【詳細】陸上 田中希実 1500mでも 豊田兼は400mハードルで五輪

パリオリンピック代表選考を兼ねて新潟市で開かれている陸上の日本選手権は2日目の28日、女子1500メートルで、中長距離のエース、田中希実選手が優勝し、パリオリンピックの参加標準記録を突破して代表に内定しました。田中選手は、5000メートルと合わせて、2大会連続で2種目での代表内定です。

男子400メートルハードル決勝で21歳の豊田兼選手が47秒99のタイムで優勝し、パリオリンピックの代表に内定しました。

【NHKプラスで配信中】↓↓↓(2024年7月5日まで)

女子1500m 田中希実がパリ五輪内定 2種目め

女子1500メートルの決勝で、中長距離のエース、田中希実選手が4分1秒44の好タイムで優勝し、パリオリンピックの参加標準記録を突破して代表に内定しました。田中選手は、3年前の東京オリンピックのこの種目で日本選手として初めて8位入賞を果たしていて、すでに内定している5000メートルと合わせて、2大会連続で2種目での代表内定を決めました。

田中選手は、序盤は集団の後ろにつけた前日の予選から一転して決勝ではスタート直後から自身の日本記録に迫るペースで先頭でレースを引っ張りました。

中盤以降もペースを維持し、オープン参加した海外の選手も大きく引き離して独走した田中選手は4分1秒44で優勝し、パリオリンピックの参加標準記録の4分2秒50も突破して代表に内定しました。

東京オリンピック後に出場したレースでは最も速く自らの持つ3分59秒19まで、およそ2秒に迫る好タイムで田中選手は、すでに内定している5000メートルと合わせて、2大会連続で2種目での代表内定です。また、田中選手はこの種目5連覇で、2006年から2010年にかけて達成した吉川美香さんとならんで最長となりました。

田中希実「一番いい状態で臨めて 記録で体現できた」

田中希実選手は「これまでの日本選手権で一番いい状態で臨めて、記録で体現することができた。中盤はきつくて余力はなかったが、粘ることができて、これからにつながるレースになった」と充実した表情で振り返りました。
みずからの日本記録に迫る4分1秒44のタイムについては東京オリンピックが無観客だったことを踏まえて「観客がいるなかで走ったレースでは一番いいタイムだったので、日本選手権という舞台で皆さんに見てもらっているなかで出せたことはうれしいし、自信になる」と笑顔を見せながら話していました。

ドルーリー朱瑛里は7位「今後の課題見つかった」

女子1500メートル決勝には、去年の全国女子駅伝で17人を抜いて区間新記録をマークし、注目された高校2年生のドルーリー朱瑛里(しぇり)選手が出場し、日本のトップ選手を相手に健闘し、4分18秒16のタイムで7位に入りました。
ドルーリー選手は「思うようなレースにはならなかったが、今後の課題が見つかった」と振り返っていました。

【決勝 結果】女子1500m

▽1.田中 希実 4:01.44 パリ五輪代表内定
▽2.井手 彩乃 4:11.03
▽3.樫原 沙紀 4:11.62
▽4.卜部 蘭 4:12.39
▽5.後藤 夢 4:12.85
▽6.保坂 晴子 4:15.09
▽7.ドルーリー 朱瑛里 4:18.16
▽8.木村 友香 4:19.77
▽9.藤田 あい 4:20.38
▽10.出水田 眞紀 4:23.93

【解説】田中希実「負けてもいいから挑戦したい」

田中希実選手は「負けてもいいから挑戦したい」と話すほど強い覚悟で臨んだレースで、3年前の東京オリンピックでマークしたみずからの日本記録に迫る圧倒的な走りを見せました。

田中選手は東京オリンピックの女子1500メートルで3分59秒19の日本記録をマークし、この種目で日本選手初となる入賞を果たしましたが、その後は記録を更新できず、世界選手権では、おととし、去年と続けて決勝に進めませんでした。5000メートルではすでに内定を決めた一方で、1500メートルで思うような走りができていない現状に大会前日の会見では「集団にのまれたり、ただぶらさがっているだけになったりしていて、主導権を握れていない」とふがいなさを口にしました。

