北京冬季五輪まで100日
テスト大会でコロナ対策の課題検証へ

2021年10月25日

2022年2月に行われる冬の北京オリンピックの開幕まで10月27日であと100日です。大会の組織委員会は、新型コロナウイルスの感染の封じ込めが成功のカギを握るとして、10月から始まったテスト大会を通じて感染対策や国内の観客受け入れへの課題を検証することにしています。

北京オリンピックは、中国で開かれる初めての冬のオリンピックで、首都・北京と、隣接する河北省の張家口で、2022年2月4日から17日間にわたって開かれます。

北京では、2008年に夏のオリンピックが開かれていて、同じ都市で夏と冬の大会が開催されるのは史上初めてとなります。

大会の組織委員会は、新型コロナウイルスの感染の封じ込めが成功のカギを握るとして、本番と同じ競技会場で10月から始まったテスト大会で厳重な感染対策を講じるとともに、国内の観客受け入れに向けた課題を検証することにしています。

国営の新華社通信は、中国の感染対策は外国選手などから好意的に受け止められていると伝えた上で「新型コロナウイルスが猛威をふるっている今こそ、世界はオリンピックを必要としている」として、大会の成功に自信を示しています。

中国の保健当局によりますと、これまでのところ、テスト大会の関係者から感染者は出ていませんが、中国では10月中旬以降、デルタ株と見られる感染が北京を含む各地で広がっていることから、当局は神経をとがらせています。

「ゼロコロナ政策」続ける 北京で感染確認で警戒強まる

中国では10月中旬以降、秋の行楽シーズンに観光地を訪れていた人たちからデルタ株と見られる新型コロナウイルスの感染が各地に広がり、北京でも感染者が出て、警戒が強まっています。

北京で市中感染が確認されたのはおよそ70日ぶりで、市当局は、感染者が出た地区の住民の外出や移動を厳しく管理しているほか、全国各地の感染者が出た地域から北京に入ることを制限しています。

また、10月31日に、2年ぶりに開催される予定だった「北京国際マラソン」の延期も決まりました。

感染者が減少傾向にある国では、水際対策や市民生活への制限を緩める動きも出ていますが、中国は徹底的な対策で感染を封じ込めるいわゆる「ゼロコロナ政策」を続ける姿勢を崩していません。

北京オリンピックでは中国本土に住んでいる人に限って観客を受け入れるほか、大会前の聖火リレーも規模を縮小し、各地を巡回せず、直前の3日間のみ行う予定で、中国の当局は感染の再拡大に神経をとがらせています。

観客 中国本土に住む人に限り受け入れる方針

北京オリンピック・パラリンピックに向けては年内に10のテスト大会が開かれ、組織委員会によりますと関連イベントも含め、海外から選手やスタッフなど合わせて2000人余りが中国を訪れる見通しです。

組織委員会は「海外からの新型コロナウイルスの流入は中国にとって最大のリスクで、テスト大会における最大の挑戦だ」として、徹底した対策をとる姿勢を強調しています。

感染対策は東京大会と同じいわゆる「バブル方式」で、大会関係者は事前のワクチン接種が求められる上、中国に入国後は指定された宿泊施設からの外出が厳しく制限され、外部との接触は遮断されます。

また、PCR検査を毎日受けるよう義務づけられています。

さらに、競技会場への移動には専用のバスなどを使うことになっていて、一部の競技会場では登録された車しか近づけないよう検問所が設けられるなど、厳重な対策がとられています。

競技会場では、選手やスタッフが立ち入る「バブル」の中と、そうでない区域はフロアが分けられるなど、完全に切り離されています。

テスト大会の取材は一部のメディアしか認められず、会場の入り口ではワクチン接種やPCR検査の記録を提示するよう求められます。

メディアが使う通路や取材エリアも厳密に定められ、競技後の選手のインタビューもオンラインでのみ行われます。

フィギュアスケートのテスト大会に出場した日本選手からは「感染対策がとても徹底していて少し驚いた」といった声も聞かれました。

フィギュアスケート会場での感染対策がメディアに公開された際には、「バブル」の中にいるスタッフがオンライン中継で、スタッフの健康状態やPCR検査の結果をデジタル技術を使って一括管理していることなどを紹介していました。

会場の責任者は「テスト大会を通して国際大会を開催できる能力とオリンピックを成功させる決意を示したい」と述べ、本番に向け万全の態勢をとっているとアピールしていました。

また、東京大会ではほとんどの競技が無観客で行われましたが、北京大会では中国本土に住んでいる人に限って観客を受け入れる方針です。

組織委員会は「条件が整えば、今後のテスト大会で観客を入れたい」としていて、そうした経験を踏まえ本番での観客の規模や感染対策の内容などを示すものと見られます。

テスト大会に参加の日本代表関係者は

テスト大会に参加した日本代表の関係者は、新型コロナウイルスの感染対策が徹底され、安心感があった一方で、競技会場へのアクセスが制限され、調整面の難しさがあったと指摘しました。

ボブスレー日本代表のコーチ、鈴木寛さんは北京郊外の会場で行われたテスト大会に参加しました。

宿泊先のホテルは高さ2メートルほどのフェンスに囲われ、外部と一切接触できないようにするなど、いわゆる「バブル方式」の感染対策が徹底されていたと言います。

生活面では、携帯電話の専用アプリを通じて食事のメニューの変更などを要望できたということで、鈴木さんは「非常に細かく配慮してくれていたという印象を受けました。外部との接触が一切ないことで安心・安全を保てていると思います」と話しています。

一方、こうした厳しい感染対策が競技にも影響を及ぼしたと指摘しました。

今回のテスト大会は、日本代表にとって2020年3月以来、1年7か月ぶりの公式大会で、本番のコースを使った初めての滑走となりましたが、鈴木さんは競技会場での滞在時間が制限されコースの習熟や調整が思うようにいかなかったと振り返ります。

特に、ボブスレーの刃はコースの状況などに応じて取り付ける位置をミリ単位で調整する必要がありますが、ホテルとを結ぶ専用バスの運行本数が限られ、練習後、会場をすぐに離れなければならず調整を翌日に持ち越すこともあったということです。

バスの増便を組織委員会に要望しても、聞き入れられなかったと言います。

今回のテスト大会で、日本は2人乗りが25チーム中20位、4人乗りは18チーム中最下位に終わりました。

鈴木さんは「コースの情報が十分に得られない中、経験に基づき対応したが、不安が半分ぐらいを占めていた。ただ、競技ができる環境があるので、感染対策に従いながらいい成績を残したい」と話し、本番での巻き返しを誓っていました。

メダルのデザインもお披露目

北京オリンピック・パラリンピックの組織委員会は、2022年2月のオリンピック開幕まで100日となるのを前に、大会のメダルのデザインを発表しました。

メダルは、古代の中国で宗教的な儀式などに使われた円盤状の宝物をかたどっていて、表面には中国伝統の模様が刻み込まれています。

組織委員会によりますと、デザインには「心を1つにする」というメッセージが込められ、オリンピック精神のもとに人々が集うことを象徴しています。