【詳しく】首都圏 緊急事態宣言解除へ
今後の対策や暮らしは?

2021年3月18日

首都圏の1都3県に出されている緊急事態宣言について政府は3月18日に開いた対策本部で、期限の3月21日で解除することを決定しました。これによっておよそ2か月半にわたった宣言はすべて解除されることになりました。

政府は午後5時半から総理大臣官邸で新型コロナウイルス対策本部を開き、菅総理大臣をはじめ西村経済再生担当大臣や田村厚生労働大臣らが出席しました。

この中で菅総理大臣は「飲食店の時間短縮を中心としてピンポイントで行った対策が大きな成果をあげ1都3県の新規感染者数は8割以上減少している。病床のひっ迫が続いていた千葉県などにおいても病床使用率は50%という解除の目安を下回って40%以下になっている」と述べました。

そのうえで、首都圏の1都3県の緊急事態宣言について期限の3月21日で解除することを決定しました。

これによって、2021年1月からおよそ2か月半にわたった宣言はすべて解除されることになります。

政府は感染の再拡大を防ぐため、引き続き飲食店の営業時間短縮やテレワークの実施などを呼びかけるとともに、無症状者のモニタリング検査を大都市で大規模に行うなど市中感染の早期探知に努める方針です。

解除の理由は?

政府は緊急事態宣言を3月21日の期限で解除することを決定し、その理由について菅総理大臣は17日夜、「感染者数」と「病床の使用率」の2つの指標をあげました。この現状について見ていきます。

1. 「感染者数」

まず、3月18日・木曜日の感染者数は、
▽東京都が323人
▽神奈川県が160人
▽埼玉県が115人
▽千葉県が122人でしたが、
宣言の延長を表明した3月5日の前の同じ木曜日・3月4日は、
▽東京都が279人
▽神奈川県が138人
▽埼玉県が123人
▽千葉県が107人でした。

埼玉県で減少していますが、東京都、神奈川県、千葉県では増えています。

2. 「病床の使用率」

一方、もう一つの指標「病床使用率」の最新の状況を見てみます。

3月16日は
▽東京都が25%
▽埼玉県が38%
▽千葉県が37%
▽神奈川県が25%で
いずれも宣言解除の目安としている「ステージ3」の水準になっています。

延長を表明した3月5日に発表された、3月4日の値は、
▽東京都が30%
▽埼玉県が41%
▽千葉県が46%
▽神奈川県が28%で
40%を超えていた埼玉県や千葉県も30%台に下がっています。
特に注目していた病床使用率などが改善したことなどから、宣言の解除に踏み切りました。

「基本的対処方針」変更

緊急事態宣言の解除に伴い政府は新型コロナウイルス対策の「基本的対処方針」を変更することにしています。

今回変更される「基本的対処方針」の案では、社会経済活動を継続しながら再度の感染拡大を防止するための取り組みを進めるとしています。

具体的には、
▽変異ウイルスへの対応として現在、新規感染者の5%から10%を目安に検体を抽出して行っている検査を早期に40%程度まで引き上げ、全国的な監視体制を強化するとしています。また、民間の検査機関や大学などとの連携をさらに進めゲノム解析を強化するとしています。

さらに、
▽感染状況の兆候を早期につかむため2月、宣言が解除された大阪や愛知、福岡などを含めた10都府県に対し3月中をめどに高齢者施設での検査を実施することや、4月から6月にかけて歓楽街などで定期的に集中的な検査を行うことを求めています。

そして、
▽宣言の解除後も引き続き、日中を含む不要不急の外出の自粛を要請するとしています。

また、
▽飲食店の営業時間の短縮については、地域の感染状況を踏まえながら都道府県知事が適切に判断するよう求めているほか、自治体などに対し飲食店が感染防止のためのガイドラインを守っているか見回り調査を行うよう促すとしています。

さらに、
▽イベントの開催制限についても感染状況などを踏まえ段階的に緩和するよう求めています。

そして、
▽感染が再拡大した場合には飲食店に対する営業時間の短縮要請や、「まん延防止等(とう)重点措置」を機動的に活用するとしています。

首都圏1都3県 解除後も“外出自粛・時短要請”継続へ

首都圏の1都3県は感染の再拡大を防ぐため、緊急事態宣言が解除された後も3月末まで不要不急の外出自粛や営業時間の短縮要請を続けます。

東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県の知事は3月21日に緊急事態宣言が解除されたあとの対応についてオンラインで協議しました。

