/20)
2020年9月20日
新学期になり、多くの学校で、自粛していた部活動が再開しています。ことしは、新型コロナの影響で運動できない期間が長く続いたこともあり、専門家は、例年以上に運動中の子どもたちの熱中症に注意してほしいと呼びかけています。また、過去に熱中症で子どもを失った親も、部活動などの指導者に、子どもたちが体調不良を訴えやすい雰囲気を作ってほしいと呼びかけています。
専門家「子どもの状態をよく見て対応を」
熱中症に詳しい早稲田大学人間科学学術院の永島計教授は「大人と違って子どもは発汗による体温調節がうまくできないため、より注意が必要だ」といいます。
永島教授は、「休憩や水分補給を呼びかけるのは最低ライン。子どもの状態をよく見て声を聞きながら対応することが必要だ。気温や湿度、それに日射などを数値化した暑さ指数を活用し、運動を行うかや、運動メニューを決める際の参考にしてほしい。ただ、暑さ指数は成人をもとに作られていて、子どもや高齢者にはより細やかな注意が必要だ」としています。
その上で「例年であれば9月は体が暑さに慣れている時期だが、新型コロナの影響で運動できない期間が長く続いた。これからの時期に指導者が張り切って負荷の強い運動をすると、取り返しのつかない熱中症になるリスクがあることを頭に入れ、気をつけてほしい」と話しています。
熱中症で子どもを亡くした母親「体調不良を訴えやすい雰囲気を」
東京・江戸川区の草野とも子さんは、17年前、当時、高校1年生だった長女の恵さん(当時15歳)をバレーボール部の合宿中に亡くしました。
“第2の恵”をみたくないと、熱中症の恐ろしさについて、高校や大学で講演を続けています。
9月に入って自粛していた部活動が再開され、子どもたちが暑い中、無理をして運動をすることがないか、危惧しています。
草野さんは、「秋の大会に間に合わせようと無理をして急に運動することが心配です。子どもたちが体調不良を訴えることのできる雰囲気づくりを指導者は行ってほしい。湿度や気温によっては激しい運動はせず、筋力をつけるだけにするなど、“命を守る指導”をしてほしい」と話しています。
2歳未満にマスク着用させないで 厚労省が呼びかけ(8/31)
2020年8月31日
新型コロナウイルスの対策で子どもがマスクを着用することについて、厚生労働省は2歳未満では窒息や熱中症のリスクが高まるとして、着用させないよう呼びかけています。
厚生労働省は8月28日、小学生未満の子どものマスクの着用について見解をまとめ、ホームページで公表しました。
それによりますと、マスクを着用させるときは保護者や周りの大人が体調に十分注意し、体調が悪い場合などは無理に着用させる必要はないとしています。
そのうえで、特に2歳未満の子どもは息苦しさを訴えたり、自力でマスクを外したりするのが難しく、窒息や熱中症のリスクが高まるとして、着用させないよう呼びかけています。
子どものマスクの着用をめぐっては、2020年5月と6月に小児科の学会や団体が2歳未満の着用をやめるよう相次いで呼びかけたほか、8月にはWHO=世界保健機関も5歳以下の着用は必ずしも必要ないとする見解を示しています。
保育所や学校での対応は
子どものマスクの着用をめぐっては、保育所や学校でも熱中症などを避けるため、柔軟に対応するよう国が求めています。
このうち保育所について、厚生労働省は子どもによって発達の状況が異なるため、「一律にマスクを着用することは求めない」としています。
そのうえで、特に低年齢の子どもはマスクによって熱がこもるため、保護者の希望などで着用する場合は、息苦しさを感じていないか十分注意するよう求めています。
また、学校に対しては文部科学省が「命に関わる危険がある」として、気温や湿度が高い日や体育の授業では、マスクを外すよう求めています。
また、「身体的距離が十分に確保できる場合はマスクの着用は必要ない」として、登下校など屋外で人との距離が取れるときには、マスクを外すよう子どもを指導してほしいとしています。
マスク内の口元の温度 ない場合より3度高く(6/9)
2020年6月9日
マスクを着けると顔の温度がどう変化するのか、サーモグラフィーを使って実際に測ってみました。
正午前に渋谷の街中で測定したところ、マスクをしていない状態では口元の温度は36度前後になっていました。
