安倍首相
緊急事態宣言 39県の解除表明 記者会見での主な発言

2020年5月14日

新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づく緊急事態宣言について、安倍総理大臣は14日夜、記者会見し、39の県で解除することを正式に表明しました。そして、東京など残る8つの都道府県は、今月21日をめどに解除できるかどうか判断する考えを示しました。記者会見での主な発言です。

「39県は感染拡大を防止できるレベル」

冒頭、安倍総理大臣は、緊急事態宣言について、東京、埼玉、千葉、神奈川の首都圏と、関西の大阪、京都、兵庫、それに北海道の合わせて8都道府県を除く39の県で解除することを正式に表明しました。

そのうえで解除の判断にあたって新規感染者数が直近1週間で、10万人当たり0.5人以下におさえられていることや、医療提供体制が改善し、検査システムも機能していることなどを基準にしたと説明し、「39県は今後、徹底的なクラスター対策を講じることで感染拡大を防止できるレベルまで抑え込むことができた」と述べました。

残る8都道府県については、今月21日をめどに改めて専門家の意見を聴き、可能なら、今月末の期限を待たずに解除する考えを示しました。

「『新たな日常』取り戻すスタートの日だ」

新規感染者数の大幅な減少は外出自粛などの結果だと国民に謝意を示し「ここからコロナの時代の『新たな日常』を取り戻していく。きょうはその本格的なスタートの日だ」と述べました。そのうえで、解除した地域の事業者に感染防止の業界ごとのガイドラインに基づき活動を本格化させるよう要望しました。

県をまたいだ移動 今月中は控えるよう求める

宣言の解除後も身の回りにウイルスは存在しており、気を緩めれば一気に感染が拡大すると指摘し、解除された地域でも人との接触をできるかぎり減らし県をまたいだ移動を少なくとも今月中は可能なかぎり控えるよう求めました。

テレワークなど今後も継続を

テレワークや時差出勤などを今後も継続していくこと、手洗いやマスクの着用など「新しい生活様式」を参考に、いわゆる「3つの密」を避け、特に繁華街の接待を伴う飲食店やカラオケ店などへの出入りを控えるよう呼びかけました。

第2次補正予算案の編成に着手

経済対策をめぐり「『新たな日常』を確立するには長い道のりを覚悟する必要がある。その間も、雇用と暮らしは、何としても守り抜いていかなければならず、もう一段の強力な対策が必要だと判断した」と述べ、今年度の第2次補正予算案の編成に着手することを明らかにしました。

また第2次補正予算案について「今この場で、規模をお答えすることはできないが、当然政府としてもしっかりとこの状況に対する規模感を持って、編成していきたい。今まさに与党で、いろんな議論をしているし、野党の考えも伺いたい」と述べました。

そのうえで「これまで支援が遅い、届かないという厳しいおしかりもいただいている。われわれは、その状況を真摯(しんし)に受け止めながら、何としてもそうした目詰まりを解消し、よりスピーディーにお届けするように、全力で取り組んでいきたい」と述べました。

雇用調整助成金 1日の上限1万5000円に

雇用調整助成金を抜本的に拡充するとして、1日8000円余りの上限を1万5000円まで特例的に引き上げることや、雇われている人が直接申請して給付を受け取れる制度も創設することを明らかにしました。

「世界経済は100年に1度の危機」

「世界経済は、リーマンショックとは比較にならない、100年に1度の危機を迎えている」として、大企業も含めた資金繰り支援を拡充し、必要に応じて十分な規模の資金の投入も可能とするなど事業存続を下支えする考えを強調しました。さらに、賃料の負担軽減のための給付金や感染防止措置などの事業展開を支援する最大150万円の補助金を創設する考えも示しました。

検査体制の強化を図る考え示す

今月13日に承認された「抗原検査」について、来月には1日当たり2万人から3万人分の検査キットを供給できる見込みだとしたうえで、従来のPCR検査も、唾液を使った方法の実用化を加速するなど検査体制の強化を図る考えを示しました。また、インフルエンザ治療薬「アビガン」の今月中の承認を目指す考えを重ねて示したほか「フサン」などは日本が見いだした薬だとして新型コロナウイルスへの有効性が確認されしだい、早期の承認を目指す意向を示しました。

「国民の協力あれば乗り越えられると確信」

「次なる流行のおそれは常にあり、感染者の増加スピードが高まってくれば、残念ながら、2度目の緊急事態宣言もありうる」と述べました。そして「感染拡大を予防しながら、社会経済活動を本格的に回復させていく。『新たな日常』をつくりあげるという極めて困難なチャレンジに踏み出すが、国民の協力があれば、必ず乗り越えられると確信している」と強調しました。

「私の責任は国民の健康と命を守り抜くこと」

安倍総理大臣は、みずからの責任について「私の責任は、まずはなんといっても国民の健康と命を守り抜いていくことであり、そして暮らしと雇用を守り抜いていくことだ。しっかりと責任を果たしていく決意と覚悟だ」と述べました。

そのうえで、「国民とともに新しい日常を作り上げていく点においても責任を果たしていきたい。同時に今後の感染が再び拡大していく危険性に備えて、医療提供体制や検査体制の整備など、国として責任を持ってしっかりと果たしていきたい」と述べました。

ワクチン開発「国際社会と協力し開発進めたい」

ワクチンの開発について「ワクチンが果たす役割は大変大きなものがあり、アメリカなどではすでに治験が開始されている。国内では東京大学、大阪大学、国立感染症研究所などで開発が進められており、早ければ7月には治験が開始される見込みだ。国際社会と協力しながら開発を進めていきたい」と述べました。

「恣意的な人事行われることは全くない」

検察庁法の改正案について、「検察官は、強い独立性をもっているが、行政官であることは間違いない。そもそも従来から、認証官の任命は内閣が、それ以外は法務大臣が行っており、今回の改正で、三権分立が侵害されることはもちろん無いし、恣意(しい)的な人事が行われることは全くないことは断言したい」と述べました。

また、東京高等検察庁の黒川検事長を、検事総長に任命することの是非を問われ、「黒川検事長の人事はまだ決めておらず、ここで私が申し上げるのは恣意的になると思うので、申し上げることはできない。国民の理解が深まるように努力を重ねていかなければならない」と述べました。

「9月入学 前広に検討していきたい」

9月入学について「まずは、とにかく子どもが学べる場をしっかり確保して、大きな差が出ないように最大限努力しなければいけない。宣言の解除による学校再開の状況や社会全体への影響を見極めつつ9月入学も有力な選択肢の1つだろうと思うが、前広に検討していきたい」と述べました。

そのうえで「大変、大切なことなので、拙速な議論は避けなければいけないし、今の状況なども、どのように考えていくかということも大切で、しっかりと深く議論していきたい」と述べました。

「必要なら法改正も視野に入れたい」

現在の特別措置法より、強い措置を可能にする法整備の必要性について、「対応が収束した段階で、より強制力のあるものが必要か検証しながら考えたい。必要ということになれば、ちゅうちょなく法改正も視野に入れたい」と述べました。

「中小企業 買いたたかれることないよう対応」

感染拡大の影響で経営が厳しくなった中小企業が、外国企業に買収される可能性があるのではないかと指摘されたのに対し、「中小企業の中には、さまざまな技術を持った企業やサプライチェーンを支えている企業がたくさんある。中小・小規模事業者が日本経済を支えているという観点を持ちながら、海外から買いたたかれることのないように対応していきたい」と述べました。