知事たちは感染の再拡大を防ぐため、引き続き連携して対策を続けていくことで一致しました。

具体的には宣言が解除された翌日の3月22日から31日までの取り組みとして、

▽都民・県民に対して不要不急の外出自粛を要請します。

▽飲食店などに対しては今の午後8時から午後9時までに緩和するものの、営業時間の短縮要請は継続します。協力金は1日当たり4万円とします。

また、
▽イベントの制限についても要請を継続し、収容の上限を5000人もしくは定員の50%以内のいずれか多いほうにしたうえで、開催時間は午後9時までとするよう求めます。

このほか、
▽感染状況を踏まえて4月以降の取り組みについて改めて協議していくことや、
▽国に対して財政的な支援などを要望していくことを確認しました。

東京都の小池知事は「いかにリバウンドに注意するかが重要だ。人流がつながる1都3県で連携していきたい」と述べました。

知事の反応は?

埼玉県 大野知事「数か月間は何とか持ちこたえる体制を」

埼玉県の大野知事は緊急事態宣言の解除について「県から解除を要請する段階には今も至っていないが全県での時間短縮要請を含めた段階的措置を行うことで、何とか事態をコントロールし少なくともワクチン接種までの数か月間は何とか持ちこたえていく体制にしたい」と述べました。

会議のあと大野知事は記者団に対し「宣言の解除でみんなハッピーですべてできると言いたいところだが、残念ながらその段階には至っておらず、人の命を守るためにも県民には改めて感染対策の徹底や不要不急の自粛をお願いしたい」と述べました。

また、1都3県で協調して3月31日まで行うことを決めた午後9時までとする飲食店への営業時間の短縮要請についても「4月以降も一定程度、継続する必要がある」と述べ、一定期間、飲食店の営業短縮などを要請する措置を続けていくべきだという考えを示しました。

千葉県 森田知事「段階的な緩和を」

千葉県の森田知事は緊急事態宣言が3月21日で解除されることについて「適切な判断だと思う」と述べました。

そのうえで千葉県内の新規の感染者数が減少傾向にあり、病床稼働率も36%まで下がってきたことを紹介したうえで「病床の余裕が十分あるとはいえないが医療関係者や県民の努力だと考えている」と述べました。

また、1都3県が合同で飲食店の営業時間の短縮要請を継続することに同意したうえで「段階的な緩和が非常に大事だと思っている。そのうえで『リバウンドにご用心』としっかり呼びかけていかなくてはならない」と述べました。

神奈川県 黒岩知事「リバウンドに用心を」

神奈川県の黒岩知事は「緊急事態宣言が解除されたあとも緊張感を持ってリバウンドに用心するよう呼びかけていきたい」と述べました。

テレビ会議の中で黒岩知事は「緊急事態宣言が解除されることになったが、まだ緊張感を持っている。こうした認識を皆さんと共有して、リバウンドに用心しようというメッセージを1都3県で呼びかけていきたい」と述べました。

そして解除後も3月31日までは、飲食店に対し営業時間を午後9時までに短縮するよう1都3県で共同で求めることについて「個人的な思いとしては解除後も1か月程度は継続して要請が必要かなと考えている。4月1日以降、どこを出口にするかについては1都3県で改めて話し合いたい」と述べました。

会議のあと黒岩知事は今後、コロナ患者用の病床をどう確保するかについて「現在の最大確保病床である1555床を基本に考える。これとは別に回復した患者を受け入れる後方支援病院を拡充するなど総合的な対策を行って、この病床を有効に活用できるようにしていきたい」と述べました。

経済界の反応は…?