マスクを着けると、温度はすぐに3度ほど上がり39度から40度を示しました。マスクをしたまま5分ほどたつと、マスクの内側に熱がこもって、口の周りに汗をかき始めるのがわかりました。マスクを着用していない時に比べてかなり暑さを感じ、時間がたつに連れて息苦しい感覚もありました。
専門家「マスクで熱中症リスク高まる」
熱中症に詳しい日本医科大学大学院の横堀將司教授は「マスクによって一概に熱中症になりやすいということではないが、マスクを着けると呼吸がしにくくなり、心拍数や呼吸数が1割ほど増えるというデータがある。そこに運動や気温の急激な上昇が加わると、熱中症になるリスクが高まる」と指摘しています。
そのうえで「マスクで飛沫感染を防ぐことは重要だが、高齢者や1人暮らしの人は特に熱中症に注意が必要だ。屋外であれば木陰などの人が少ない場所でマスクを外して休むことも心がけ、さらに汗で湿ると通気性が悪くなるので、マスクを適度に取り替えることもしてほしい」と話しています。
「新しい生活様式」における熱中症予防行動のポイント(5/29)
2020年5月29日
厚生労働省は、新型コロナウイルスの感染予防が必要なこの夏は例年より一層、熱中症に注意する必要があるとして、「新しい生活様式」を踏まえた熱中症を防ぐためのポイントをまとめています。
その主な内容です。
マスクの着用
マスクは飛沫の拡散予防に有効だが、着用していない場合と比べると心拍数や呼吸数、血中二酸化炭素濃度、体感温度が上昇するなど身体に負担がかかることがある。
高温や多湿といった環境下でのマスク着用は熱中症のリスクが高くなるおそれがあるので、屋外で人と十分な距離(少なくとも2m以上)が確保できる場合にはマスクをはずすようにする。
マスクを着用する場合には強い負荷の作業や運動は避け、のどが渇いていなくてもこまめに水分補給を心がける。
また、周囲の人との距離を十分にとれる場所で、マスクを一時的にはずして休憩することも必要。
エアコンの使用
熱中症予防のためにはエアコンの活用が有効。ただし、一般的な家庭用エアコンは空気を循環させるだけで換気はしていない。
新型コロナウイルス対策のためには冷房時でも窓を開けたり換気扇を使ったりして換気を行う必要がある。この場合、室内温度が高くなりがちなので、エアコンの温度設定を下げるなどの調整をする。
涼しい場所への移動
少しでも体調に異変を感じたら速やかに涼しい場所に移動することが熱中症予防に有効。人数制限等により屋内の店舗等にすぐに入ることができない場合は屋外でも日陰や風通しのよい場所に移動する。
日頃の健康管理
毎朝など決まった時間の体温測定、健康チェックは熱中症予防にも有効。平熱を知っておくことで発熱に早く気づくこともできる。日頃から自分の身体を知り、健康管理を充実させ、体調が悪いと感じたら無理せず自宅で静養する。
熱中症予防へ “今から体を暑さに慣らして” 軽い運動や散歩を(6/2)
2020年6月2日
新型コロナウイルスの感染拡大を防止するためマスクの着用が求められる中、懸念されているのが熱中症です。専門の医師の学会が緊急の提言をまとめ、本格的な夏を迎える前の今のうちから体を暑さに慣らしておくよう呼びかけています。
新型コロナウイルスの感染を防ぐ「新しい生活様式」の一環としてマスクの着用が求められる中、日本救急医学会など専門の医師の4つの学会が熱中症を予防するための緊急の提言をまとめました。
提言では、マスクを着用していると呼吸の頻度や心拍数、それに体感温度が上昇し体に負担がかかるとして、人と距離をとったうえで適宜マスクを外して休憩し、こまめに水分をとるよう呼びかけています。
また、ウイルスへの感染を防ぐため室内を換気する際は気温が上がらないようカーテンなどで直射日光を避け、エアコンをこまめに使ってほしいとしています。
さらに、本格的な夏を迎える前の今の時期のうちに暑さに体を慣らしておくため、家の中で座ったまま過ごさず足踏みや体操など軽い運動をしたり、人ごみを避けて散歩したりすることなどを呼びかけています。
特に一人暮らしの高齢者などは屋内で熱中症になることが多いため、周囲の人が頻繁に声をかけてほしいとしています。
日本救急医学会の嶋津岳士代表理事は「ことしは熱中症で発熱した患者と新型コロナウイルスの患者とが区別できず、受け入れの搬送先が見つからず治療が遅れてしまうおそれもあるので、ぜひ対策を心がけてほしい」と話していました。
