緊急事態宣言解除のタイミングと経済への影響
専門家の分析は

2021年2月2日

新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言について、東京での感染対策の効果と経済への影響を分析したシミュレーションを経済学の専門家のグループが公表し、できるだけ短期間で、感染者数を十分に減らしてから宣言を解除すると、感染の再拡大を抑えて経済の損失も小さくなるという結果となりました。

シミュレーションを行ったのは東京大学大学院経済学研究科の仲田泰祐准教授と藤井大輔特任講師らのグループです。

グループでは1月24日までのデータをもとに、感染の広がりを予測する数理モデルと経済学のモデルを組み合わせて緊急事態宣言後の経済への影響などを分析しました。

分析では、東京都を対象に前提条件として、1日2000人の感染者を超えると再び緊急事態宣言が出されることやワクチンの接種が順調に進むことなどを想定しました。そして、宣言が解除される際の東京の1日の感染者数ごとにシミュレーションしました。

それによりますと、1日500人で宣言が解除された場合は、感染者がすぐに増え始め、4月後半に再び緊急事態宣言が必要なレベルになるという結果でした。

1日250人で解除された場合は、その後の感染者の増え方は比較的、ゆるやかとなり、ワクチンが順調に進んでいれば6月半ば以降は感染者が減っていく結果になったということです。

さらにこの分析に経済への影響を加えてこの先1年間に予想される東京都の累計の死者数と経済的な損失として都内の総生産の変化を計算しました。

その結果、1日の感染者数が400人の段階で宣言を解除すると東京都の死者数はおよそ2000人に上るという結果になりました。

250人で解除する場合は死者数はおよそ1600人と少なくなる一方で、経済活動を制限する期間がより長くなるため、経済的損失はおよそ1000億円増えました。

また、100人で解除する場合は死者はおよそ1100人まで減りましたが、経済的損失はおよそ4100億円増え、解除する基準を厳しくするほど経済的な損失が増える結果となりました。

ただ、1日500人で宣言を解除するとその後、再び緊急事態宣言が出てしまい、死者数はおよそ1800人と多くなったうえに経済的な損失もおよそ3100億円増える計算になったということです。

こうした分析から、グループではできるだけ短期間で感染者数を十分に減らしてから宣言を解除することで、感染の再拡大を抑えて経済の損失も小さくなるとしていて、感染対策と経済のバランスを考えながら政策を見極めるべきだと指摘しました。

仲田准教授「ある程度自信が持てるタイミングで解除を」

分析を行った東京大学大学院経済学研究科の仲田泰祐准教授は「再度の緊急事態宣言を避けることができるとある程度自信が持てるタイミングで緊急事態宣言を解除すべきだという考え方が、感染対策の視点だけでなく、中長期的には経済活動の視点からも正しい考え方であることが見えてきた。こうした分析結果は政策判断の参考になると考えている。分析はウェブサイトで毎週アップデートするので、能動的に活用してほしい」と話しています。