日本商工会議所 三村会頭
日本商工会議所の三村会頭は全国の商工会議所の幹部がオンラインで参加した総会であいさつしました。

この中で、新型コロナウイルスの発生から1年以上が経過した中小企業の経営の現状について「とりわけ飲食、宿泊、交通、イベントなどの業種は極めて厳しい状況に陥っている。事業者の心が折れて倒産や廃業とならないよう、政府は支援策の継続や拡充をはかってほしい」と述べました。

そのうえで緊急事態宣言については「国が果たすべき役割の第1はコロナの感染拡大を制御し、先行きの明るい見通しを国民に示すことだ。緊急事態宣言は国民生活や経済活動に深刻な影響を与えるのでこれで最後にしなければならない」として、今後、感染が再拡大した場合でも経済活動が続けられるよう一般の人へのワクチン接種の早期実施や、医療体制の整備などを政府に求めました。

「日本旅行」 堀坂明弘社長
「人が動くことで感染が広がらないような対策が重要でGo Toトラベルの再開という以前に、皆さんが動きたいという思いをどう具現化していけるか業界として対策を検討したい」

飲食店 解除を歓迎も「心から喜べない、すごく複雑…」

東京の飲食店からは歓迎する一方で感染の再拡大や今後の経営を不安視する声が聞かれました。

JR新橋駅近くの焼き鳥店「山しな」は感染拡大前は午後5時から午後11時半まで営業していましたが、緊急事態宣言を受けて新たにランチメニューを作り午後0時半から午後8時までの営業に切り替えました。

しかし、ランチの利用客は少なく2月の売り上げは感染拡大前の6割程度に落ち込んでいて、本来は送迎会などでかき入れ時となる3月も予約がほとんど入っていないということです。

政府が緊急事態宣言を3月21日の期限で解除することについて、店主の山科昌彦さんは「お店としてはようやく1歩前に進めるという思いもありますが、その反面リバウンドのようなものが生じ感染者数が増えているのが心配で、はたして解除していいのかとも思います。心から喜べない、すごく複雑な感じがします」と話しました。

東京都は緊急事態宣言が解除されたあとも、3月中は飲食店などへの営業時間の短縮要請を午後9時までに緩和したうえで続けることにしています。

店主 山科昌彦さん
「店の経営は厳しい状態が続いていますが1日も早くいつもの生活に戻れるのがいちばんいい。短縮要請には応じようと思いますが、世の中は新しい生活のリズムになっているのでコロナ前の売り上げには戻らないのではないかと不安を感じています」

「屋形船」 売り上げの回復期待も “客足戻るか不安…”

東京の名所を巡る「屋形船」の関係者からは売り上げの回復を期待する一方、客足が戻るか不安視する声も上がっています。

お台場や隅田川など東京の名所を巡る屋形船を運営している東京 品川区の「船清」では2020年1月、利用客や従業員が新型コロナウイルスに感染し、およそ3か月半にわたって休業を余儀なくされました。

営業を再開したあとは、感染対策として換気や消毒の徹底それに客席を半分ほどに減らしたうえ、客どうしが向き合わないようテーブルに間仕切りを立てる工夫もしました。

また、2020年12月には大型の屋形船1つを改装し船内を9つの半個室に分けて少人数でも利用できるようにしました。

しかし、2月までの1年間の売り上げは例年の1割にも満たず大きく落ち込んでいます。

「船清」おかみ 伊東陽子さん
「宣言解除と言っても不安があります。まだまだ自粛ムードは強く、皆さんの心は花のようには満開になっていないかなと思います。これから大型連休をめざして屋形船の魅力を知ってもらう努力をしていきたい」

宣言で休業や時短… 観光施設 “客を迎え入れたい”

千葉県内の観光施設では感染防止対策に力を入れて客を迎え入れたいという声が聞かれました。

千葉県東部にある銚子市の犬吠埼温泉にあるホテルでは、2021年1月からの緊急事態宣言で宿泊客のキャンセルが相次いで新規の予約がほとんどなくなり、3月上旬まで休業していました。

この間、従業員を自宅待機としていましたが今後は感染防止対策に力を入れて客を迎え入れたいとしています。

梅津佳弘さん(ホテルの総支配人・銚子市旅館ホテル組合長)
「コロナ禍で休業している間はつらかったが今後は感染防止対策に力を入れてリピーターのお客さんを増やしていきたい」

また、千葉県南部にある館山市の観光施設「館山ファミリーパーク」では100万本のポピーの花が現在、満開の見頃を迎えていますが、営業時間を短縮していたこともあり来場者が2020年の同じ時期の半数以下に落ち込んでいました。

宣言の解除後は、施設では感染防止対策をとりながら通常の営業時間に戻し、見頃のポピーをことし5月末まで鑑賞できるようにしたいとしています。

長谷川元喜さん(施設の支配人)
「宣言が解除されても感染がなくなるわけではないのでお客さんにはしっかりと対策をとってもらい来てほしいです」