Go Toトラベル
東京発着の旅行商品 販売開始で各地の反応は

2020年9月18日

観光需要の喚起策「Go Toトラベル」で、10月から割り引きの対象に加わる東京発着の旅行商品の販売が9月18日から始まりました。
各地の反応です。

高知の観光施設では期待の声

来場者が減少している高知市の観光施設では、期待の声が聞かれました。

このうち、高知県の郷土料理や地酒を楽しめる高知市の「ひろめ市場」では、新型コロナウイルスの感染を防ぐため、来場する際にマスクを着けてもらい、テーブルの利用人数を制限するなどの対策をとって営業しています。

運営会社によりますと、先月の入場者は、「よさこい祭り」が中止されたこともあり、去年の同じ月の4割余りに減少し、土産物店は売り上げが2割程度にまで落ち込んだところもあるということです。

東京発着の旅行が対象に加わることについて、20年余りにわたって土産物店を営む西本信行さん(73)は「店内に在庫の段ボールが積まれ、賞味期限が切れた商品は処分する状況が続いています。コロナの感染防止のためには複雑な気持ちもありますが、かなり期待しています」と話していました。

ひろめ市場の運営会社の百田昭夫施設部長は「多くの人口を抱える東京から観光客が来ることは喜ばしいです。お客様とともにしっかりと感染対策して、高知を楽しんでもらいたい」と話していました。

札幌のホテルでも

札幌市内のホテルでは、旅行客が増えることに期待する一方で、感染対策をさらに強化することも検討しています。

札幌市中央区のホテルでは、10月から、シングルの部屋に宿泊する場合、土曜日や祝日の前日を除いて、1泊当たりの割り引き後の価格が2200円余りとなる格安プランの販売を始めました。

このホテルでは、これまでも「Go Toトラベル」の商品を低価格で販売してきましたが、8月の稼働率は、50%ほどにとどまっています。

このため、東京発着の旅行にも対象が拡大すれば、宿泊客の増加につながるとして期待を寄せています。

ホテルでは、これまで宿泊客に健康状態を調べるシートへの記入を求めるほか、レストランの座席の数も半分に減らしたり、希望者は部屋で食事ができたりするなどの感染対策に取り組んできましたが、宿泊客が増えることを見込み、さらなる対策の強化を検討するということです。

「ビジネスインノルテ」の佐々木智保子支配人は「少しでも宿泊客が戻ってくるのなら、大きなことだと思います。感染対策を強化しながらおもてなしの気持ちで迎えたいです」と話していました。

鹿児島県内の温泉旅館では

鹿児島県内の温泉旅館からは、政府の観光需要の喚起策「Go Toトラベル」で、10月1日から割り引きの対象に東京が加わる方針を受けて、期待が高まっています。

温泉の街として知られる指宿市の「指宿白水館」では、ことし7月に営業を再開して以降徐々に予約が増え、9月19日からの4連休はほぼ平年並みの予約が入っているということです。

一方で、東京などの首都圏からの予約は、お盆や正月などの行楽シーズンでは例年、全体の4割ほどを占めるのに対し今のところ2割ほどにとどまっているということです。

下竹原啓高社長は「これまで東京の人たちは、Go Toトラベルの対象に東京が加わるのを待っていたと思う。一方で、あすからの4連休は東京からの予約が少ない中でも多くの予約が入っているので、今回、キャンペーンの対象に東京が加わったことで、今後はさらに予約が増えるのではないかと期待している」と話していました。

指宿白水館では、宿泊料金を割り引きしたり、館内で使用できる商品券を配布するなどして、県外客のさらなる取り込みを目指すことにしています。

工夫凝らし観光客を呼び込む動きも

工夫を凝らしてなんとか観光客を呼び込もうという動きもあります。

福岡市中央区にある旅行会社は、春以降、団体旅行を取りやめていました。

9月19日からの4連休に合わせておよそ半年ぶりに団体客のツアーを再開しました。

この旅行会社では、社員旅行など企業向けのツアーに力を入れてきましたが、大きな回復の動きが見えない中、一般の観光客を新たなターゲットにすることにしました。

ツアーの再開に当たって重視したのは「マイクロツーリズム」です。

行き先は長崎の五島列島。同じ九州各県からの観光客をターゲットにしています。

感染リスクを抑えることができる短距離の旅行を売りにしたのです。

その結果、この4連休は25人の予約があり、ねらいは当たったと受け止めています。

「ティーアイプロジェクト」の石川哲也さんは「やっとこういう時期が来ました。お客さんの期待感も大きく、安全・安心に気をつけ感染対策に留意しながら旅行を楽しんでもらいたい」と話していました。

一方、このツアーを受け入れる長崎県五島市のホテルでも、同様のマイクロツーリズムをはじめ、九州など近場からの観光客の回復が早いということです。

以前は、去年の同じ時期と比べて5割程度まで宿泊客が落ち込んでいましたが、9月に入ってからは8割程度まで予約が回復し、この4連休は、満室となる日もあるということです。

「GOTO TSUBAKI HOTEL」の奥田重久支配人は「去年6月にオープンし、コロナに見舞われて予定が大きく狂いましたが、4連休では本当に久しぶりに満室の日が出るなど、ようやく通常に戻る感じがします。ホテルとしてしっかり感染対策をして迎えたい」と話しています。

会員客に案内メール送付

静岡県伊東市内のホテルでは、都内に住む会員の客に案内のメールを送るなど対応に追われました。

このうち、伊東市内の「ホテルニュー岡部」では従業員が、会員登録している都内の客およそ2万人に10月1日から東京発着の旅行商品もキャンペーンの対象に加わることやホテルの利用を案内するメールを一斉に送信していました。

このホテルでは都内からの宿泊客が例年の2割ほどに落ち込んでいて、10月に向けては、施設内の消毒を徹底し、バイキング形式で料理を取る際には客に毎回、新しいマスクと手袋を付けてもらうことにするなど感染対策を強めていくことにしています。

そのうえで、料理に近海の金目鯛のメニューを新たに取りそろえるなどして観光客を呼び込みたいとしています。

「ホテルニュー岡部」の原重人支配人は「東京からのお客様が増えることを期待していますが地元には不安の声もあるので徹底した感染対策に努めていきます」と話しています。

“GoToで極端な二極化” 調査結果も

価格帯の違いが宿泊客の回復に差を生んでいるという調査結果もあります。

旅行関連の検索サービスを手がける「atta」は、全国3万余りのホテルや旅館を対象に調査しました。

調査のポイントは、予約の入り方によって宿泊料金が変動する仕組みです。

空室が多い場合は料金は下がっていき、満室に近づくと料金は上がっていきます。

ホテルの価格帯を1万ほどのビジネスホテルや5万円以上の高級ホテルなど4つに分類し、4連休の初日の9月19日の宿泊料金がどう変動したかを調べました。

その結果、5万円以上では、高くなっていく傾向があり、需要が伸びていることが分かります。

一方で、5万円未満のホテルではほぼ横ばいか、下がっていて、需要が伸び悩んでいます。

「atta」の春山佳久社長は「GO TOキャンペーンで、お得感が出て予約が殺到している宿と、一方で、なかなかお得感が提供できなくて、予約が全然入らないという、極端な二極化が進んでいる。政府は、宿泊業者の本当の声を聞いて、きちんとすべての業者に支援が行き渡るよう改善をはかる必要がある」と話していました。