熱中症で医療崩壊の危機も(5/12)
2020年5月12日
「このまま熱中症シーズンを迎えたら、日本の医療現場は崩壊します!」
5月1日、このような見出しで熱中症対策への危機感を伝える緊急提言を発表したのは医療や福祉の専門家13人で作る「教えて!『かくれ脱水』委員会」です。
総務省消防庁によると、去年、5月から9月までに熱中症で病院に搬送された人は全国で7万1317人。
委員会は「新型コロナウイルスへの対応でキャパシティを超えつつある医療機関に例年通りの熱中症患者が搬送されたら、日本の医療機関の多くが機能しなくなるリスクがある」として、熱中症対策の徹底を強く呼びかけました。
マスクと外出自粛 熱中症リスク増加
提言でまず指摘しているのは、ことしはマスクの着用や外出の自粛で、熱中症のリスクが高まっているということです。外出の自粛で運動不足になると汗をかいて体温を下げる体の準備が十分にできないほか、水分を貯める機能のある筋肉が減り脱水状態になりやすいからだといいます。
さらに、マスクをつけていると体内に熱がこもりやすく、のどの渇きも感じづらくなり、知らないうちに脱水が進んで熱中症になるリスクがあるとしています。
熱中症予防 7つのポイント
提言では予防のための7つのポイントを紹介しています。
①3食をきちんと食べる
②のどが渇いたなと感じ始めたら水分摂取(多量のカフェイン摂取を控える)
③経口補水液を家族1人2本×3日分常備
④クーラーをすぐつけられるよう 調整し、暑いと感じる場所にいない
⑤換気をこまめにし、湿度も高くならないよう注意(環境省ウェブサイトで毎日発表される「暑さ指数」もチェック)
⑥快適な環境でよく睡眠をとる(疲労も熱中症リスク)
⑦人混みを避けた散歩や室内での軽い運動を行う
「経口補水液」がおすすめ
水分摂取で勧めているのがポイント③でも紹介されている「経口補水液」。
ドラッグストアなどで販売されています。のどがあまり乾かない人や、トイレに頻繁に行くのを気にして水分摂取を避けてしまう人もいるかもしれませんが、経口補水液は少量で効率よく、塩分補給ができます。
食欲がなく3食きちんと食べられないという状況でも、1日500ミリリットルの経口補水液を1時間くらいかけてゆっくり1本飲むことなどで、水分と塩分を補うことができるといいます。
市販のものが近くで手に入らない場合のために、「教えて!『かくれ脱水』委員会」は、ホームページで、家庭向けに経口補水液の作り方も紹介しています。
経口補水液の作り方 ※NHKのサイトを離れます
医療と自分自身を守るために
緊急提言をまとめた委員会の副委員長 谷口英喜医師は「発熱やけん怠感などの熱中症の症状は、新型コロナウイルスの軽度の症状によく似ているため救急搬送の際に感染予防の対策が必要になるなど医療体制にかかる負荷も非常に大きい。熱中症は十分に予防ができる病気なので医療を守り、自分自身を守るために、これからの季節はぜひ予防を徹底してもらいたいと思います」と呼びかけています。
コロナウイルスと夏 効果的な換気方法は?(5/12)
2020年5月12日
新型コロナウイルスに加え、暑さも気になる季節になりました。大手の建材メーカーや空調機器メーカーは、効果的な換気方法を紹介し、感染拡大や熱中症の予防に役立ててほしいとしています。
ポイントは「窓の開け方」
大手建材メーカーの「YKK AP」は新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、窓を活用した効果的な換気方法についてホームページなどで紹介しています。それによりますと「開ける窓は1か所より2か所」で、「2方向の窓を開ける」こと、「部屋の対角線で通風するとさらに効果的」だということです。
引き違い窓は2か所開ける
ただ、住宅の密集地のマンションなど窓が1か所しかないというケースもあります。そんなときは、室内ドアやほかの部屋の窓を開けて風の通り道を作ったり、扇風機などで空気をかくはんしたりすれば、換気ができるということです。
特に横にスライドする引き違い窓では窓を真ん中に寄せて、両側を開けるようにすれば、2か所から空気を取り込めて効果的だということです。
“ほとんどのエアコンは換気できない”