こうした中で迎えた今大会では27日の予選後「覚悟を持って攻めのレースをしたい」とか「負けてもいいから自分の中で挑戦したい」などと強いことばを繰り返して、パリオリンピックへの出場権がかかる決勝に向けて決意をにじませ、決勝はそのことばをスタート直後から体現しました。

ペースメーカーの設定タイムは1周400メートルが64秒。このペースで走れば4分ちょうどで、自身が持つ日本記録に迫るハイペースでした。田中選手は日本選手では唯一、スタート直後からペースメーカーとともに抜け出し、ほかの選手たちをあっという間に引き離す積極的な走りを見せました。1周目は63秒とペースメーカーの設定より早いタイムで入ると、2周目は64秒、3周目は65秒と安定したペースを刻んでいきました。ラスト1周は独走となりましたが、世界での勝負を見据えて磨いてきたスパートでペースを落とすことなく、走りきって、みずからの日本記録に2秒余りに迫る4分1秒44の好タイムでパリオリンピックの出場権をつかみ取りました。

それでもレース後は「4分を切っておきたかったので、4分1秒台をどう感じればいいかと思う自分もいる。東京オリンピックの時の3分台がなければ、もっと喜んでいたかもしれない」と田中選手らしく、現状に満足していませんでした。

今大会、3種目に出場する予定の田中選手は、29日はわずか3時間のうちに800メートルの予選と5000メートルの決勝のレースを走ります。さらなる成長を見据える田中選手の挑戦から目が離せません。

男子400mハードル 豊田兼が優勝 パリ五輪に内定

男子400メートルハードル決勝で、21歳の豊田兼選手が47秒99のタイムで優勝し、パリオリンピックの代表に内定しました。日本選手がこの種目で47秒台のタイムをマークするのは豊田選手が3人目の快挙です。

すでにパリオリンピックの参加標準記録を突破している大学4年生の豊田選手はスタートから伸びのある走りでスピードに乗りました。身長1メートル95センチの豊田選手はその後も大きなストライドを生かした走りで後続を引き離し、日本選手で3人目の47秒台となる47秒99の好タイムで優勝しました。

この種目で去年から自己ベストを次々と更新して急成長を見せている豊田選手は、これまでの自己ベストを0秒37更新する会心の走りで、初めてのオリンピック代表内定を決めました。

豊田兼「さらに躍動できるように頑張りたい」

豊田兼選手は「47秒台が出るとは思わず正直驚いた。予選で余力があったので決勝は前半でスピードを出して勝負するという勢いで突っ込んだ」と決勝のレースを振り返りました。
初めての出場となるオリンピックについては「目標にしていた舞台だったので非常にうれしく思っている。その舞台でさらに躍動できるように頑張りたい。きょうやったレースを再現する勢いでタイムを縮めていきたい」と話していました。

【決勝 結果】男子400mハードル

▽1.豊田 兼 47.99 パリ五輪代表内定
▽2.小川 大輝 48.70
▽3.筒江 海斗 49.08
▽4.児玉 悠作 49.28
▽5.井之上 駿太 49.30
▽6.出口 晴翔 49.40
▽7.小田 将矢 49.44
▽8.山本 竜大 49.48

◇豊田兼(とよだ・けん)選手

国際大会で優勝(2024年5月)

陸上男子400メートルハードルの豊田兼選手は、東京都出身の21歳。慶応大の競走部でキャプテンを務める大学4年生です。フランス人の父親と日本人の母の間に生まれ、身長は1メートル95センチあり、長い手足を生かした伸びのある走りが持ち味です。

400メートルハードルをメイン種目としながら、110メートルハードルでもオリンピック代表内定を目指してきました。400メートルハードルでは、去年10月の大会でパリオリンピックの参加標準記録を切る48秒47のタイムをマークし、ことし5月の国際大会では48秒36と、さらにタイムを縮めていました。

大学では、コーチと綿密に計画を組み、基礎的な能力の向上を重視してトレーニングを積んできたということで技術面は「まだまだ伸びしろがある」とパリ大会だけでなく4年後のロサンゼルス大会も視野に入れています。

『兼』という名前には「フランスと日本を兼ねる、架け橋になってほしい」という両親の思いが込められているということで、パリ大会で活躍すれば「両親も喜んでくれる」とモチベーションを高めてきました。

