宣言2週間延長 あす決定へ
医療現場 飲食店 観光地… 切実な声

2021年3月4日

首都圏の1都3県に出している緊急事態宣言について、政府は3月7日の期限を2週間延長し3月21日までとする方向で調整を進めていて、3月5日に感染症の専門家などでつくる諮問委員会に意見を求めたうえで対策本部で決定することにしています。

「延長して徹底的に感染を抑え込むべきだ」(医療機関)
「気持ちがしぼんでしまった」(居酒屋)
「人出が多くなる時期なので、結構厳しい」(観光地)

宣言の延長を求める人たちからも、宣言の延長に戸惑う人たちからも、切実な声が聞かれました。

3月21日まで宣言延長 あす決定へ 政府

3月7日が期限となっている首都圏・1都3県の緊急事態宣言について、政府は対象地域の感染状況や医療提供体制などの分析を進めた結果、病床のひっ迫状況を改善させる必要があるなどとして宣言の期限を2週間延長し、3月21日までとする方向で調整を進めています。

菅総理大臣は参議院予算委員会で「私自身の思いとしては、もう解除のところまで来ているが、病床の状況がまだ厳しい状況にある中、2週間の時間をいただければ大幅に改善できるという判断だ。2週間程度、国民に協力してもらえれば収束に向かうことができる」と述べました。

政府は3月5日、感染症の専門家などでつくる諮問委員会に3月21日までの延長方針を示して意見を求め、了承が得られれば国会での報告と質疑を経て対策本部で決定することにしています。

“宣言”延長へ 各方面の反応は?

1. 医療機関「宣言延長で感染抑え込むべき」

医療機関からは「再び病床がひっ迫しないよう、宣言を延長して感染を抑え込むべきだ」という声があがっています。

東京 北区の「東京北医療センター」は、主に新型コロナウイルスの軽症や中等症の患者を受け入れてきました。

第3波では2020年12月から患者が急増し、新型コロナの専用病床はほぼ満床の状態が続きました。

2020年12月には93人、2021年1月には84人の患者を受け入れましたが、緊急事態宣言に伴う感染者の減少で2月は37人まで減りました。病床の使用率は現在、3割を下回っています。

しかし、このところ都内で感染者の減少が鈍化していることから、病院は「今後いつ感染が再び拡大し、患者が急増するかわからない」と警戒を強めています。

実際、2020年12月には病床が一気にひっ迫して医師や看護師などの人繰りがつかずに、救急など一般の診療で患者の受け入れを断らざるをえないケースも起きました。

さらに、この病院は新型コロナワクチンの接種会場にもなっていて、接種が本格的に始まれば医師や看護師など15人のスタッフが必要になるということです。

このため、再び病床がひっ迫すればワクチンの接種にも大きな影響が出かねないとしています。

"東京北医療センター・宮崎国久 医師
「感染者が十分減らないうちに宣言を解除すれば、また病床が一気にひっ迫するおそれもあり宣言を延長して徹底的に感染を抑え込むべきだ。多くの人にワクチンが行き届くまでは少なくとも今の状態を維持していくべきだ」"

2. 飲食店からは落胆の声が…

都内の居酒屋チェーンからは、歓送迎会などのシーズンの営業時間短縮で影響を心配する声が聞かれました。

居酒屋チェーンの「つぼ八」は緊急事態宣言を受けてことし1月以降、東京と神奈川の直営店で休業や営業時間の短縮を行っています。

このうち午後8時までに営業時間を短縮している東京 浅草の店舗では、例年3月は歓送迎会や隅田川沿いの花見を楽しむ人などの利用も多く、1年のうちでも売り上げの多い時期だということですが3月は予約がほとんど入っていません。

店では、緊急事態宣言が3月7日に期限を迎えることを見込んで、アルバイトの勤務を組んだり食材の調達を進めたりしてきましたが、宣言を延長する方向で検討されているとの報道を聞き、従業員からも落胆の声が上がっているということです。

