モデル冨永愛さんが語る大人とは
「なりたい自分であればいい」

2022年3月25日

世界の第一線で活躍してきたトップモデルであり、まもなく新成人となる息子の母親でもある冨永愛さん。

ニューヨークのランウェイを歩いて鮮烈なデビューをした高校生のころ、“大人にはなりたくない”と思っていたといいます。

「なりたい大人じゃなくていい。なりたい自分であればいい」

いろんな経験や失敗も経て、39歳になったという冨永さんから、“18歳で大人”になるあなたへのメッセージです。

トップモデル 冨永愛さん

17歳の時に、ニューヨークコレクションでデビューして以降、数々の世界的ブランドのショーに出演してきた冨永愛さん。

トップモデルとして活躍する中、20代で結婚、出産を経験。

その後、シングルマザーとして仕事と子育ての両立を続け、2014年から3年間の休業。

37歳の時に、10年ぶりにパリコレクションに復帰し、ランウェイを歩く姿が話題になりました。

モデルのほか、テレビやイベントのパーソナリティ、俳優など、さまざまな分野に挑戦しているほか、社会貢献活動にも参加し、活躍の場を広げています。

成人年齢が18歳に どう思いましたか?

冨永さん
率直に、18歳で成人になる子たちは大変だな、と思いました。

今までは“20歳で大人”だったのが2年早くなって、いきなり“18歳で大人”と言われたら「えっ」てなりますよね。

「いったい全体どうしたらいいんだ」となると思います。

18歳の自分は“大人”でしたか?

冨永さん
全然、子どもでした。

18歳のころは、ちょうどニューヨークに行き始めたぐらいの時期で、自分の将来のことを考えている最中でしたし、モデルが生涯の仕事になるとか、ちゃんとした考えを持っていませんでした。

“大人にはなりたくない”と思っていました。

18歳のころの私から見た大人は、会社や世の中のルールの中で生きているだけとか、融通が利かない、子どもの身になれないといったイメージがありました。

思春期でしたし、反発心というのはあったので、そういうふうにしか思ってなかったんでしょうね。

18歳のころの自分について

冨永さん
ただただがむしゃらでしたね。

アジア人がそこまで活躍できる時代ではなかったので、アジア人として、日本人として、トップモデルになるのが夢で、ただ本当にひたすら走り抜けていたという感じでした。

反骨心があったから、海外に行っても闘えるエネルギーがありました。

反骨心がなければ、たぶん闘えていないと思いますし「負けない」「絶対勝ち進んでやる」という気持ちは起きていないです。

ファッション業界の大人って?

冨永さん
ある意味、一般的な大人の社会ではないので、面白い大人が多かったですね。

「この人、大人だな」って思う人、ほぼほぼいないんですよ(笑)

クリエイターたちなので、ほんとに自由な発想で、革新的な創造の力を持っている人たちがすごく多かったです。

大人であることを求められる業界ではないんです。

大人とか子どもとか全く関係なくて、その人自身であること、その人自身がどうあるかということが大事でした。

ただ、20歳以降に出会った大人たちからは人生の影響を受けていて、叱ってくれたり、支えてくれたりしました。

そういう人たちがいたから、海外で頑張ることができたと思っています。

自分を大人だと思ったのはいつですか?

冨永さん
大人だなって思ったことは、正直ないんです。

出産を経験して子どもが1人いて、母親として責任を負わなければいけない立場なので、大人ということになると思うんですけど。

日々、仕事をしたり、子育てをしたりする中で、悩んだり、失敗したりすることは、いくらでもあります。

大人だって失敗しないわけじゃない。

大人って完璧なイメージすぎて、「大人」ということばが、とても苦しいことばになっていると思っているんです。

今でも大人になりきれてないなって思いますよ、この年になっても。

きっと、60歳になっても、大人ってこんなものなのかなって思っているだろうなと。

「大人になる」ってなんでしょう?

冨永さん
1つ思うのは、「自分に責任を持つ」ということですよね、大人って。

自分が何か話をしたり、何か行動を起こしたりすると、いろんな人たちが関わるようになる。自分のことばや行動に責任を持つ、持たなきゃいけないのが、大人であり、大人の社会ということなのではないでしょうか。

強いて言うなら、それだけなんじゃないですか。

18歳で大人、不安な若者も…

冨永さん
18歳って、これから何をしようか考えてる最中ですよね。

20歳でもまだ決まってない子たちもいるのに“18歳で大人”と言われて、漠然とした不安があるのは当たり前だと思いますよ。

「焦らされる」とか「早く決めなきゃいけないんじゃないか」となると思います。

18歳で大人になる若者にメッセージを

冨永さん
私自身、18歳のころ、何も考えてなかったなと思います。

でも、それはそれですごく楽しかったし、とってもいい思い出です。

今の若い子たちが漠然と不安を抱えてたり、何も考えてなかったりしても、それはそれでいいんです。

ただ年齢は、毎年、確実に1つ1つ増えていって、勝手に「大人」という分類の中に入っていきます。

なるだけいい経験をして、なるだけいい失敗をして、なりたい自分になっていってもらいたいなと思います。

なりたい大人じゃなくていいんです。なりたい自分であればいいんです。

なりたい自分になるためには?

冨永さん
よく言われるのが、なりたい自分がわからないっていうことを言われちゃうんです。

まぁ、それはそのうち見つかるとして。

人生って選択じゃないですか。

全てにおいて、常にいろんな選択があるのが人生だと思うんです。

そのときの自分なりに、一生懸命決めた選択が、なりたい自分になれるかどうかを決めるっていうことだけ分かっていたらいいんじゃないかなと思います。

まもなく新成人となる息子と向き合う上で意識していることは

冨永さん
子ども自身で決めたことを、できるだけ後押しすることでしょうか。

できるだけ「NO」と言わない。

やってみなって言うようにしています。

「これだと失敗するから」と子どもに言ってしまうときはあるんですけど、自分が経験しているから分かることであって、子どもは経験しないと自分のものにできないじゃないですか、その失敗を。

できるだけ、自分で決めたことは、自分で失敗して、学んでもらうようにやってもらっています。

大人になるのも、悪くないですか?

冨永さん
大人はもう必然的になっちゃうので、大人にならざるを得ないじゃないですか。

年齢を重ねれば、勝手に大人になります。

ただ、どういう大人になるか。それは、It’s your choice.

自分の選択で一番良かったチョイスとは?

冨永さん
何だったんでしょうね。

答え合わせできない、人生って。今までわたしがしてきたチョイス、そのすべてが、今ここにいるわたしに至っているので。

まぁ、全部よかったと思います。

やりたいことを見つけて、がむしゃらに頑張っているうちに大人になったっていう感じですね、私の場合は。

その中で、いろんな経験をして、失敗もして、責任も増えてきて、振り返ったら「あ、大人なんだな」って。

そういうことなのかもしれないですね、大人って。

ネットワーク報道部記者

小倉 真依

2007年入局
鳥取局、大阪局、盛岡局、首都圏局を経て現所属。
教育や人権などをテーマに取材

NHKスペシャル取材班ディレクター

佐野 剛士

2005年入局
大阪局、報道局、広島局で勤務
原爆、自衛隊、震災などをテーマに取材