女子やり投げ 北口榛花が優勝も課題を口に

パリオリンピックで金メダル獲得を目指す、女子やり投げの北口榛花選手が出場し、62メートル87センチをマークして2年ぶりの優勝を果たしましたが記録を伸ばすことができず、オリンピック本番に向けて課題を口にしました。

女子やり投げの決勝には、去年の世界選手権で金メダルを獲得し、すでにパリオリンピックの代表に内定している北口選手が出場しました。去年のこの大会で優勝を逃した北口選手はことしは、金メダル獲得を目指すパリオリンピックを前にした重要な試合と位置づけて臨みました。

1回目の投てきで61メートル10センチをマークして2位につけた北口選手は2回目には62メートル87センチと記録を伸ばしてトップに立ちました。

しかし、そのあとは3回連続でファウルとなり、最終の6回目も記録は伸びませんでした。

北口選手はそのまま2年ぶりの優勝を果たしましたが、オリンピック本番に向けては「優勝できたことは本当に良かったが3回目以降は自分で形を崩してしまった。まだ、調子が上がりきらずオリンピックに向けて危機感がある」と課題を口にしました。
そのうえで「1回でも満足する投てきができれば調子を取り戻せると思っているので、万全な準備をして、あと2試合残っている国際大会であわせていきたい」と前を向いていました。

北口選手は、このあと練習拠点のチェコに戻りオリンピック本番に向けた調整を続けて行く予定です。

【決勝 結果】女子やり投げ

▽1.北口 榛花 62m87
▽2.武本 紗栄 61m41
▽3.上田 百寧 60m72
▽4.山元 祐季 59m57
▽5.斉藤 真理菜 56m60
▽6.村上 碧海 56m27
▽7.長 麻尋 55m25
▽8.久世 生宝 55m19
▽9.篠田 佳奈 54m88
▽10.倉田 紗優加 53m83
▽11.西村 莉子 53m56
▽12.兵藤 秋穂 53m39
▽13.平松 委穂里 52m21
▽14.中村 怜 51m72
▽15.齋藤 乃彩 51m49
▽16.佐藤 友佳 50m87
▽17.堀内 律子 50m51
▽18.寺田 奈津美 50m13
▽19.石垣 綾香 49m81

《2日目 主な結果》

男子1500m 飯澤千翔 予選で転倒→救済措置から優勝

男子1500メートルで優勝を果たした飯澤千翔選手は前日の予選でペースメーカーの外国人選手と接触して転倒するアクシデントがありましたが、救済措置が認められて決勝に進出しました。飯澤選手のほか、転倒に巻き込まれる形となった5人の選手も同様に救済措置を受け、決勝には本来12人で行われるところが18人が進む異例の形となり欠場した1人を除き、17人が出場するレースとなりました。

そして、飯澤選手が3分37秒08の大会新記録の好タイムで優勝を果たしました。

飯澤選手はレース直後のインタビューで優勝の喜びを語った後、自ら申し出てマイクを握り「予選でアクシデントがあってSNSでは憶測が飛び交っているが、レース中は全力でやっていて誰が悪いというのはないので、誰かを責めるのはやめてほしい」とよびかけました。
その後の取材では「足は気にしないようにしていたのでふだんどおりの思いで臨んだ。きのうのアクシデントはあったが、うれしいという気持ちでいっぱいだ」と笑顔も交えて振り返りました。そして大会記録での優勝について「記録を意識していたわけではないが、それは素直によかった」と話していました。

【決勝 結果】男子1500m

▽1.飯澤 千翔 3:37.08
▽2.荒井 七海 3:38.88
▽3.館澤 亨次 3:38.94
▽4.森田 佳祐 3:38.99
▽5.飯島 陸斗 3:39.34
▽6.栗原 直央 3:39.96
▽7.野口 雄大 3:40.35
▽8.才記 壮人 3:40.80

▽9.舟津 彰馬 3:41.86
▽10.柳本 匡哉 3:42.06
▽11.河村 一輝 3:42.52
▽12.寺田 向希 3:43.54
▽13.高橋 佑輔 3:44.76
▽14.塩原 匠 3:47.06
▽15.荻久保 寛也 3:48.67
▽16.漆畑 徳輝 3:56.24
▽途中棄権.キビリチ アレックスキプチルチル