店長・古屋裕希さん
「宣言の解除に向けてモチベーションを高めてやっていこうと思っていたが気持ちがしぼんでしまった。3月に宣言が延長されるのは死活問題だが、国は宣言をだらだらと延ばさずに感染者の増加を止めて通常に戻せるようメリハリをもった対応をしてほしい」

3. 観光地・江の島 来週末の祭り中止か検討

神奈川県藤沢市の江の島では、観光客らに春を感じてもらおうと来週末に予定している祭りを中止するかどうか検討することになりました。

藤沢市の江の島では、例年この時期になると神奈川県内や首都圏からの観光客が訪れ地元の商店街も多くの人でにぎわいますが、ことしは人出が減っていて店によっては売り上げが半減するなどの影響が出ているということです。

宣言が延長される見通しとなったことについて島内の飲食店「遊覧亭」の店主、渡邊英雄さんは「緊急事態宣言によって、お客様の数は全然違います。3月は春になって人出が多くなってくる時期なので、宣言が延長になってそこをくじかれると結構厳しいです」と話していました。

また、地元の観光協会や商店街などでは観光客らに春を感じてもらおうと3月13日と14日の2日間、稚児行列や和太鼓の演奏などを行う祭りを企画しています。

宣言が解除されるのを見越して規模を縮小したうえで開催する予定でしたが、延長される見通しになったため祭りを中止するかどうか検討することになりました。

藤沢市観光協会・湯浅裕一会長(和菓子店を経営)
「2020年も新型コロナの影響で断腸の思いで中止を決めた経緯があり、ことしこそはと意気込んでいました。宣言が延長になれば協力しなければならないので大変困っています」

4. スキー場「さらに厳しくなる」

長野県のスキー場では、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で今シーズンの売り上げが大きく落ち込んでいる状況が「さらに厳しくなる」と懸念を示しています。

長野県茅野市にあるスキー場「白樺湖ロイヤルヒル」は、例年6万人ほど訪れる客は1都3県からが多いということです。

しかし、スキー場によりますと、今シーズンは新型コロナの感染拡大の影響で年末年始のあたりから予約のキャンセルが相次ぎ、売り上げは2020年と比べて
▽リフト券が半分程度、
▽系列のホテルやスキースクールなどを含めると3割ほどと、
大幅に落ち込んでいます。

スキー場では、3月から長野県が始めた県民限定で1日リフト券を半額にするキャンペーンに期待していますが、4月4日までの営業期間にどれだけ客足を伸ばすことができるか不透明だということです。

白樺湖ロイヤルヒルの中山隆樹支配人は「1都3県からの客が大きなウエイトを占めていて、今シーズンはもともと厳しい状況だったのが延長されるとさらに厳しくなると思う。感染対策をとったうえで来場してほしい」と話していました。

5. サッカーJ2「東京クラシック」 ビジター席販売なしか

スポーツの分野でも影響が出ています。

東京 町田市の「町田GIONスタジアム」では3月14日、サッカーJ2の町田ゼルビアと東京ヴェルディの試合が予定されています。

東京勢どうしが対戦するこのカードは「東京クラシック」とも呼ばれ、両チームのサポーターがふだん以上に熱い応援を繰り広げることで知られています。

Jリーグは今シーズン、緊急事態宣言が出されている地域では人の移動による感染拡大を防ぐためビジター席を設けないことをガイドラインで定めています。

このため、2月28日に行われたゼルビアのホーム開幕戦ではビジター席は用意されず、宣言が7日に解除されれば14日の試合は今シーズン初めて820席のビジター席が設けられる予定でした。

