「自宅療養」になったら?
「発症から1週間前後の悪化」に注意

2021年1月27日

新型コロナの感染拡大に歯止めがかからない中、千葉県では入院調整中などの人も含めて自宅で療養している人が5000人を超えていて、先週は2人が死亡しました。

こうしたなか先月、自宅療養をしていた千葉県の男性がNHKの取材に応じ、自分の容体がどのようなレベルなのか判断がつかず、不安が解消されないまま過ごさざるを得なかった状況を語りました。

保健所からは「症状が急激に悪化した場合は連絡」恐怖感の中で

取材に応じたのは千葉県内に住む40代の男性で、男性によりますと2020年12月18日の朝、これまでに経験をしたことがない激しい頭痛と筋肉痛を感じ目を覚ましたということです。

熱を測ったところ38度ほどで、翌日になると症状が悪化していたため、みずから医療機関をさがしてPCR検査を受け感染が判明しました。

同居する妻と小学生から高校生の4人の子どもは検査を受けた結果陰性で、男性は家族を感染させないよう対策を徹底して自宅で療養生活を送ることになりました。

保健所からは「症状が急激に悪化した場合は、保健所に連絡をするか救急車を呼んで下さい」と伝えられたということですが、これについて男性は「指示が漠然としていて熱が何度で何時間続いたら救急車を呼んでくださいといった具体的なものは全く無く、自分で判断をしないといけないんだなと思いました」と話しています。

血液中の酸素の状態をみるパルスオキシメーターについては保健所などから貸し出されず、自らインターネットで購入したということです。

自宅での療養を始めてからは筋肉痛や頭痛、38度台の発熱が続いたほか、次第に息苦しさも感じるようになったということです。

不安を感じた男性はパルスオキシメーターで定期的に血液中の酸素の状態を確認し一時、酸素吸入が必要なレベルとされている数値を示したこともあったということです。

保健所から1日1回かかってくる電話の際にこうした状況を伝えたということですが、自分の容体がどのようなレベルなのか判断がつかず、不安が解消されることはなかったということです。

男性は「知識がないのでネットで調べるしかなく、悪化しているのかどうか判断がつきませんでした。救急車を呼ぶこと自体ハードルが高いですし、そもそも体調がよくない中で自分で判断することはかなり厳しいと思います。医師の話もきけないし、毎日すごい恐怖感でした」と話していました。

その後症状が徐々に回復し、発症から10日がたった2020年12月28日に療養を終えたということです。

しかし今もけん怠感や胸の痛み、呼吸のしづらさは残っているということで、自分の経験を伝えることで感染予防の重要性を知って欲しいとしています。

男性は「インフルエンザとは比べものにならないほど重い症状ですし、これほど長期間、具合が悪くなるとも思っていなかったので、かからないですむなら絶対にかからないほうがいいと強く思います。今後、治療法が見つかるまで感染しないことが重要だと思うので、徹底して予防してほしいです」と話しています。

パルスオキシメーターを貸し出し 療養者の急増で数が不足

千葉県は新型コロナウイルスに感染して自宅などで療養する人に対して容体の急変を見逃さないよう血液中の酸素の状態をみるパルスオキシメーターを貸し出していますが療養者の急増で数が不足し確保を急いでいます。

千葉県は自宅などで療養する人の容体の急変を把握するため血液中の酸素の状態をみるパルスオキシメーターをこれまでに1000台確保し、年齢や持病などのリスクに応じて貸し出しています。

しかし県内では1月26日時点で、入院調整中も含めて自宅などで療養する人が1か月前のおよそ5倍の5116人に急増していて、パルスオキシメーターの数が足りず千葉県は対応を急いでいます。

県では2月中旬までにさらに2000台を確保する予定ですが保健所の業務がひっ迫する中、機器を届ける人員の不足も課題になっていて、一部の保健所では自治体の職員と協力して配っているということです。

県内ではこれまでに感染が判明していた2人が自宅療養中に死亡していていずれもパルスオキシメーターは貸し出されていませんでした。

千葉県健康づくり支援課の大野義弘課長は「自宅療養中に亡くなる事例をできるだけ防ぐため、パルスオキシメーターを活用していく。地道な健康観察を続け、症状が悪化した場合には入院の調整を行うなど適切に対応したい」と話しています。

自宅療養中に特に注意すべきタイミングは「発症から1週間前後」

自宅で療養している人はどのような時に保健所に相談し、救急車を呼べばいいのか。

国立国際医療研究センターの忽那賢志 医師に聞きました。

新型コロナの初期症状は
▽発熱、
▽せき、
▽のどの痛み、
▽関節痛、
▽息切れや息苦しさ、
それに
▽嗅覚や味覚障害などさまざまでインフルエンザとよく似ているということです。

その上で自宅療養中に特に注意すべきタイミングは発症から1週間前後だといい、この時期に病状が急速に悪化することがあるということです。

忽那医師は「発症してから1週間くらいの時点で『呼吸苦』が強くなる人がいて、特に動いた後に息切れが強くなるのが症状が悪くなった時の特徴だ。ほかにも突然、胸や頭の痛み、まひが出るなどするので、こうしたことがあればすぐに保健所に相談するか、救急車を呼んだ方がいいと思う」と話しています。

また、パルスオキシメーターの数値も病状を確認する方法の1つになるとしていて「酸素の数値は下がっていても自覚症状が乏しいことがある。酸素を投与した方がいい目安は93%から94%くらいで、これくらいの数値になっていれば、保健所に相談する目安になると思う」と話しています。

その上で忽那医師は「今は入院しないといけない人が入院できない状況だ。医療体制に余裕を持たせるため感染者を減らすことが必要で、人と人の接触を減らす、3密を避けるということをこれまで以上に意識してもらいたい」として1人1人の感染対策の徹底を求めています。