【決勝 結果】男子200m

▽1.鵜澤 飛羽 20.43
▽2.上山 紘輝 20.57
▽3.水久保 漱至 20.61
▽4.飯塚 翔太 20.69
▽5.宇野 勝翔 20.76
▽6.西 裕大 20.77
▽7.松井 健斗 20.88
▽8.高須 楓翔 20.95

【決勝 結果】女子100m

君嶋 愛梨沙 選手が優勝

▽1.君嶋 愛梨沙 11.46
▽2.御家瀬 緑 11.64
▽3.三浦 愛華 11.68
▽4.山中 日菜美 11.72
▽5.ロス 瑚花アディア 11.74
▽6.奥野 由萌 11.83
▽7.壹岐 あいこ 11.86
▽8.佐藤 瑠歩 11.96

【決勝 結果】女子400m

▽1.松本 奈菜子 53.46
▽2.岩田 優奈 53.64
▽3.井戸 アビゲイル風果 53.70
▽4.森山 静穂 54.42
▽5.中尾 柚希 54.47
▽6.稲岡 真由 54.58
▽7.森 優依花 54.67
▽8.飯田 景子 54.92

《大会2日目 注目は》

女子1500m決勝 田中希実 2種目めの内定は?

田中希実 選手 予選は後半に独走

女子1500メートル決勝では中長距離のエース、田中希実選手が5000メートルに続き2種目めのパリオリンピックの切符を目指します。27日の予選は2組の1着で決勝に進んでいます。4分2秒50の参加標準記録を突破して優勝が今大会での内定条件です。3年前の東京オリンピックで日本選手初の8位入賞した1500メートルでの走りに注目です。

そして去年の全国女子駅伝で17人を抜いて区間新記録をマークした高校2年生のドルーリー朱瑛里(しぇり)選手も田中選手と予選同組で6着に入り決勝に挑みます。

女子やり投げ “世界選手権制覇”北口榛花が登場

北口榛花 選手(2024年5月)

去年の世界選手権で金メダルを獲得し、オリンピックでもメダル獲得の期待が高まる、女子やり投げの北口榛花選手。オリンピック前の重要な大会と位置づけている日本選手権には、練習拠点のチェコから帰国して出場します。オリンピック本番を見据えて、どんな調整ぶりを見せてくれるのかにも注目です。

男子400mハードル 豊田か筒江か それとも…

豊田兼 選手 予選トップのタイムで決勝へ

男子400メートルハードルは、すでに参加標準記録を突破している2人の争いが熾烈です。
27日の予選トップのタイムだったのが大学4年生の豊田兼選手です。5月の国際大会で自己ベストを更新して優勝するなど勢いに乗っています。
一方、筒江海斗選手も順当に勝ち上がっています。この2人のどちらかが優勝したら、パリオリンピック代表内定です。

《2日目 競技予定》

★は決勝種目

【トラック競技】

▽18:20 男子 400m 予備予選
★18:45 女子 400m 決勝
★19:05 女子 100m 決勝
★19:20 男子 1500m 決勝
★19:35 男子 400mH 決勝
★19:45 女子 1500m 決勝
★20:00 男子 5000m 決勝
★20:30 男子 200m 決勝

【跳躍競技】

★17:00 女子 棒高跳 決勝
★18:10 女子 三段跳 決勝

【投てき競技】

★14:00 女子 円盤投 決勝
★18:40 女子 やり投 決勝

☆五輪の内定条件は

パリオリンピックの陸上のトラックとフィールド種目では、すでに、去年の世界選手権の成績などから5人の選手が内定しています。

▽女子やり投げ:北口榛花選手
▽女子5000メートル:田中希実選手
▽男子100メートル:サニブラウン アブデル・ハキーム選手
▽男子110メートルハードル:泉谷駿介選手
▽男子3000メートル障害:三浦龍司選手

日本選手権でオリンピックの代表に内定するには、優勝して参加標準記録を突破する必要があります。

◆すでに参加標準記録を突破している選手
=今大会の優勝が条件

◆去年の世界選手権で入賞している選手
=今大会の順位に関係なく参加標準記録を満たした時点で内定

ただ、この条件を満たせなくても、世界ランキングなどで日本選手権のあとに代表に内定する可能性は残されています。それでも今大会でなるべく高い順位に入ることが重要になります。

NHK放送予定(28日)

【BS】午後6:30~午後7:30
【総合】午後7:30~午後8:42(NHKプラスでも配信)