一方、暑くなるとエアコンを適切に使う必要がありますが、空調機器大手の「ダイキン工業」によりますと、ほとんどのエアコンは室内の空気を循環するだけで換気はできません。
このためエアコンの使用時にも時々、窓を開けるなどして換気するよう呼びかけているといいます。
消費電力を抑えて換気するには
エアコン使用中に窓を開けるのは電気代がもったいないと思う人もいるかもしれません。
担当者は消費電力を抑えながら換気する方法について教えてくれました。
それによりますと、エアコンで消費電力が多くなるのは電源を入れた時なので、使用中のエアコンは電源を切らず、つけたままの状態で窓を開けること。
また、外気が入って部屋の温度が上がるとエアコンの消費電力が増えるため、換気の前には温度設定を少し高くしてから窓を開けることが大切だということです。
「YKK AP」と「ダイキン工業」の担当者は、上手に換気して、感染拡大や熱中症の予防に役立ててほしいと話しています。
「経験したことない夏に」熱中症 例年以上の備えを(5/11)
2020年5月11日
帝京大学医学部附属病院 高度救命救急センターの三宅康史センター長もことしは外出の機会が減っているため、熱中症になるリスクが高まる懸念があるといいます。
通常、体から熱を逃がすには汗をかく必要がありますが、上手に汗をかくには、暑さに徐々に慣れていく「暑熱順化」の必要があるということです。
例年は初夏の時期から少しずつ暑さに慣れて、汗をかきやすいいわば「夏の体」に変わるはずが、ことしは外出の機会が減っているため「暑熱順化」進まないというのです。
適度な運動・風呂も活用
自宅で「暑熱順化」を進める方法もあります。適度に運動をしたり、時々お風呂につかったりして汗をかくことで、暑さに慣れることも有効だということです。ただ、その際は水分補給を忘れないようにして、無理のない範囲で行ってください。
自宅でも高齢者など注意
一方で、暑い時期になると熱中症の搬送が最も多くなるのも自宅です。暑いときは適切にエアコンを使い、水分補給を心がけてください。
特に外出自粛が広がる中、一人暮らしの高齢者などは人との交流が減り、熱中症への注意喚起をうける機会も減ります。暑い日には離れて住む家族や近所の人が電話をかけて、体調は大丈夫か、適切にエアコンを使っているかなど、確認することも大切だということです。
マスクによる暑さにも注意
マスクをして買い物など外出する際にも注意が必要です。吸い込む空気が暖かくなり、体から熱が逃げにくくなるほか、マスクをして呼吸することで多くのエネルギーを使い、体温が高くなりやすいからです。
外出している際にだるさや暑さを感じたら、日陰など涼しいところで休憩する、水分をしっかりとって体を冷ますことなどを心がけてほしいとしています。
経験のない夏 いつも以上に注意を
三宅センター長は「新型コロナウイルスと熱中症という両方の対策せざるをえない、誰も経験したことのない夏になる。どんな影響が出るかデータがないのが現状であり、一人一人が熱中症に対していつも以上に注意をして、慎重になることが大事だと思う」と話しています。
家庭内での感染対策 有効な「換気」と「エリア分け」は?(6/9)
2020年6月9日
新型コロナウイルスの第2波が懸念されるなか、家庭内での感染対策はどうしたらよいのでしょうか。今回は、予防につながる有効な「換気」のしかた、そしてもし家庭内で感染者が出た場合や疑いがある時に「家庭内での隔離」について、簡単で有効な方法を専門家に聞きました。
上手な換気のポイントは
建物の空調に詳しい日本建築学会に所属する東京工芸大学の山本佳嗣准教授は、上手な換気のポイントは窓や扉を開けて空気の流れをつくることだといいます。できれば1面の窓だけでなく、別の面の窓や扉も同時に空けて、外気を取り入れる「給気」と空気を外に出す「排気」のルートをつくります。
窓が1つしかない時は
しかし、部屋に窓が1つしかない場合もあります。この時に有効なのが扇風機です。扇風機を窓の近くに置き、窓のほうに向けて回します。そうすると、部屋の空気が扇風機によって窓の外に排気されやすくなります。この方法だと、窓の上のほうから外の空気が部屋の中に入ってくる風の流れも発生するといいます。扇風機を使うと窓が1つでも、部屋の換気を進めることができます。
