マスク着用 どうなる? 新型コロナ
原則今春「5類」移行検討で

2023年1月20日

新型コロナの感染症法上の位置づけについて、岸田総理大臣は、原則としてことしの春に、季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に移行する方向で検討を進めるよう、加藤厚生労働大臣らに指示しました。屋内でのマスク着用の扱いについても検討していく方針ですが、一般の人のマスクへの考えはさまざまです。

NHK世論調査 “「できるだけ着けたままにする」が27%”

NHKは、去年(2022)11月1日から12月6日にかけて全国の18歳以上3600人を対象に郵送法で世論調査を行い62.9%にあたる2266人から回答を得ました。

▼感染拡大が収束して屋内や人混みでマスク着用が求められなくなった場合にどうするか訪ねたところ、
◇「感染拡大が起きる前のように外す」と回答した人が23%、
◇「基本的には外すが感染拡大前よりは着ける機会を多くする」が47%、
◇「できるだけ着けたままにする」が27%でした。

男女別にみると男性は
◇「基本的には外すが感染拡大前よりは着ける機会を多くする」が最も多く45%、
◇「感染拡大が起きる前のように外す」が30%、
◇「できるだけ着けたままにする」が23%でした。

女性では
◇「基本的には外すが感染拡大前よりは着ける機会を多くする」が最も多く48%、
◇「できるだけ着けたままにする」が31%、
◇「感染拡大が起きる前のように外す」が16%でした。

▼「着ける機会を多くする」「できるだけ着けたままにする」と回答した人にその理由を訪ねたところ、
◇「感染対策など衛生上の理由から」が90%、
◇「素顔をさらしたくないなど見た目の理由から」が7%でした。

マスクの着用で感染拡大抑えられたとする研究結果

新型コロナウイルスは症状が出る前や無症状で感染したことに気づいていない場合でもウイルスを排出して感染を広げるおそれがあるため、屋内で人との距離がとれない場合や距離が取れても会話をする場合はマスクの着用が推奨されてきました。マスクの着用で実際に感染の広がりが抑えられたとする研究結果も出されています。

【感染は主に飛まつで】

新型コロナウイルスは主に、感染者がせきやくしゃみ、それに会話などの際に排出する飛まつ、それに「エアロゾル」や「マイクロ飛まつ」と呼ばれるごく小さな飛まつを通じて感染が広がります。

【発症前に感染させる】

症状が出る前から感染が広がることは、世界中で感染拡大が始まった初期からわかっています。

2020年1月から3月にかけてシンガポールの研究グループが243人の感染者を調査した結果によりますと、7つのクラスターで自覚症状が無い人から感染が広がり、感染した日が特定できた4つのクラスターでは最初に感染した人が発症する1日から3日前に周りの人も感染していました。

また、中国の広州医科大学のグループが2020年に各国から報告されたデータを分析したところ、感染の44%は最初に感染した人が発症する前の段階で起きているとみられることがわかりました。

最初に感染した人が発症する2日前から1日後に感染が広がっているケースが多いとしています。

こうした研究結果を受けて、厚生労働省は新型コロナウイルスに感染した人が他の人に感染させる可能性がある期間は「発症の2日前から発症後7日から10日間程度」で「発症の直前・直後で特にウイルス排出量が高くなると考えられる」としています。

【無症状者からも感染】

また、感染した後、症状が出ない人からも感染が広がることもわかっています。

症状が出た人より感染を広げる可能性は低いもののオミクロン株でも無症状の人から感染が広がることが報告されています。

国立感染症研究所が去年(2022)1月、オミクロン株に感染したあと無症状だった20人を対象に、感染性のあるウイルスが検出される期間を調べたところ、感染の判明から▽0日から5日目では9人、▽6日目と7日目では2人からウイルスが検出されたということです。

【マスクには効果】

マスクの着用で実際に感染が広がるのを防ぐ効果があったことを示す研究結果も出されています。

アメリカのハーバード大学の研究グループはマスクの着用義務が解除された地区の学校と着用が続けられた地区の学校で感染の頻度を比較した結果を去年(2022)国際的な医学雑誌に発表しました。

それによりますと、子どもと教員の感染状況を比較したところ、▼着用義務を解除した地区ではおよそ3か月半の間に感染したのは1000人あたり134.4人に上りましたが、▼着用を続けた地区では66.1人と少なくなっていました。

研究グループはマスクの着用で子どもたちの学習や発達が妨げられる明確な証拠はなく、感染者数を抑え欠席日数を減らす効果があり、感染拡大の際には有効な手段だとしています。

専門家会合 “感染リスク高い機会があった人は着用を”

マスクの着用について、厚生労働省の専門家会合のメンバーなどは1月11日の専門家会合に提出した見解の中で、新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが変わった場合でも、感染リスクの高い機会があった人などはまわりに感染させないために引き続き着用が求められるとしています。

見解の中では、▼感染者や症状のある人、▼濃厚接触者など感染リスクの高い機会があった人については、人と会う外出を控えるともにマスクの着用が求められるとしています。

▼それ以外の人たちについては、流行状況や場面に応じて十分な換気を含めた感染予防対策が求められるとして、例として高齢者施設などでマスクを着用することなどを挙げています。

東邦大学 舘田教授「状況に応じメリハリつけた対応を」

見解をまとめた専門家の1人で東邦大学の舘田一博教授は「これまでの対策で不織布マスクを正しく着用することで新型コロナの広がりを効果的に抑制できることが示されてきた。新型コロナの感染症法上の位置づけが見直されても▽重症化リスクのある高齢者や基礎疾患のある人と一緒にいる場合や
▽長時間、換気の悪い場所で大勢でいる場面、▽大きな流行が起きている時期はマスクを着用するなど、状況に応じてメリハリをつけた対応が求められる。感染リスクを想像しながらリスクを下げる行動を一人ひとりがとる“マスクエチケット”のような意識をこれまで以上に持ってもらう必要があると思う」と話しています。