親の同意は不要に?
アルバイト採用にも変化

2022年1月28日

「保護者の同意をもらってきて下さい」。

アルバイトとして採用される際に、こう言われたことはありませんか?

外食大手などの企業のあいだでは、18歳と19歳について、「親の同意」を見直す動きが出ています。その理由は、成人年齢の引き下げです。
各社の動きを、山根力記者、佐野裕美江記者に聞きました。

アルバイトの親の同意とは?

佐野
記者

企業では、20歳未満の未成年をアルバイトとして採用する際、「保護者の同意」を求めるところが少なくありません。

契約書と一緒に親の署名と押印を求めるケースが多く、なかには身元保証人というかたちで、事実上、保護者の同意に代えるケースもあります。

なぜ、親の同意が必要なの?

山根
記者

そもそも労働基準法では、中学校を卒業した後の未成年の場合、労働契約に「保護者の同意」は必要ないとされています。それにもかかわらず、企業が保護者の同意を求めるのには大きく2つの理由があります。

1つ目は民法との兼ね合いです。民法では、親などの同意がない未成年との契約は取り消すことが出来るとされていますが、労働契約も、契約の一種です。

企業としては、労働基準法では親の同意は必要ないとされていても、民法の規定にもとづいて一方的に労働契約が取り消されるリスクを無くそうという狙いがあります。

2つ目は、トラブルの回避です。未成年の多くは経済的に自立しておらず親の援助を受けて暮らしています。

仕事のなかで万が一の事故やもめ事が起きた際に、保護者がアルバイト先のことを何も把握していないよりも、事前に同意を取り付けておくことで、その後の話し合いなどがスムーズに進む効果が期待できるとしています。

いつから?なぜ、見直しを?

山根
記者

ことし4月から成人年齢が引き下げられるからです。これによって企業は、18歳と19歳について、親の同意がないからといって民法の規定によって労働契約が取り消されるリスクがなくなります。

さらに4月からは18歳以上は親の親権に服さない大人として扱われます。万が一の事故やもめ事が起きても、企業としては保護者ではなく、本人としっかり向き合うことで事足りるようになります。

各社どういう動きが?

佐野
記者

ハンバーガーチェーンの「モスフードサービス」は、現在、20歳未満の未成年をアルバイトとして採用する際、契約書の中で、親権者の承諾書の欄を設けて、署名や押印などを求めています。
それを、ことし4月以降は保護者の同意を不要にすることを決めました。

佐野
記者

その理由について、会社の広報担当者は『成人年齢の引き下げで18歳以上は親の同意がなくても自分の意思でさまざまな契約が出来るようになるなど大人として扱われる。同意は必要ないと判断した』と説明しています。

一方、実際に現場でアルバイトの採用を担当する社員は「今後、成人となる18歳と19歳は、親の同意がなく採用することになるのでより丁寧に勤務の内容などについて説明をしていきたい」としています。

このほかの企業でも、焼き肉店や居酒屋などを展開する外食チェーンの「コロワイド」が高校生を除く、18歳と19歳について保護者の同意を不要にすることを決めたほか、中古書籍などの販売を手がける「ブックオフコーポレーション」が、4月以降、18歳と19歳の保護者の同意を不要にする方針です。

また、ユニクロなどを展開する「ファーストリテイリング」も4月以降の保護者の同意を見直すかどうか検討しています。

見直さないところも?

佐野
記者

4月以降も保護者の同意の取り扱いを見直さない企業もあります。

「ローソン」は20歳未満を含むすべての年齢について身元保証人を求めることをすすめていますが、4月以降も、こうした対応を続けるとしています。

専門家はどう見ているの?

企業のあいだでアルバイトをめぐる保護者の同意の取り扱いを見直す動きが出ていることについて労働問題に詳しい東京の佐々木亮弁護士は次のように指摘しています。

佐々木
弁護士

成人年齢が引き下げられたあとは18歳と19歳は未成年として保護されなくなるので責任はすべて自分に返ってくる。労働者には退職の自由もあるがアルバイト先を選ぶ際には勤務の内容をよく確認するなど働くことに対する意識を高める必要がある

また、ことし4月以降、企業側に求められる対応については、次のように話しています。

佐々木
弁護士

成人年齢が引き下がったからといっても、18歳や19歳は社会経験やさまざまな判断に関する蓄積がない労働者だということを前提にして、今まで以上に配慮していく必要がある

経済部記者

山根 力

2007年入局
松江局、神戸局、経済部、鳥取局を経て現所属。商社業界を担当。
学生時代のアルバイトはドラッグストア。

経済部記者

佐野 裕美江

2016年入局
青森局、むつ支局を経て去年秋から現所属。流通業界を担当。
学生時代のアルバイトは焼き鳥屋。