「エアコン」と「換気」の両立を
この時期、気になるのがエアコンを使うときの換気だと思います。そもそも、ほとんどの家庭用エアコンは室内の空気を循環させるだけで換気の働きはありません。また多くの人はエアコンを使う時は部屋の窓を閉じていると思います。暑い季節が近づき、エアコンを使う場合の換気について山本准教授は「両立」を提言しています。
▽まず夏本番前の5月や6月の中間期は、エアコンを使う場合、部屋があまり暑くならない程度に窓を開けて外気を取り入れることを勧めています。暑くなりすぎたと感じた時は、一時的に窓を閉めたり、開口部を狭くしたりして部屋を冷やしてください。室温は体感で調整するといいといいます。
▽熱中症のリスクが高まる真夏の時期は、窓を開けて自然に換気するよりも、トイレや台所についている換気扇など機械による換気を積極的に行いながら、同時にエアコンを使う方法を勧めています。
このとき、窓は閉めていてもよいということです。家は換気扇を使うと必ずどこからか空気が入るように設計されていて、自然に空気の流れが発生するようになっているといいます。
自宅内の「エリア分け」対策
続いて、もし家族の誰かに感染の疑いがでた場合や実際に感染が確認された場合にはどうしたらいいのでしょうか。状況によっては自宅療養になることもあります。このときに有効になるのが、自宅内の「エリア分け」の対策です。日本環境感染学会の専門家もその重要性を指摘しています。
国際医療福祉大学 松本哲哉教授
「自宅に感染者がいる場合、物理的に離れることと、接触する可能性がある部分をきちんと消毒することがまず大切です。そのうえで基本的にはどこか個室を与えて、そこから出ない対応が大事になってきます。新型コロナウイルスは、接触か飛まつ感染のカテゴリーだが、エアロゾルなどの表現で、ウイルスが飛まつの範囲を超えて広範囲に広がっていくのではないかとも指摘されています。感染者がいる部屋の空気が別の家族がいる部屋に流れるのは、リスクを高めることになるので、注意する必要があります」。
では、家庭内でどんなエリア分けの方法があるのか。山本准教授によりますと空間を遮断し、隔離した形にする簡単な方法の1つがシートをつかう方法です。自宅で実験をしてもらいました。使ったのは透明のシートと養生テープ。廊下に透明のシートを取り付けて、テープで隙間をふさぎます。感染者の部屋と家族のゾーンを分離して、基本的にはほかの人が入らないようにします。
2階建ての住宅などトイレが2つあるような構造の家では、できれば1つのトイレを感染者用に専用とします。そのうえで、トイレの換気扇を使うとさらに効果的に隔離の形ができるといいます。
シートで仕切ったうえでトイレの換気扇を回せば、部屋の外に比べて部屋の気圧が低くなる「陰圧」の状態となります。陰圧にすることで、部屋に向かって空気の流れが発生し、逆に感染者のいる部屋の空気が仕切りの外へ漏れ出しにくくなります。山本准教授の自宅の実験では、仕切りの内側と外側の圧力の数値の差は病院の隔離病棟で求められる基準の-2.5パスカルに近い値になりました。
しかし、トイレを感染者の専用にできる家は限られています。山本准教授は、そうした場合、ホームセンターなどで売っている「パイプファン」と呼ばれる小型の換気扇を使う方法があるとアドバイスします。部屋の給気口にこのファンを取り付けます。
そして、廊下に先ほど説明したように透明のシートを取り付けたうえで、部屋のドアの隙間をテープなどでしっかりと塞ぎます。ファンを回すと、部屋の中の空気が排出され、陰圧になるのです。このとき、透明のシートが部屋の方向に膨らんでいれば、陰圧になっている証拠といいます。もちろん夏場はエアコンを効かせながら、換気量を確実に増やすのにも有効です。ただし、この方法は給気口の本来の使い方ではないため、体調が回復したあとは通常の状態に戻してほしいということです。
東京工芸大学 山本佳嗣准教授
「基本的には、政府の方針のとおり、軽症者でも陽性になった場合はホテルなどの宿泊療養が基本だがどうしても自宅療養を選ばないといけないケースもあります。そうした際にこのような陰圧とか換気の工夫によって、家族間の感染リスクをなるべく減らすことが重要です。お互いに予防措置をしていることが安心感につながり、ストレスを少しでも緩和することができると思います」。