しかし、宣言が2週間程度延長されればビジター席として販売するのはやめ、ヴェルディのサポーターにはスタジアムでの観戦を控えるよう呼びかけるということです。

田口智基さん(町田ゼルビア運営会社・マーケティング部長)
「『東京クラシック』はふだん以上に盛り上がる試合なのでビジター席を用意できないのは本当に残念です。また会社にとっては入場料やグッズの販売による収入が減るのも経営的には厳しいです。早く感染が収まって1日も早くスタジアムが多くのサポーターでにぎわうようになってほしい」

1都3県 きょうの感染状況は

1都3県で3月4日、新たに発表された感染者数です。

▽東京都は279人で、減少スピードは鈍化が続いています。
▽埼玉県は123人でした。

また、
▽神奈川県は138人、
▽千葉県は107人と、
いずれも3日に続いて100人を超えました。

東京都 小池知事「延長だけでは事業者はつらい」

東京都の小池知事は記者団に対して「そのまま延長するだけでは皆さん厳しく特に事業者の皆さんはつらいと思う。1都3県で連携していくこともあるので引き続き協議を重ねたい」と述べました。

このなかで小池知事は「感染者数の下げ止まりや変異株などいくつかの懸念がある中で解除されると、リバウンドを不安に思う人も多かったと思う」と述べ、菅総理大臣が緊急事態宣言を延長する方向で検討する考えを示したことに対し、理解を示しました。

そのうえで「ただ、そのまま延長するだけでは皆さん厳しいと言うか、特に事業者の皆さんはつらいと思う。そういう中で何ができるのか1都3県で連携していくこともあるので、引き続き協議を重ねたい」と述べました。

埼玉県 大野知事「対策の徹底が極めて重要」

埼玉県の大野知事は感染防止対策の徹底が重要だとしたうえで、新たに営業時間の短縮要請に応じる飲食店などへの協力金を支給する考えを明らかにしました。

緊急事態宣言が2週間程度延長される方向で検討が行われることについて、大野知事は「感染防止対策の徹底が極めて重要だ。リバウンドを防ぐために国の分科会で決められた繁華街でのモニタリング調査などを前倒しで行うことを検討するとともに、医療機関が疲弊しないよう戦術的な対応を強化していきたい」と述べました。

そのうえで「この1、2週間でカラオケ店での小さなクラスターが3か所で発生している。残念ながら人出も徐々に通常の状態に戻っていて強く懸念している」と述べ、改めて不要不急の外出を自粛するよう求めました。

また、大野知事は緊急事態宣言が2週間延長された場合、すべての期間営業時間の短縮要請に応じた飲食店などに対して、84万円の協力金を支給する考えを明らかにしました。

千葉県 森田知事「延長であれば一時金追加は当然」

千葉県の森田知事は記者団に対して「緊急事態宣言を延長するのであれば、影響を受けた事業所への一時金を追加するのは当然だ」と述べ、国が時短営業をしている飲食店の取引先などに支給する一時金を追加するよう、1都3県で共同で国に要請するよう提案したことを明らかにしました。

また、菅総理大臣が緊急事態宣言を2週間程度延長する方向で検討する考えを示したことについて、森田知事は「2週間は1つの目安として感染者が増えるのか減るのか方向性は見えると思うので、妥当だと思う。2週間で何とか解除できるようにしないといけない」と述べました。

横浜市 林市長「やむをえない判断」

横浜市の林文子市長は記者会見で「やむをえない判断ではないか」と述べ理解を示しました。

3月4日の定例会見の中で、林市長は2週間程度の延長について「横浜市内の患者の数は減少傾向にあるが、1都3県は人の行き来などいろいろな意味で関連しているのでやむをえない判断ではないか。事業者、経済界には本当に申し訳なく残念だ。これが1か月延長となると私も同意できないが、2週間の間に早く収束すれば順次、解除していただきたい」と述べました。

そのうえで林市長は「町の人出が多くなっている。自分たちは大丈夫という気の緩みもあるのではないか」と述べ、引き続き感染予防対策を徹底するよう呼びかけました。