2022年4月8日

「いわゆる“大人”からは自分はかけ離れているのでは」
人気ロックバンドKing Gnu(キング・ヌー)リーダーの常田大希さん、29歳。
「大人」をテーマに語ってもらうインタビューに、そう言いながら応じてくれました。
ひとつひとつ言葉を紡ぐように話してくれたのは、大事なことはいくつになっても変わらない、ということです。
「他人からの評価ではない、自分の正解を持つ」
「人と向き合う、向き合い続けることはいくつになっても大事だと思う」
この4月から、成人年齢が18歳に変わりました。
「正直、実感がわかない」という方も多いのではないでしょうか。
常田さんのメッセージから、大人になることや自立することって何なのか、考えてみませんか。
挑戦し続ける音楽家・常田大希さん
幼い頃から幅広い音楽に触れて育ったという常田大希さん。
2017年に現在の3人のメンバーとともにKing Gnuを始動。
これまでに発表した楽曲は、すべて常田さんが作詞・作曲しています。

テレビドラマや人気アニメの劇場版の主題歌も手がけ、楽曲を配信するYouTube公式チャンネルの登録者数は190万人にのぼります。
活動は曲作りにとどまらず、King Gnuをはじめ様々なアーティストのミュージックビデオ制作などを手がけるクリエイティブ集団「PERIMETRON」を立ち上げたほか、世界に目を向けた音楽プロジェクト「millennium parade」で新たな作品作りに携わるなど、音楽を軸に幅広い挑戦を続けています。
18歳の頃、大人ってどういうイメージでしたか
常田さん
”間違えない”というか、思慮深くて博識で悩みがない、というイメージでした。
自分が学生の頃の先生たちは悩んでいる姿を子どもには見せなかったと思うので、大人というものがそういう風に見えていたんだと思います。
実際に大人になって、今はどんなイメージですか
常田さん
自分が年を取るにつれて、大人もみんないろいろ迷ったり、悩んだり、反省したりしていることが分かりました。
子どもの頃に思っていた大人像は、18歳、20歳、30歳となっても、年齢は実はそんなに関係ないのかなと思うようになりました。

もちろん税金を払ったり、保険や年金などいろいろやるべきことは出てくるけど、大事なことは変わらないと思います。
自分の両親に対しても、昔だったら見えていなかった弱い部分や悩みが、自分も年を取ったら「ああそういうこともあるんだな」、「大変だったんだな」と分かるようになってきました。
そういう意味では、18歳でもいろいろな境遇や悩みがあるだろうし、それは大人と言われる年齢になった人たちにも変わらずあるだろうなと思っています。
常田さんの考える“自立”とは?
常田さん
自立…難しいですね。
一概にこれができないからダメな奴、ということでもないと思います。
自分たちの形、それは経済的に成功することかもしれないし、経済的に親から自立することがいい場合もあるかもしれないし、年を取った親の側にい続ける子どもが正解のこともある。
まずは「自分の正解をちゃんと持つ」こと、そしてそれは他人からの評価で導き出されたものではないということを大事にしたいと考えています。
そう考える人が増えてくれたほうが社会がギスギスしなくなるだろうし、”これが正解だ”というものを変に固めてしまわないほうがいいかなと思います。
そのうえで、お互いの正解を認め合えるようになったらいいですよね。
「大人だな」と思うのはどんな人ですか

常田さん
俺より年齢が若くても「しっかりしていて大人だな」と思う人はたくさんいます。
「自立」は“自分の正解を持つこと”だと先ほどお話ししましたが、その一方で、自分が正解だと思うことを疑う、人の正解もちゃんと受け入れられる柔軟さを持っている年上の先輩たちは素敵だなと感じます。
自分が50歳ぐらいになった時のことを考えると、どんどん凝り固まってくというか、経験に基づいて「自分の正解はこうだ」ということに固執しだしてしまうと思うんです。
でもそこで自分とは考え方や感じ方が違う人がいたとしても、その人の人生から導き出された正解というものをちゃんと認め合えるような大人になりたいですね。
年々、自分が今まで経験した「これだ」と思うことが昔よりも鮮明に見えるようになって、自信のようなものがついてくるんです。でもそれ以外の考え方を遮断しないようにしないと大きくなれないのかなと思います。
今、大事にしているのはどんなことですか
常田さん
学校もそうですが、社会で生きる時に一人で成り立つことっていうのはまったくないですよね。
必ず人と人、「対・人」で生きざるを得ない。
人と何かをやる、共存していかなきゃいけないという意味では、人と向き合う、向き合い続けることというのは、多分いくつになってもすごく大事なことなんだろうって思います。

人や音楽との向き合い方で、18歳の頃と今とで変化はありますか
常田さん
「こう感じる」という人がいて、そこからまた違うように感じる人がいて、という中でその都度、修正したり反省したりを繰り返してきました。
昔の自分の行動は果たして正解だったのかと考えることもあります。間違いはみんなあると思いますし。その積み重ねで昔よりはましにはなれているのかなと思っています。
音楽は、それこそ歌だったら言葉があって、割と如実に考え方をダイレクトに入れ込めますが、音楽に限らずあらゆる職業で、人間はつながっていると思うんです。
音楽を通じてやっていることが特別なことではなくて、1人の人間として人を意識して生きてきたというか。バンドもそうですし、クリエイティブチームもやっていて集団で活動してきている分、より意識が向いているのかもしれません。

これまでに発表した「BOY」や「Teenager Forever」は、たぶん若い頃だったら、こんなストレートでベタでポジティブなことを口に出して歌うということに、ちょっと「斜めから見る」ではないですが、抵抗があったと思うんです。ああいう曲こそ、昔だったら絶対に作れなかった。それこそ大人になってきたなと自分自身が感じた曲です。
人と向き合うことって?成長していくためには?
常田さん
友達、両親、先生でもいいですが、身の周りの人とのコミュニケーションを大事に見つめることだと思います。その延長線上で仕事仲間とも密なコミュニケーションが取れればいいですし、どんな立場の人間でもそれは心がけられるのかなと感じています。
それによって自分の生活もポジティブな方に、豊かな方に絶対転ぶと思います。
年を取ってもちゃんと人と向き合う、向き合い続けるっていうのがすごい大事なことなんだろうと考えています。自分がちゃんとできてるとも思わないのであまり偉そうなことは言えないんですけどね。

新たに成人になる人たちに大切にしてほしいと思うことはなんですか
常田さん
今はどんな行動を取っても、人からの目線というものが気になりすぎてしまう時代になっています。だからより自分が中和してしまうというか、個性というものがどんどん人から見られて形成されてしまう時代だと思うんです。
クラスの人気者とは違って友達が全然できないとか、わかり合える人がいないなっていう人たちも、これから生きていく中で共鳴し合える仲間に絶対に出会えます。自分の経験からもそう思います。

難しいけど、今いる場所だけの視点で生きるのではなく、視野を広く持つということが大事なんだと考えています。

成人年齢取材班記者
野田 麻里子
2007年入局
富山局、名古屋局、報道局総務部を経てネットワーク報道部

NHKスペシャル取材班ディレクター
佐野 剛士
2005年入局
大阪局、報道局、広島局で勤務
原爆、自衛隊、震災などをテーマに取材